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トランプ大統領誕生なら、円安? 金融情勢はどうなる? 独立系アナリストの豊島逸夫氏のコラムです。

ウォール街では既にトランプ当確を前提に議論が深化しつつある。
そこで円安と為替介入に話題を振ってみると意見は分かれる。
標準的シナリオとしては、2025年に失効するトランプ大型減税を維持。財政赤字が膨らみ、ドル金利には上昇圧力がかかる。財政政策要因のインフレ再燃となると、FRBは利下げどころか利上げ再開に追い込まれる可能性もある。外為市場ではドル高基調となろう。そうなると米国製品の国際競争力を強めるドル安政策を標ぼうしてきたトランプ氏は、日本金融当局のドル売り(円買い)介入を歓迎するかもしれない。
更に関税大幅引き上げに踏み切れば、やはりインフレ要因となり、ドル高に拍車をかける結果となろう。

7月16日
前大統領は転んでもタダでは起きない。
顔面に血が流れ、SPに抱きかかえられても、聴衆に向け手を上げて顕在ぶりをアピールした。背景には青空に星条旗が翻る。このAP写真は結果的に見事な構図で今後歴史に残ると言われている。これを千載一遇のチャンスと捉え、トランプ氏は複数の米紙と単独インタビュー。「分断された社会をまとめるのは、神から与えられた私の使命」と言ってのけた。

もはや市場には「トランプ当確」の如きムードが漂う。事件後真っ先に反応したのが米債券市場。ドル長期金利が上昇した。トランプ氏の経済政策はインフレと財政不安を悪化させるとのシナリオだ。

前大統領在任中に実行したトランプ大型減税は25年に失効する。現行減税は法人税を35%から21%へ引き下げた。新トランプ減税が個人・法人向けに、更に大規模な減税になるは必至とされる。CBO(米議会予算局)は財政赤字が膨み、今後10年間で累積債務残高は20兆ドル超(GDP比116%)と試算している。この歳入不足を補うのが関税引き上げだ。特に中国製品に60%関税など対中国強硬路線を打ち出す構えである。

この超積極財政はインフレ再燃を招く。FRBは利下げどころか利上げへのピボット(転換)を強いられよう。但し米国債格下げを誘発すると、これはリーマンショック時と同様に金には一転買い要因となる可能性を秘める。

なお、トランプ氏暗殺未遂により議会選挙でも共和党が上院・下院ともに制して、ネジレ議会が解消される可能性も重要だ。トランプ財政の議会通過が容易になろう。

日本人として気になる円安については「トランプインフレ」によりドル高圧力がかかり、介入が益々難路となりそうだ。介入を指揮する財務官には予期せぬ成り行きで頭が痛いことであろう。円の今後はトランプ氏次第。ドル円相場はこれまで以上に変動が荒くなりそうだが、「円高」に振れても150円から140円台まで持続的に円高が続くシナリオは極めて非現実的である。
トランプ氏は自国通貨安による米国製品国際競争力強化を主張したが、今回の展開は「トランプ・ドル高・円安」を示唆している。

従ってトランプ再選ならばNY金も国内金価格も高値圏でボラティリティーは激しいが、地政学的リスク悪化も不可避で上昇圧力が優ることになろう。

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