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芥川賞候補作ぜんぶ読みました(21年下)

毎年恒例~~というほど頻繁にやってるわけでもないが(にゃんしー史上3回目)
芥川賞候補作5作を読み終えたので、なんしか予想とか感想を書いてみようと思います。

候補作一覧はこちら。

たぶんのちのちリンク先が切り替わるので、以下に書いておくと、

「我が友、スミス」石田夏穂(すばる/219枚)
「Schoolgirl」九段理江(文學界/134枚)
「オン・ザ・プラネット」島口大樹(群像/264枚)
「ブラックボックス」砂川文次(群像/240枚)
「皆のあらばしり」乗代雄介(新潮/179枚)

今回は、個人的には面白い・意欲的だとかんじた作品が多くて、予想がむずかしかったです…
外す覚悟であえて書くと、

本命:「Schoolgirl」九段理江
対抗:「ブラックボックス」砂川文次
大穴:「皆のあらばしり」乗代雄介

「我が友、スミス」はエンタメすぎる、「オン・ザ・プラネット」は力が足りないのではないかと。

砂川さんと乗代さんは若干キャリアが長いけれど(それでもキャリア5年とかで若いほうだと思う)、ほかの3名は今年の新人賞受賞者のはず(九段さんは文學界、石田さんはすば文、島口さんは群像)で、だいぶ若い回になりました。

さっそくじゅんぐりに感想をのべていきます。

■「我が友、スミス」石田夏穂(すばる/219枚)
おもしろかった!サクサク読めた!…サクサク読めすぎじゃないですか?書き流したユーモラスな文体がエッセイを読んでるかのようです。文章としてはすごい面白いんだけど、純文学かというと…うーん(もともと「すば文」受賞作はエンタメ寄りであるが)。あと個人的には「よく調べて書いた文章」「女性の生きにくさを書いたもの」が評価されるのは、それだけではイージーすぎる気がします。もちろんほかにもいろんな要素があって、好きなんですが、芥川賞かといえば、ちがうかな、と。

■「Schoolgirl」九段理江(文學界/134枚)
これが受賞じゃないですかね。文章にパワーがあるし、こういう昨今のトレンドを扱ったものを芥川賞は好むでしょう。扱い方としても、じゃっかん既視感はあるけれども、その既視感をあえて置いたというか、ちゃんと距離を置いて料理しているような印象を受けました。難をいうとすれば、ストーリーとしてオチが安直な気がしたけれども、芥川賞でそこは減点対象にはならないはず。それにしても、パワーだけでいえば、レビューを始めたここ3回で屈指の作品だと思います。前作(デビュー作)の「悪い音楽」ではそうでもなかったんですけど。強くなったわね…。あと関連作の「女生徒」(太宰治)はずかしながら初めて読んだんですが、めっちゃ面白いですね!!!

■「オン・ザ・プラネット」島口大樹(群像/264枚)
文章に味をかんじなかったうえ、登場人物が平面的で(ふつう、こんな台詞しゃべる?)、誰が誰なのか分からず、終始興味を持てませんでした。そしたら最後でそのエクズキューズみたいな内容がでてきて、そう言われたからといって、ここまでの9割5分でかたまった評価が覆るわけでもないしな…。と私は読んだんですが、受賞してくれたらうれしい作品ではあります。それは、私の読めなかった面白さが存在するということなので、ぜひそれを教えてもらって、読み直し、新たな読書の楽しみとしたい。

■「ブラックボックス」砂川文次(群像/240枚)
受賞に足る作品だと思います。砂川さんはすごい力のある人で、好きなんですが、前々回の「推し、燃ゆ」(宇佐見りん)が受賞した回で2番目に評価された方でした。私小説ふうの作品を書かれることが多く、自衛官だったことを生かして、ミリタリーネタを書かれることがよくあり、前々回なんかは「次はミリタリーネタ以外で勝負してください」みたいなことを選評に書かれていたかと思います。で、今回は満を持してのミリタリーネタ以外。しかも自転車の運送業(ウーバーイーツみたいな)という流行りの職種を中心に、見えないものの多い「ブラックボックス」としての社会問題に切り込んだ内容で、芥川賞的にも好まれるはず。「Schoolgirl」とは僅差になると予想。

■「皆のあらばしり」乗代雄介(新潮/179枚)
乗代さんめっちゃおもしろいですよね。好きです。おもしろ雄介に改名してほしいぐらい。今回も、すごいよかった。でもこれ、どっちかというと、直木賞的ではないかなあ(分量をのぞけば)…。乗代さん、デビュー作の「一九八より」はぶりぶりの純文学だったと思うんですが、どこを目指してるんだろう…。どこにいっても応援してますけど。純文学要素もままあるんですが、今回ははるかに強い「Schoolgirl」「ブラックボックス」があるので、受賞はないかなと思っています。でも、受賞とか関係なくいい作品だったし、受賞せずともいい作品を書いてほしい。といいつつ、野間文芸新人賞とか三島由紀夫賞とかぶりぶり取ってますけど。今回芥川賞を取れば、新人三冠だそうです。

というわけで、とても楽しい読書でした!読んでない方はぜひぜひ。「皆のあらばしり」は単行本で買えるはず。ほかの作品は、文芸誌を買うか、図書館で借りないとだめかな。

選考会は2022年1月19日(水)だそう。予想した読者にとっては、ちょっとした答え合わせ。楽しみです!!

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