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福祉住環境整備

1.高齢者や障害者を取り巻く社会状況
  我が国の人口は、2000年約15億2700万人から2060年には9000万人を割り込むと言われ、高齢化率は、40%に近い水準になると言われている。
(日本の人口の推移グラフ以下各表図参照)
2.高齢者や障害者の生活における住宅との関わり方
一方、生活における住宅とのかかわり方には、日本家屋特有のものが、高齢者や障害者にとって住まいにくいものとなっている場合が多々ある。例えば、
①段差が多い事 
②尺貫法が用いられ、現在の家具その他のスケールに合わない事 
③部屋や出入り口が小さい事 
④和室等の床座は色々な利用方法が展開できる転用性には優れているが、身体的に立ち居に厳しい事、介助にも厳しい事 
⑤「住まいは夏をもって旨とすべし、起きて半畳寝て一畳」(方丈記)といわれるように、厳しくない自然環境(世界のレベルからすると)の中、日本は、自然を取り入れた開放的住まいを旨としているところが多い(北欧などは、石造りで自然は治めるものとして対峙)。
という事で、住まいに関しては要求がそれほど高くないので、高齢者や障害者にとっては住みにくい所もそのままで是としている場合がある。
3.住環境整備の重要性・必要性
  高齢化が加速度的に進んでいる今、下記のような要件を満たすため、住環境整備が重要であり、必要である。
  ①在宅生活期間の延長
  ②家庭内介護力の低下
  ③家庭内事故の発生(下記表1 図1.2参照)
  ④寝たきり(寝かせきり?オムツ使用者)高齢者の増加
  ⑤住環境整備後のメリット  本人の意欲向上 介護の開放 家族関係の円滑化
4.福祉という意味と考え方
  「社会福祉」の意味することは、憲法25条基本的人権に由来
  「社会福祉」の考え方は、welfare(狭義の福祉?)から、well-beingへ変化
社会福祉事業法の社会福祉法への改正における視点  措置から支援へ 
 (してあげる・してもらう→本人がやってもらいたいことを選択し、支援プランを作成)
社会福祉からみた住環境整備  隔離から社会参加へ
(施設へ閉じ込める等弱者を地域から切り離していた→地域密着型の自立支援へ)
5. ノーマライゼーションの考え方(バリアフリー・ユニバーサルデザイン)
**質問1:ノーマライゼーション・バリアフリー・ユニバーサルデザインとは?***
 <ノーマライゼーション>
ノーマライゼーション
別名:ノーマリゼーション
英語:normalization
ノーマライゼーションとは
ノーマライゼーションとは、社会福祉の分野において、障がいの有無や性別、年齢の違いなどによって区別をされることなく、主体的に、当たり前に、生活や権利の保障されたバリアフリーな環境を整えていく考え方を意味する語。ノーマライゼーションを簡単に言うと、何らかの障がいや違いがあることを個性として捉え、すべての人が自分の意思で社会に参画する状況・意識を当然のものとして考えようということである。

厚生労働省でもノーマライゼーションの理念に基づき、障がい者の自立と社会参加の促進を図る施策を行っており、「障がいのある人はこれ」と福祉サービスを限定して押しつけるのではなく、利用者自らが介護や看護などの福祉サービスを選択できる取り組みを行うことで、障がい者の主体性を尊重するようになっている。

ノーマライゼーションの語源である英語の「normalization」には、「標準化・正常化」という意味がある。「違いのあることが標準(当たり前)にしよう」という、社会福祉におけるノーマライゼーションの理念は、この「normalization」に由来する。

ノーマライゼーションの歴史は、「1959年法」と呼ばれるデンマークの「知的障害者福祉法」に始まる。この法律の中にはじめて「ノーマライゼーション」という言葉が登場したためで、この1959年法はノーマライゼーション法と呼ばれることもある。

ノーマライゼーションを提唱したのは、デンマークのニルス・エリク・バンク ミケルセン(N.E.Bank-Mikkelsem)であった。バンク ミケルセンは、知的障がい児の親の会の活動に1951年から取り組み、障がい者の親たちと活動した成果が1959年法であると言われている。
ノーマライゼーション8つの原理
ノーマライゼーションは、スウェーデンのニィリエ(Bengt Nirje)によって「8つの原理」として取りまとめられた。ベンクト・ニィリエは、ノーマライゼーションの理念を実現させるための具体的な指針として、「ノーマライゼーション8つの原理」を策定した。
1. 一日のノーマルなリズム
2. 一週間のノーマルなリズム
3. 一年間のノーマルなリズム
4. ライフサイクルにおけるノーマルな発達経験
5. ノーマルな個人の尊厳と自己決定権
6. その文化におけるノーマルな性的関係
7. その社会におけるノーマルな経済水準とそれをえる権利
8. その地域におけるノーマルな環境形態と水準

ノーマライゼーション8つの原理が満たされたとき、ノーマライゼーションの理念は実現するとしたベンクト・ニィリエ。この原理を具体的なスローガンにすると、下記で示すような内容になる。
• 障がいがあるからといって、家に閉じ込めらるのではなく、当たり前に学校や会社に行きましょう。
• 障がいがあるからといってスプーンだけで食事を強制されることはなくしましょう。
• 自分の食べたいときに食べたいものを食べましょう。
• 週末は楽しい集いに参加して、月曜日になれば職場や会社に行きましょう。
• 単調な生活を繰り返すのではなく、季節ごとの様々な文化、活動を楽しみましょう。
• 年齢によって抱く興味や責任も変化するでしょう、その当然の過程をふんでいきましょう。
• 職業も住むところも自分の意思で決めましょう。
• 性に興味を持ち恋愛をし、結婚をしましょう。
• 生きていくために必要な経済的な保障を得ましょう。
• 障がい者だからといって施設に住むことを強制されず、地域の人たちと共に生きられる普通の家を選びましょう。

ノーマライゼーションの具体例
ノーマライゼーションの実現に向けて、障がいを持つ人たちに社会的な役割を与え、施設に限定されない生き方をできるようにした取り組みが行われている。教育現場での障がい者と健常者の関わり合い方については、3つの考え方に基づいた取り組みが存在する。

インテグレーション(統合教育)とは、「障がい者と健常者が違うということを理解した上で同じ場所で同じ教育を受ける」という意味であり、この考え方によって、障がい者であっても養護学校に限定されず、普通学級での教育を受ける権利が浸透するようになった。

メインストリーミング(主流化教育)とは、「健常者の通う学校に障がい者の生活を置く」という意味である。同じ社会(学校)の中に障がい者と健常者の区別がない環境があるという点で、ノーマライゼーションの理念実現に向けた取り組みの一つとして考えることができる。

インクルージョン(包括教育)とは、メインストリーミングをさらに拡張した考え方で、「障がい者が学校の中で過ごす時間のほとんどを、普通学級で過ごす」という意味である。障がい者用に配慮された特別学級での授業以外の日常を、普通学級の児童たちと過ごす。このインクルージョンが学校内で行われることで、日常の生活のなかに、障がいを持つ者と健常者とが当たり前に存在するのだという概念が生まれ、真のノーマライゼーションが実現してくと言われている。
ノーマライゼーションに関連するWebサイト

• 障害者の自立と社会参加を目指して(厚生労働省)
• ノーマライゼーションと障害のある子どもの教育(独立行政法人国立特別支援教育総合研究所)
• 障害保健福祉部(厚生労働省)

 <バリアフリー>
バリアフリーってどういう意味?

「バリア」とは、じゃまをするものという意味、「フリー」は、そのようなじゃまなものがないという意味です。漢字におきかえると「障壁除去(しょうへきじょきょ)」となります。

たとえば、車いすを使っている人にとっては、段差や階段があるとそこから先に自分の力だけで進むことはできません。そこにスロープやエレベーターがあれば車いすのまま進むことができます。
お年寄りあるいは目や耳に障害のある方が、小さな文字を読んだり小さな音声を聞くのは大変です。その場合には、大きな文字で表示したり、音声の調節ができるようになっていたりすれば困らなくなります。
また、メガネや補聴器などの道具が用意されているのもバリアフリーのひとつですね。

このように、どうなっていたら困らないかな? 便利になるかな? と考えて、設備や環境をととのえたり道具を使ったりして「バリア」を取り除くことが「バリアフリー」なのです。
建物や乗り物のバリアフリー
最近、バリアフリーがすすんでいるものに、建物や乗り物があります。建物や乗り物をバリアフリーにするためのきまりには、どのようなものがあるのでしょうか。

ショッピングセンターや公民館、イベントホールなどは、いろいろな人が使うので、身体に障害のある人やお年寄りなどが使いやすいように気をつけなければなりません。

日本では、1970年ころから「福祉のまちづくり」を目指す行動が進められました。その結果、歩道と車道の境をスロープにしたり、歩道などに点字ブロックがしかれたりするようになりました。しかし、せっかくの点字ブロックやスロープも、それらをふさぐように自転車が置かれてしまって役に立たなくなっていることがあります。バリアフリーは、設備をととのえるばかりではなく、わたしたちの心の中にも大切にしていく気持ちがなければ実現しないのですね。

さらに1994年には、「ハートビル法」(正式名称は「高れい者、身体障害者がえんかつに利用できる特定建築物の建築の促進[そくしん]に関する法律」)が定められました。この法律では、都道府県や市町村が建てた建物ばかりではなく、ショッピングセンターや劇場などのたくさんの人が利用する建物の出入口、ろうか、トイレなどをバリアフリーにすることを定めています。

また、乗り物をバリアフリーにするための法律が2000年に定められています。「交通バリアフリー法」(正式名は「高れい者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動のえんかつ化の促進に関する法律」)では、多くの人が利用する駅のしせつや車両などをバリアフリーにすることを定めています。
たとえば、電車の出入口には、車内放送が聞こえない人のために駅名などを表示する装置があり、目が不自由な人が今どこに乗っているのかがわかるように点字シールで号車番号などを表示しています。また、ホームの端(はじ)や階段の手前には、目が不自由な人のための点字ブロックがしかれています。

新たに導入されるバスは、地面からゆかまでの高さが30センチ〜60センチの「ノンステップバス」や「ワンステップバス」がほとんどです。また、車内放送にあわせて文字でバス停の名前が表示される装置も付けられています。
新しい車両やしせつには、さまざまなバリアフリーのための工夫がされています。バスや電車に乗るときに、ちょっと注意して観察してみましょう。
 
<ユニバーサルデザイン >

 ユニバーサルデザインとは何だろう

 ユニバーサルデザインとは、「ユニバーサル」=「普遍的な、全体の」という言葉が示しているように、「すべての人のためのデザイン」を意味し、年齢や障害の有無、体格、性別、国籍などにかかわらず、できるだけ多くの人にわかりやすく、最初からできるだけ多くの人が利用可能であるようにデザインすることをいいます。 この考え方は、1980年代にノースカロライナ州立大学(米)で建築や物のデザインを研究していたロナルド・メイス教授によって明確にされました。自身も障害をもつ彼は、「障害者など特別な人のための対応」と考えるバリアフリーに違和感を持ち、気持ちの上でのバリアを生み出さないデザイン手法を研究していたと言われています。

 ユニバーサルデザインの7つの原則

 ロナルド・メイス教授は「できるだけ多くの人が利用可能であるように製品、建物、空間をデザインすること」と唱えております。この考え方をもっと解りやすくするために7つの原則を作りました。

 1. 誰でも使えて手にいれることが出来る(公平性)
 2. 柔軟に使用できる(自由度)
 3. 使い方が簡単にわかる(単純性)
 4. 使う人に必要な情報が簡単に伝わる(わかりやすさ)
 5. 間違えても重大な結果にならない(安全性)
 6. 少ない力で効率的に、楽に使える(省体力)
 7. 使うときに適当な広さがある(スペースの確保)

 ユニバーサルデザインの7つの原則すべてに、当てはまるものを作りあげるのはとても難しいことですが、少しずつできることから着手し努力していくその積み重ねが、思いやりのあるまちづくりに繋がっていくことでしょう。


 しずおかあったかプラン 〈 静岡市のユニバーサルデザインの取り組み 〉


計画策定の目的

 ユニバーサルデザインのまちづくりをさらに進める上での考え方や取り組まなければならないことを市民の方や事業者にも知っていただけるように、『しずおかあったかプラン』(静岡市ユニバーサルデザイン基本計画・行動計画)を策定しました。
誰もが安心していきいきと快適な暮らしをすることができ、来訪者にも温かい心が伝わり、また来たくなるようなまちを目指し、「温かい心の通い合う、みんながいきいきと暮らせるまち」を基本理念として、心、社会、まち、情報、サービス、もの、しくみの7つの分野にわたり、ユニバーサルデザインのまちづくりを進めます。

『静岡市ユニバーサルデザイン 基本計画』
 基本計画では、ユニバーサルデザインにもとづくまちづくりを推進するための考え方や取り組むべき施策の基本的な展開方向を示しております。

『静岡市ユニバーサルデザイン 行動計画』
 行動計画では、基本計画の推進に向けて、ユニバーサルデザインに関連する推進事業の内容、実施時期、事業主体を明確化するとともに、進行管理できるように成果指標や目標値の設定、行政・市民・事業者等の役割分担の考え方など、具体的な行動の内容を示しております。

6. **質問2:リハビリテーションの考え方を述べよ。
リハビリテーションとは、能力障害あるいは社会的不利を起こす諸条件の悪影響を減少させ、障害者の社会統合を実現することを目指すあらゆる手段を含むものである。 リハビリテーションは障害者を訓練してその環境に適応させるだけでなく、障害者の直接的環境および社会全体に介入して社会統合を容易にすることを目的とする。

7. **質問3:自立支援と介護の考え方を述べよ(治療cure と介護、介助、careケアプラン等

1.補完する介護ではなく、自立を支援する介護
自立
<出所>
自立支援介護ブックレット(1)筒井書房
はじめに「自立とは何なのか」ということを簡単におさらいしていこう。WHO(世界保健機関)では、身体的に病気がないだけではなく、精神的かつ社会的に良好な状態を「健康」と定義している。
これは、WHOが特別にそういう表現をしたわけではなく、人間は身体、精神、社会の3つの要素から成り立っているという事実に基づいて言っているにすぎない。

したがって自立に関しても、身体的自立、精神的自立と社会的自立という3つに分かれ、さらに障害児、障害者、それから高齢者という3つの分類に対し、自立というものの課題がそれぞれ違ってくる。
障害児、子供たちは、身体的に自立し、精神的にも社会的にも自立していくことが課題になってくる。これを総まとめとして「発達」という言葉を使っている。だから「障害児の自立支援」といったときには身体的自立だけではなく、精神的にも、社会的にも自立を目指してやっていかなくてはいけない。この辺りは「障害児への介護」の世界の基本理論であり、そういったところからスタートしていかなくてはいけない。

では、障害者にとって、どういうことが課題になるかというと、世界の「障害者自立生活運動」が求めてきたように、彼らがいちばん必要としている問題は社会的自立である。世界の障害者が1970年代、80年代を通して声高に要求してきた「我々は地域社会で生活して、一般社会人として独立した生活を営んでいきたい」ということ。つまり、「社会的自立を目指していく」ということなのである。そして、「社会的自立」を完結できるように、障害者自身が自分たちの決意として精神的に自立しようというのが彼らの求めだった。成人の障害者になると、すでに身体的自立はあるレベルで止まってしまっているので、身体的自立は課題にはならず、精神的、社会的自立が課題となってくる。
3番目の高齢者の場合には、長期にわたって身体、精神、社会的自立の人生を送った人が、身体的な自立だけを失っていき、そこから家族の介護負担が生まれている。

高齢者は精神的自立や社会的自立を追い求める必要はなく、ADL(日常動作)をもう1回自立できるように戻してもらって、生活を整えていけばいいのである。ADLが自立すればQOL(生活の質)も向上し、ADLが自立すればIADL(手段的日常動作)という、買い物、 調理などの生活関連動作も自立していく。

「資料1」の身体、精神、社会の3つの円は、お互いに重なり合って描くようにしている。身体的に自立すると、精神的にも自立していくという影響が生まれてくる。身体的に自立することが、社会的な自立に対してより一歩近づくことになる。それから、精神的な自立を達成すると、今度は社会的な自立というものにも影響を与えていく。お互いに相互影響の関係になっていくのである。この影響し合うものの関係を図式化して表すとこうなるのである。

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2.基本ケア(水分・食事・排便・運動)が鍵
基本ケア(水分・食事・排便・運動)
高齢者ケアには基本的なケアが存在する。実はそれを確実に行うことでほとんどのADLの問題は解決に向かうのである。

1番目は「水(水分)」。

人間が1日に必要とする水分をきちんとケアできるようになっていくと、ほとんどの問題は解決していく。
水分が人間の体に与える生理的な影響は非常に大きい。

2番目は「食事」。

食事が適正量摂れれば、あらゆる問題を解決していける。しかし、食事には低栄養を起こしてしまう性質をもっているので、
そういう問題には注意しなくてはならない。

3番目は「排便」。

これ以降は要介護の世界を視野に置いた話だが、排便を自らのコントロールで行えるようにしていく。

4番目が「運動」。

今までの介護がいちばん不得手なのが運動である。運動の出発点は離床から始まるが、最近では車椅子生活が増えてきたために、ひとまず離床はするが、ベッドから空間的に離れているというだけで決して身体活動を伴っていない。要介護高齢者の運動問題を考えるときに、中心になるのは歩いてもらうということ。歩くことによっていろいろなよい反応が起こってくる。


<出所>
自立支援介護ブックレット(1)筒井書房
いずれにしても、「水」「食事」「排便」「運動」。この4つが、全ての高齢者に対する基本的なケアである。これを視野に入れなければ、どんなケアを展開しても難しい。基礎工事ができていない建物を建てるようなものである。これは身体介護の世界だけではなくて、認知症に対しても同じことがいえる。例えば、目を離すとティッシュペーパーをバリバリ食べるような、ひどい異食があるようなケースでは、その人に向いた個別ケアも大事ではあるが、なによりも基本ケアを怠らずに、適切な水分をとっていただく。

また、ケアには、基本ケアを基本として、そのうえに固有のケアがある、例えば「排泄を自立する」などの固有ケアというものが出てくる。しかし、まずは基本ケアというものに力点を置いて集中して学んでほしい。そして、その次に、異食をするような認知症の人にはどういうケアをすれば異食をしなくなるのかなど、個別の、特殊なケアを勉強していってもらいたい。そうして水分の量が増えると不思議なことに異食をしなくなったというケースが実はたくさんある。これは認知症の理屈からいくと、そうなって然るべきものだが、これら「水」「食事」「排便」「運動」の4つの基本ケアは、単に身体介護だけではなく、認知症の介護にも共通している。それゆえに「基本」と呼んでいる。この基本ケアは人間が健康に生きていくための要素なのである。水をちゃんと飲み、食事をきちん摂取して、規則正しい便通がある。それから運動をする。この基本ケアは、結局、健康体をつくりだすためのケアにすぎない。

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3.認知症も理論的介護で症状消失
1.タイプ別ケア
言動の異常からスタートしてタイプ判定をして、それぞれのタイプに応じたケアをするタイプ別ケアがあるが、認知症のケアには他の原則も存在する。タイプ別ケアというのは、そのうちの一つで、残り3つの原則がある。


<出所>自立支援介護ブックレット(3)筒井書房
2.共にある
一つは、「共にある」ということ。要するにケアをする側が、いろいろな異常行動を見たときに汚いなとか、異常だなとか、嫌だなという第三者的な評価を下すような態度を取ることが、実は精神を病んでいる人に対して非常に悪い。
現在、京都大学の精神科の名誉教授になっている木村敏氏は、すべからく精神を病んでいる人に接する医師、看護師、セラピスト、介護職、これらの人たちは、精神を病んでいる人たちに対して第三者的な評価を下すような態度を取ってはいけない、「共にある」ということを我々は認識しなくてはいけないと述べている。我々はいろいろな選択肢の中から一つを選択するチャンスが与えられているが、彼らは一つのことしか選択できなくなっている。そして、その選択も自ら選んでその行動をとるというより、何かに押されてやむにやまれずそれに走ってしまう。

少なくともやりたくてやっているのではない、好んでやっているわけではない。何かに当てつけようとしてやっているわけでもない。ある状況になった瞬間に、その行動しかない。そこに駆り立てられてしまう。しかし、その最中に本人の心の中では、「それは、やってはいけない。また、そんなことやったのか」というふうに、それを止め立てしようとする矛盾した動きがある。

そういう矛盾の中でいるということ自体に対して、それを行っている人の中の矛盾した事柄に対して「気の毒だよね」という感情がこちらに持てるかどうか。それを持った瞬間に、あなたと相手との間に「苦痛共同体」ができている。そのことについて苦しんだり悩んだり苦痛に感じたりという相互の共感し合うような関係ができている。やりたくもないのに、そういう行動に駆り立てられながら、なおかつ自分の中に矛盾した声が上がっている状況に対して、「この人は、実は気の毒な人なんだ」というふうにケアする側が思えるかどうか。思った瞬間に相手への態度が変わる。それだけで止まるかどうかは別にして、そういう変化を見て相手方もまた救われる部分がある。これが「苦痛共同体」である。「苦痛共同体」ができた状況を「共にある」と呼ぶ。そこで、明らかに病んだ人と介護や世話をする人との間に「共にある」という関係ができる。これは精神を病んだ人に接する人が気をつけなくてはいけない接し方、態度である。

3.行動の了解
第2の原則というのは、「行動の了解」。認知症になった後の行動というのは、その人の全人生の集積した姿であると新福氏は書いている。皆さんの中にも認知症になる人がたくさん出ると思うが、認知症になったときにどういう行動を取るかはすでに決まっている。

認知症ケアのベテランになっていこうという人は、担当する認知症の利用者の今の行動について、人生歴の中に何か結びつけられるようなことがないか生活歴をいつも見ているような行動を取らなくてはいけない。「こういう人だから、こういうことをやっているんだな」と気が付いた瞬間に、やっている行動は異常ではなくなる。それが異常だとか、不潔だとか、変な人だと思えなくなった瞬間に、こちらの態度が変わるから、ケアする側と相手の関係がガラッと変わる。そういう関係の中で、認知症の症状が消失したり落ち着いたりする。これを一種の療法というところまで高めていったのが回想療法だろう。
回想療法は相手に昔話を語らせながら、お互いに回想していく中で聞いている側の療法士とその人との関係は変わっていく。相手の人生歴に共感する部分ができてくるという関係の変化が、相手を治していく、そういうことを意図的にやろうとしているのが回想療法だろう。我々が生活歴を聞きながら、その人を理解しようとしていくプロセスというのは、一種の回想療法を暗黙のうちにやっているということになる。これが第2の原則で、生活歴をさかのぼるということが重要になる。

4.安定した関係
第3の原則は、「安定した関係」。その人にとって人や物が変わったり、周辺の環境がしきりに変わることのないようにすることが、安定した関係をつくる。つまり、認知症は状況の認知力が落ちているため、まわりの環境が変わることは、常にめまぐるしく状況を変えていくことになる。

レベルの高くなった施設の経験から言うと、タイプ別ケア以外の3つの原則が着実に実行されるようになると、それだけで異常行動が消えていくことがある。さらに、タイプ別ケアにまで行った場合は、認知力の向上を図るようなケアを基本的にやったうえで、残ったものについては個別な対応をしていかなくてはならない。

8. 介護保険制度における住宅関連施策
 ①在宅介護住宅改修費の支給に係る住宅改修の種類
 住宅改修費等の支給は、各市町村によって支給の割合や、上限などが違うので確認の必要があります。また、どういう改修なら支給の対象になるのかなど窓口やパンフレットなどで情報を仕入れていたらいいと思います。 和式トイレから洋式にする場合 段差解消も含まれるか?便器のみか?
 トイレや風呂浴槽の手すり取り付けは?浴槽の床は?等々(下表 見にくいですが、参考までに)
② 介護保険制度における住宅改修費支給の利用手順(図10)
③ 介護保険制度における福祉用具貸与の利用手順(図⒒)
④ 介護保険制度における福祉用具購入費の支給の利用手順(図12)
9. 高齢者や障害者の疾患と障害特性

問題4:家づくりやリフォーム時に取り入れておきたい住環境福祉の考え方や、具体的な設計、整備、手順などを考えてください。(老後の想定や、老いた両親の想定や、病後・加齢の身体的不具合などを想定して、具体的に考えてみて下さい。)

・すべての人間が使いやすいデザインは無い。限界まで使いやすいデザインは考えられるが、病院建築と同じように、あっちを優先すれば、こっちがダメになる、でっこみ引っ込みのあるデザインになる。ということは、自分の加齢に伴い、人間そのものが変化することから、住宅についても可変することを想定して設計することが大切である。そのため、資金計画等も、変更・修繕を見越したものにしておくのがよいのではないか。
 3年毎にre-homeしていく計画で、住宅を建築するような余裕が欲しいところであり、もしくは、3年毎に、自分に合った環境に引っ越すなど、住宅を消費する感覚でいることが大切ではないか。変な固定観念があるようで、一生ものだからここは良い品質にしましょう!などという刹那的な設計にするのは、お金持ちの道楽であるといえるのではないか。結局のところ、一般的に福祉というのは資金力のない人々の問題であり、お金持ちになれば/資金力があれば、福祉という世界から確実に解放されることになるだろう。よりよい条件の住環境を簡単に手に入れることになるからである。
 最終的には、福祉から解放されるには、ぶっちぎりの金持ちになることであり、まずはそこを目指して人生設計するのが手っ取り早いのではないか。
 他方、多くの人々は、福祉の世界にどっぷりつかって生まれたから死ぬのであることから、そういう意味では、知恵を絞って住環境福祉について、後戻りなく見通すことが大切ではないか。
まとめると、万人に受け入れられる言い方をするなら、ざっくりいえば、無印良品的なコンセプトで住環境を見直すことといえるのではないか。
以上

 以上

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