マニュアル作成初心者向け・おすすめ書籍案内(第8弾・「自分で書く『私の履歴書』」・日本経済新聞社 著)


「マニュアルを作成するための参考図書」も、ついに8冊目。今回はぜひ、日本経済新聞の名物連載「私の履歴書」の書き方を学びたいものだと本書を購入したのだが、思い切り当てが外れてしまった。ネットで購入したため中身を確認せずに買ったのだが、なんと本書のほとんどは空白のページ。ちょろちょろっと書かれた冒頭のヒントを手掛かりに、自分で自分史を書くという体裁の本だったのだ。しかも20年前の本と言うこともあり、ヒントとなる文章や、そこに書かれている価値観が古くさい。どうにも読むに耐えないもので、正直チェックするのさえツラかった。

というわけで、やむなく本書に加えてネットで見つけた「『私の履歴書』を担当した記者の講演会の記録メモ(知見セミナー・私の履歴書ライターが語る自分史の書き方)」などを参考に、「私の履歴書」の作り方で自分史の役にたちそうな部分をピックアップしてみた。

・担当記者が注意しているのは下記の3つ。

1. 事実の確認(書かれた内容は正確かどうか、ということ。歴史上の事実などに関する記憶違いは修正しなければならない)
2. 読者が「この人ならあの話を是非聞きたい」と思う点は必ず書く。(自分史でいうなら、子や孫があのエピソードの詳しいところを聞きたい、と思う部分か?)
3. 本人の書いたことが関係者を傷つけることがないよう、そのような部分は表現を変えるか削除する

・自分史を書くなら読者のことを考え、事実を率直に客観的に誹謗中傷にならないように書く。

そのための心構えとしては、「子供や孫に読ませるつもりで書く」こと。自然に難しい言葉を避け、わかりやすい表現になる。

・「私の履歴書」の冒頭は「生涯最高の日」から書き始める。

そして、生まれた時代にさかのぼる、という体裁が基本。

・最初にメインテーマ(=記事の大見出し)を決める

人となりや業績を一言で表す(例:SFに恋して半世紀。フランス料理こそ我が人生。漫画は芸術だ)

・文中では、その人らしさを出す

1. 一人称はどれを使うか(僕、俺、私、etc)
2. その人らしい言い回し、口癖、姿勢や座標軸(生きざま)を表す言葉

・文中で人物が動かないと、読者は退屈(←自分史ライターの取材ポイント)


1. 現場(著者の行動)の話を大事にする
2. 人とのやり取りや会話を入れる
3. 子どもの世界に人を放り込む(←大人の目線で子供時代を書かない)
4. 色、匂い、手触りを書く
5. 泣いたこと、笑ったこと、怒ったこと、恥ずかしかったことを書く
6. 左脳より右脳を使う

・失敗や挫折、不遇を経営者(自分史なら顧客)は話したがらず、読者もそればかりが続くと退屈する。

成功の糧としての失敗、人間味を彷彿とさせる挫折、不遇の時の支えになったことを聞き出し、書くようにする。劣等生が最後に成功を収めるストーリーは読者に快感を与える。起伏が大事。

・代筆者(=自分史ライター)の立場をわきまえる

(=本人の書いてもらいたいことに寄り添って書く)

おそらく、「私の履歴書」を担当した記者たちのノウハウは、自分史ライターにとってものすごく参考になると思われる(大勢の記者が担当しているために、一つのマニュアルとしては出版できなかったのだろうか?)。ただ、単行本になった「私の履歴書」はどうも退屈だ。やはり新聞連載の方がキレがある。

(終わり)

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