にゃんしー

福島の小説を書いていました。

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「BARREL」#週刊少年マガジン原作大賞

あらすじ第一話「“あの”夏から10年」第二話「48番目の代表校」第三話「オババの灯台」

    • 第三話 オババの灯台 - 「BARREL」#週刊少年マガジン原作大賞

      ろうそくのような灯台のてっぺんにあるオババのまんまるい部屋には、囲炉裏が焚いてあったが、強い潮風に曝されているからか、それほど暑くはなかった。電気がまだ通っていないここには昔ながらの生活が営まれている。 まだ水樹たちが幼かったころ、熱心に夜更けまでアメリカンノックをしてくれたオババも、いまはすっかり足腰が弱くなり、崖のうえに聳える灯台からの急階段を下ることはできないのだという。また震災によっても階段は崩れ、たとえ健脚であろうと登るのにも下るのにも難渋した。 ここを「死に場所」

      • 第二話 48番目の代表校 - 「BARREL」#週刊少年マガジン原作大賞

        2011年、初夏――。 あれから二ヶ月経っても、体育館の壇上には「卒業証書授与式」のきれいな垂れ幕が嘘のように掛かったままで、「東北のハワイ」と称される福島の浜通りには、むしむしした熱気と、老人の痰がからまったような空咳が満ちていた。くたくたになった段ボールの敷居を乗り越え、ふるい新聞紙を広げたうえに体育座りした水樹は、まばらな拍手のうちに「キム!」という歓声を混ぜた。舞台のうえには、高校の野球部のユニフォームを着た少年が、キャップをさかさまに被って立っていた。マイクがわり

        • 第一話 “あの”夏から10年 - 「BARREL」#週刊少年マガジン原作大賞

          ワールドシリーズ最終戦、勝ったほうが世界一、という試合の最終回、1点を追う攻撃、アスレチックスの1番・空海がスイングせずの四球で出塁したのを、アスレチックスのエース・遊介はベンチにふかく座り、ヒマワリの種を吐きながら、どこか冷めたような気持ちで観ていた。ワールドシリーズの出場は5年連続だが、過去4回において、遊介のアスレチックスが優勝していた。 7戦目までもつれたのは初である。 1戦目と5戦目に投げ、いずれも完封。 5回目のサイヤング賞は確実と言われたメジャーリーグ10年目

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        「BARREL」#週刊少年マガジン原作大賞

          「週刊少年マガジン原作大賞」に出すよ。

          ぶっちゃけ、賞を取るとか作家になるとか、興味はないんです。 お金のうえでも名誉のうえでも意味があるとは思えないし(そもそも満ち足りてる。というか、日々ごはんが食べられて、人間らしく生きていければ、それでいい)、それに、作家ってなんかかっこよくない。 でも群像新人文学賞だけは欲しかったりする。だって講談社の賞だから。作品を書くときは、つねに群像にいちばんいい作品を出せるよう計画を練ってて、いつもものすごい滑り方をするのだが(たぶん、今回も)、ものすごく滑ってしまうぐらい、群

          「週刊少年マガジン原作大賞」に出すよ。

          8月が終わりました。

          ひととおりの結果が出たので、カクヨムにアップしました。 結果としてはふつうに良くなくて、野性時代新人賞・群像新人文学賞・太宰治賞・文藝賞(短篇部門3作品含む)・新潮新人賞・すばる文学賞・ハヤカワSFコンテスト・阿波しらさぎ文学賞・ひなた短編文学賞と全滅です。福島のことを書き始めてから、なにも成果を出せてないというか、イロカワ文学賞は最下位だし、文学フリマで出した本やカクヨムにレスポンスがあるわけでもなく、それほど競争率が高いわけでもない回でもかすりもしないし、やはりひなた短

          8月が終わりました。

          9/9(土)えもい古本屋さん開きます。

          だいたい月イチぐらいで入ってるこちらのえもい古本屋さん。 つぎは9/9(土)の11~16時に入ります。 阪神の杭瀬駅から歩いて10分。梅田からも近い。 文学フリマ大阪の前日で、大阪に来られる方もいらっしゃると思うので、よかったら前日入りの方は遊びにお越しください。最強で最後の市場こと、杭瀬商店街もたのしいよ。 せっかくなので地元民ならではの「大阪の名所」を紹介しようと思い、なんとなく以下のようにラインナップしてみました。 5位…ドリームアイランド「淡路SA」 4位…ニ

          9/9(土)えもい古本屋さん開きます。

          夏休み明けの初日「仕事中にXをしない上司は信用しないことにしてるんだ」

          我ながらしょうもないタイトルだとは思うが、分かりやすいのでこのままいく。「分かりやすさは売り物の価値」ってhideも言ってたしな。しかし「売れるもの」というのは殊更にしょうもない。名物にうまいものなし。芥川賞受賞作が面白いはずがないのである。 10日間のロングバケーションが明けて、会社に行った。妻もそろそろ「…こいつ馘になったんちゃうか」とオロオロしはじめる時分、野球を野次るだけの休みにも飽きて、「よっしゃそろそろ働いたろかい」と意気込み会社に向かったが、通勤中の薬局の店先

          夏休み明けの初日「仕事中にXをしない上司は信用しないことにしてるんだ」

          8/12(土)すてきな古本屋さん開きます。

          …尼崎のはずれ…ある市場のすみっこで… ドドドドド すてきな古本屋さんを開きます!詳しくはこちら! 8/12(土)の12~19時です! ぜひぜひ遊びにきてみてね。 ちょいちょい置かれてる本が変わるので、さがす楽しみがありますぞ。 阪神・杭瀬駅から歩いて10分ぐらい。 おいしいものいっぱいの杭瀬商店街をぶらつくのも楽しいです。 しかも!この日はなんと!夜中ぶっとおしの25時間営業です! 誰もが一度は夢みたことがあろう、深夜の古書店…! 遊びにきてね。 このあとにゃん

          8/12(土)すてきな古本屋さん開きます。

          8月6日のこと(2023年)

          毎年この日に記事を書こうと決めたのは、元・広島東洋カープの四番、栗原健太選手がそうしてくれていたからで、カープを退団してからもそうしてくれていて、2018年の8月6日で更新は止まっているのですが、毎年この日だけ更新されるすごく誠実に筆不精なブログが大好きでした。 去年からこの日に記事を書くようになって、栗原選手が毎年どれだけ苦しんで(もしかするとあの過酷なリハビリ以上に)気を吐くように言葉を捻りだしていたかを多少なりとも実感しています。もちろん、栗原選手の足元にも及ばないの

          8月6日のこと(2023年)

          女子高校野球の決勝戦を観てきたよ。

          初めて女子野球を観たのはいつだったか、たしか会社からの帰り道、たまたま尼崎のベイコム野球場で発足2年目の女子プロ野球をやっていた(当時は2球団しかなかったから、まちがいなく京都アストドリームスvs兵庫スイングスマイリーズだ)からで、就職2年目かそこら、仕事に倦んでいた日常に「すごく面白いもの」がやってきた感覚があったのだった。 小西美加という目を剥くようなレジェンドがいて、「これが真のオンナ投げ」とか言いながら打てばホームラン(女子野球ではものすごいレアなのだ!)、走れば盗

          女子高校野球の決勝戦を観てきたよ。

          7月が終わりました。

          ちょっと早いんですが、切りが良いので、振り返り記事。 …7月何をしてたっけ…記憶が。 ひたすら推敲をしておったんですね。つまらない男です。いま手持ちの原稿として、群像用のおよそ200枚と、太宰用のおよそ200枚などがあるわけです。群像用のんが3稿が一段落したので、そちらの評を読んでくださった方々にお願いしつつ、月の後半は太宰用の2稿を作っていました。この作業が盆明けまで続く予定で、そのあとは北日本の直しをし、また群像→太宰、というふうに直していこうかと。 群像用の作品の

          7月が終わりました。

          「夏空壊れる」泉由良

          泉由良・著「夏空壊れる」を読んだので、記録として。 同人誌だと思います。「どれが同人誌なのか」の境目が昨今はあいまいだと思うのですが、ここでは「利益を目的とせず発行されている書籍」と定義しようと思います。 同人誌を出す目的は二種類あると思っています。ひとつめは「交流するため」。文学フリマはその主戦場だと思うのですが、本を売り買いするなかで仲間を得たり、ほか二次創作であれば推しへの気持ちを共有するための媒体として同人誌は機能すると思います。もうひとつの目的は「作品が作品である

          「夏空壊れる」泉由良

          7/22(土)頑固な古本屋さん開きます。

          詳しくはこちらの記事にあるとおりなのですが。私にゃんしーと泉由良、数ヶ月前から、尼崎の杭瀬という「最後にして最強の市場」で古本屋の店番をしておりまして。 7月22日(土)にまた店番をするので、そのお知らせです。 時間は11~16時です。場所は阪神電車・杭瀬駅から徒歩10分の杭瀬市場内です。杭瀬駅は普通電車しか停まらなかったと思いますが、梅田駅からわずか15分、200円で来られるよ。 この杭瀬市場というのが、めちゃくちゃにエモイので。古くからの建築系を好きなひとはドハマリ

          7/22(土)頑固な古本屋さん開きます。

          6月が終わりました。

          6月が終わりましたが、これといって何もしてはおりません! つまらない男です。 阿波しらさぎ文学賞に出しました。もともと徳島にそれほど縁がないと思っていて、出すつもりはなかったのですが、ふと調べているうちよく知るモチーフが徳島ゆかりと分かったので、書いてみました。ほか、北日本文学賞にも出すつもりだし、今年はいろいろと短編を書こうと思っているのですが、あんまり結果は期待しておらず、とにかくたくさん書いて、作品をまとめる鍛錬をしたく考えております。 あと、ハヤカワSFコンテストは

          6月が終わりました。

          芥川賞候補作ぜんぶ読みました(23年上)

          2020年下半期から「芥川賞候補作をぜんぶ読んで予想する」企画をかってにやってるのですが、今回もやります。 今回の候補作は、公式サイトによるとこちら。 知るひとぞ知るこのサイトも詳しいです。 千葉雅也と乗代雄介がベテラン枠ですね。文學界新人賞からスライドしてきた市川沙央が新人枠。ふだん作詞家をされている児玉雨子が外来枠。 …というぐあいに、ベテラン枠・新人枠・外来枠に分かれることが多いようです。ベテラン枠は5回ぐらい候補になれば、もう候補にはしてもらえなくなります。芥

          芥川賞候補作ぜんぶ読みました(23年上)