あたたかさ、やわらかさ、しずけさ
緩やかに緩み、薄くあはらかに拡がった私の輪郭が遠ざかり、まもなく地平のかなたに見えなくなる。
そして闇のように
しずけさが
おり
ぐぅうううううううう
「よかった、戻ってきたー!」
目を開けると共同開発者のMが泣き出しそうな笑顔で覗きこんでいた。
「どんな刺激を与えても起きないし、脳の活動は低下してるし、下手すれば業務上過失致死罪だって焦ったよ。」
「どれくらいの間?」
「およそ75時間、三日三晩とちょっと」
「そりゃお腹が空く。」
「すごい音だったね。空腹がきっかけになったんだとしたら、点滴とかしなくてよかったー。」
「点滴とかしてよ。」
「だって1分も実行時間ないのに、そんな心の準備無くってさ。」
こうして私達の、理想のおふとんにくるまれる体験を夢で提供するプログラム、『忙しい人のためのリラックス松〔改〕』はお蔵入りとなった。けれど私はあれ以来毎晩死んだように眠れる。
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