眠りすぎないように

「ほら、コーヒー来たよ。」
目の前の男性がテーブルをノックしたらしい。眠っていたのかな、私。
 コーヒーを口に運ぶ。
「で、話の続き。もう夢を見ないで欲しいんだ。そうすればここは切り離されて、うっかり裏返ることもなくなる。」
何の話だっけ。そう、たしか、この人は私を起こしにきたんだった。眠りの底が抜けると夢は裏返る。この人の部屋は夢が裏返る先にあって、復元力で夢が元に戻る時、しばしば取り込まれてしまうとか。
「この夢が気に入っているんだ。もう裏返って欲しくないんだよ。」
今まで取り込まれた先には酷い夢もあったんだって。
「夢の主にとっては夢でも、僕の身の上には実際に起きることだから、何度も繰り返し他人の夢に取り込まれる人生は終わりにしてそろそろ落ち着きたいんだ。」
えーっと、彼を信じるのであればここは私の夢ってことか。なのにどうしてこんなに眠いんだろう。夢の中ではコーヒー効かないのかな。

 あれ?布団の中だ。なんか変な夢見てた。夫もちょうど目を覚ましたみたい。
「こっちで起きちゃったんだ。」
あれ?夫は別の人ではなかったかな。これはさっきの夢の中の人のような。わっ顔近づいてきた。
「おはよ。この、底抜けのバカ。」

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