さかもりあがり

 「ええ。食べます食べます。朝からもりそば。」「子供の頃からありましたね、学校に行く前にもりそば。今は会社に行く前にもりそば。」「かけそばとかではないですね。」「え、でも東京の人も朝からおそば食べるでしょ。普通なんじゃないですか。」「はあ。朝から家族でもりそばを食べるのが珍しいと。」

 テレビの「ケンミンショー」でこの県を取り上げている。時々朝ごはんがもりそばなの、うちだけの習慣だと思っていた。地域のものだったのか。
 うちでは「さかもりあがり」と呼んでいる。父の「朝からもりそばおあがり」という発声で食べ出すからだと思う。婆ちゃんが亡くなるまで、それは婆ちゃんの役目だった。
 朝からもりそばの由来について番組内では、この地方では蕎麦の栽培が盛んで、簡単に食べられる蕎麦掻が朝食の定番だったのが、多くの家の離農に伴い蕎麦粉より手に入り易い乾麺に移行して定着したと説明しているけれど、本当にそうなのかな。
 「さかもりあがり」の朝は、庭の角にある塚の盛土が新しくなっている。以前母に何の気なしに理由をきいたところ、何れ時期が来た時に父が伝えるという旨の何やら重たげな回答をいただいたのだけれど。

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