建物の[表現]と[実体]のあいだ
明治大学M1の磯野です。
xRArchiアドベントカレンダー2019の13日目の記事として、今年取り組んだ制作について振り返ろうと思います。
1月ー卒業制作
今年3月までの学部四年間は武蔵野美術大学の建築学科で過ごしてきました。
オープンデスクでの模型製作や現場経験から建物の組み立て方や物的な成り立ちに興味が湧き、個人的に取り組んできたモデリング・CGパース制作と建築構法をいかに融合させるかというテーマのもと卒業制作に取り組みました。
結果としては建築の持つ情報の多さに圧倒されてしまい、モデリングとパース(表現)が先にできて模型(実体)が不完全な形のまま提出を迎えました。
対象として選んだ御茶ノ水の木造住宅は四階建てで、実測→軸材の推定→詳細なモデリング→改修設計への活用、という理想としていた一連の流れを効率的に回しきれませんでした。
⬆︎改修設計の際、剥がして何が見えるか検討するために詳細にモデリング
⬆︎板で塞ぐ下地も作り込んでしまって完成しなかった模型
2月ーUnity VR Archi Contest 2019
建物の多すぎる情報を伝わる形で表現できず悶々としている中、UnityJapanさん主催のUnityVRArchiContestの存在をTwitterで偶然知り、「VRなら(詳細なモデリングもくまなく見られるし)表現したいことが可能なのではないか!?」と漠然と思いました。
大学院入試の勉強も重なってしまい同級生の卒業制作モデルを使った共同制作という形での応募になりましたが、これに向けた勉強会等でのご縁もあって3月からxRArchiに参加しました。
紆余曲折ののち、4月からは明治大学大学院構法計画研究室で活動することになります。
VRへの興味も次第に高まって研究室のVIVEを用いた設計課題の中間発表などもしていましたが、6月には発売間もないOculusQuestを購入し私生活にもVRが自然に浸透していきました。
購入から半年たった今もBeatSaberはほぼ毎日やってます。
7月ーSTYLY Photogrammetry Awards 2019
卒業制作の名残で御茶ノ水の調査を続けているうちに、街区のデジタルアーカイブ方法を習得する必要がありました。大学のレーザースキャナーを使うなどの方策も考えている中、フォトグラメトリストである龍さん(https://twitter.com/lilealab)の広域フォトグラメトリ記事に行き会い....
ちょうどいいタイミングだったので、PsychicVRlabさん主催の
STYLY Photogrammetry Awards 2019に応募しました。
個人としてコンペに出したのは初めてでしたが、審査の結果STYLY賞を受賞しました。コンセプトの部分でフォトグラメトリを使って表現する意味を長いこと考えていたので、評価に繋がったのは非常に嬉しかったです。
ど素人の自分が[実体]である街のファサードをフォトグラメトリしたところで、その[表現]はテクスチャも荒く表面しか情報が取れていない劣化コピーにしかならないと思っていました。
しかし、フォトグラメトリ特有の時間軸を超えた空間の保存法や、環境の雰囲気を伝える力は、ある時ある場所での空想の感慨を再現する上で強力に働くと考えました。
作品にした「道路標示遊び」は自分が小さい頃よくやっていた遊びですが、VRを用いて自分の脳内にある体験をそのまま体験として表現して伝えることができたのは感動的でした。
8月ーVRAA01
程なくしてxRArchiの方々主催で開かれたVRAA01にも応募しました。
学部生の頃設計した作品の中でも特に中を歩いて回りたいと思った3年前期課題のフォリーを題材に、Unityを用いたVRchatワールド制作に初めて取り組みました。
しかしSketchUp一本で手の込んだモデリングをすることしか能がなかった自分にとって情報は盛り込めば盛り込んだだけ価値が出るものと思っていたので、[表現]がそのまま[実体]として立ち上がるVRコンテンツの制作特有の作法(ポリゴン・テクスチャ・ライト・カリングetc...)を学ぶのは非常にしんどかったです。
↑ポリゴン・リダクションについて何もわからないまま助けを求めている図
提出の体裁が整わなかったりと実行委員の方々には申し訳なかったですが、建築における情報の解像度の認識を改める非常に良い機会になりました。
(4月~)ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展(手伝い)
明治大学に入ってすぐ、指導教員である門脇耕三先生が第17回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展の日本館キュレーターに選出され、夏前から手伝いとしてプロジェクトに参加させてもらっています。
⬆︎開催概要など
制作のプロセスは当初からSNSで共有されており、終了まで今後とも投稿され続ける予定なので、ぜひフォローお願いします❗️
■Twitter #vba2020jp
■instagram #vba2020jp
おまけ 「マキナスbot」と「横棒3本でEと読むbot」
およそ2年前から続けている蒐集趣味について、今年もネタ切れすることなくコンスタントに更新できました。
マキナスbotは、2年前当時フリーフォント「マキナス」があらゆる商品・広告で度々採用されているのを目の当たりにして始めた人力bot(?)アカウントです。2年が経過した今も少なくない頻度で新商品に採用されており、どういったデザインに使われているかの傾向を観察するのは面白いです。
横棒3本でEと読むbotも同時期に始めた人力botで、こちらはマキナスに比べて発見数が少ないので時期によっては投稿がなかったりしました。
文字デザインする上での可読性の限界に挑戦している例が多く、一緒に使われているアルファベットの組み合わせやデザインのテイスト等でパターン化可能なのではないかと考えています。
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技術を実装したりとりあえず手を動かすことに執心してきた1年でしたが、こうして書いてみると自分の中での思考もまだまだ言語化できていない部分が多いなと思いました。
しかし自分の興味がいつも建物の[表現]と[実体]のあいだにあることに気付くことができたので、それを深めるための環境や題材を大事にしつつ来年の修士論文執筆に向けて頑張っていこうと思います。
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