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睡眠と染色衣服「スリープウェアを身近な植物で染めよう サスティナブルな生活へ」

染色技術とそのエッセンスをもとに作品を制作する美術家の山本愛子さんと、睡眠医学とIT技術で睡眠を追求する株式会社ブレインスリープがコラボレーションしたワークショップ「スリープウェアを身近な植物で染めよう サスティナブルな生活へ」が、2021年7月18日に開催されました。今回、私はワークショップのお手伝いとして参加して来たので、その様子をお伝えします!

ワークショップ スタート

会場となった3331 Arts Chiyodaに参加者9名が集まり、早速、山本さんからワークショップの説明がされます。
このワークショップでは、株式会社ブレインスリープのスリープウェアを廃棄食材や草木で染めます。草木染めとは、草木を煮出して作った染液に綿や絹(シルク)、羊毛(ウール)などの天然素材の糸や布を入れて色をつける染色技法です。
参加者に配布されたプリントには、「本日の草木染ブレンド」として草木の組み合わせが載っています。草木の組み合わせによって、煮出される染液の色に違いが出るそうです。
さらに、山本さんから「服」という漢字の語源について説明が入ります。昔、東洋では薬草などを衣服のように体に纏っていたことから「外服」と言うようになり、反対に薬を飲んで体内から病を防ぐことを「内服」と言うようになったそうです。
また、株式会社ブレインスリープ代表取締役の道端孝助さんからも、睡眠医学の観点からみても衣服と睡眠には深い関係があるとのお話がありました。それを聞いた参加者の皆さんは染液の色と草木の効能とを合わせて、どの草木染めブレンドにするかを考えていました。

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▲染色液を作るための廃棄食材(みかん、玉ねぎの皮、コーヒーの出がらし)、草木(ビワの葉、ヨモギの葉、カリヤスの茎、茜の根)(写真:Toshitaka Nakamura)

染色液を煮出す

参加者の皆さんは、4種の草木染めブレンドから実際に染めるものを選びました。さあ、いよいよ染色液を煮出していきます。
まず、草木を計量してネットに入れたものを沸騰した湯に入れて20〜30分煮ます。草木を煮出し始めて少し経つと部屋中が草木の香りに包まれ、まるで自然浴をしているかのような気分になってきます。ある参加者は「なんだかデトックスしているような感じ」と話し、リラックスしてきた様子です。

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▲材料をネットに入れて、鍋に入れます!ドキドキ。

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▲煮出し始めて数分。すでに草木の色が水に染み出しています。

絞り染めに挑戦

染色液を煮ている間に、絞り染めの準備をしていきます。絞り染めは、布の一部を凧糸などで絞って圧力をかけることで、その部分に染料が染み込まないようにして模様をつける技法です。今回は、山本さんが準備した石や木材を使って模様をつけていきます。
絞りが完了したウェアは、染液につける前に一旦水に浸します。

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▲染料が染み込まないように、強めに絞ります。

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▲絞り染めの準備ができました。どのような柄になるでしょうか!?

いよいよ、染めます!

草木から十分に色が染み出て、染液が完成しました。鍋から草木の入ったネットを浚うのですが、これが水を含んですごく重い!トングで水を絞りながら、みんなで協力して草木を取り出します。意図せず共同作業が行われ、この場に一体感が生まれたのが感じられました。

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▲参加者も主催者も一緒に作業。(写真:Toshitaka Nakamura)

いよいよ、染める作業に入ります。染液の中に服を入れると…すぐに色が染まりました!しかし、少し染まっただけでは不十分なので、20〜30分、鍋でスリープウェアを煮ます。染液に入っている部分と水面から出ている部分で染まり方に違いが出ないよう、こまめに鍋をかき回します。

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▲色が染まって、ちょっと感動。

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▲「なんだかチャーシューを作っているみたい…」と言いながら、一生懸命かき混ぜ中。

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▲煮終わりました。しっかり色が染まっています!(写真:Toshitaka Nakamura)

煮終わったらスリープウェアを鍋から出して、染液が出なくなるまで流水で洗います。洗い終わって絞っていた凧糸を解くと、見事に模様ができています!それぞれ、意図した模様になったり、ならなかった場合も偶然の模様を楽しんだりしていました。

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▲山本さん(右)と一緒に染まり具合を確認。

媒染

もうスリープウェアに色が染まったかと思いきや、染液に付けただけでは色は定着しないそう。そこで、媒染液(今回はアルミと鉄)に浸し、15分ほど置きます。こうすることで金属イオンと色素が反応し、繊維に定着するそうです。
媒染すると染めた布の色が変化します。それも、媒染剤によって変化の仕方も違います。実際に山本さんが同じ色に染めた布をそれぞれの媒染液につけてみると…
「おおぉ〜〜」
本当に色の変化が違って、みんな驚きました!

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▲山本さんの染色した布を媒染液につけるデモンストレーション。左が鉄、右がアルミの媒染液。(写真:Toshitaka Nakamura)

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▲参加者それぞれ自由に媒染剤を選んでウェアを漬けました。

オリジナルのスリープウェアが完成

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▲媒染剤で色の定着が終わり、流水でしっかりと洗って完成!(写真:Toshitaka Nakamura)

ワークショップ室にそれぞれのオリジナルのスリープウェアが並びました。こうして見ると、草木染めブレンドや媒染剤の組み合わせで、何パターンもの色が作れることがわかります。
参加した皆さんは完成したスリープウェアを見て、「これを着て寝るのが楽しみ」と話していました。自然の素材を生かしてスリープウェアを染めながら、睡眠について考える機会になったのではないでしょうか。

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山本愛子
主に染織技術とそのエッセンスを元に作品を制作している。糸や染料など自然からの生命を得た素材が持つ循環性や土着性について考え、アジアを中心としたフィールドワークを行うほか、自身で染料になる植物を育てることにも取り組む。
1991年神奈川県生まれ、在住。東京藝術大学大学院先端芸術表現科修了。平成30年度ポーラ美術振興財団在外研修員として中国で研修。国内外のレジデンスや展覧会に参加。主な展示に2021年「Under 35 2021」BankART KAIKO(横浜)、2019年「Pathos of Things」宝蔵巌国際芸術村(台北)、「交叉域」蘇州金鶏湖美術館(蘇州)など。


ワークショップ情報
「スリープウェアを身近な植物で染めよう サスティナブルな生活へ」美術家 山本愛子×ブレインスリープ
開催日:2021年7月18日(日) 13:00 – 16:00
実施場所: 3331Arts Chiyoda
参加者:9名
参加料:税込5000円
主催:株式会社ブレインスリープ、エイベックス・ビジネス・ディベロップメント株式会社(avex art agency project


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