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森林情報計測学実習 与那 国頭村

<プログラム>

2023/2/26(日)

伐採/造成林や周辺の森林見学

①    やんばる地域で実施されている天然林小面積皆伐の現場を知る

②    国立公園や、世界自然遺産地域の森林管理について考える


2023/2/27(月)

広葉天然林内の試験地設定および立木位置図の作成

①    区画の設定(測量)

⇒調査区の設定などで使用するコンパスの使用方法を習得する


2023/2/28(火)

世界自然遺産地域や周辺の緩衝地帯のモニタリング

①    ツアーなどでの利用が進むと予測される登山道の現状と管理について考える

⇒与那覇岳登山道

②    天然林のモニタリング方法を知る

⇒与那フィールド内の「モニタリングサイト1000」調査地


<本講座の参加理由>

 申し込み時点で再生可能エネルギー事業会社にて、太陽光発電事業による大規模林地開発を実施しており、森林環境保護の視点や実態を知ることと、山岳地域の測量実習に参加することにより、測量技術の体験することを目的とし、参加させていただいた。

 森林計画学に関する前提知識を補うために、森林計画学(木平勇吉)の書籍により、森林計画に関する事前のセルフブリーフィングを実施した。


<得られた知見>

 1.【伐採/造成林や周辺の森林見学】

  沖縄において、林業の事業性の低さを感じ取れた。なぜなら、例えば、森林環境保全整備事業など、いわゆる補助金と連動させた仕組みで森林組合などの主導により事業がされており、民間開発の林業が衰退もしくは進化していない雰囲気を感じ取れた。具体的な根拠や数値データは、個別に調査が必要であるが、自然環境の保護が優先されることと、伐採条件や制約が多数あり、採算性や効率性を重視した伐採技術が適用できないことや、高付加価値の樹種の選定や、沖縄産の樹木としての付加価値や優先度に優位性が少ないというような理由が想定される。

2016年9月に国立公園に指定されたことで、森林保全のグレードがあがり、開発への規制や許認可手続きが強化された。伐採する箇所については、森林組合の一存で決定されることもあるようであるが、経験により海が見えているところを避けることや、北西の季節風による水分ストレスを考慮することや風向のシミュレーションなどにより、環境負荷を低減させることが求められている。

 

2.【広葉天然林内の試験地設定および立木位置図の作成】

 コンパスの使用方法を習得した。もともと、土木建築測量で用いられるトランシットやレベルなどを利用したことがあり、測量器具に対する抵抗は少なかった。ところが、基本的な測量の技術的な所作は、ある程度、現地にて試行錯誤によるトレーニング・修得となっていた。例えば、さげふりは2直角方向から確認し、ポールは左右に振るなどの初歩的な測量技術について求められることはなかった。

 測量精度についても、最小二乗法などを用いて閉合確認をし、複数回計測するなど、測量精度を高める方法があると思われるが、樹木の生息状況を把握するレベルであれば、それほどもとめられていないのかもしれない。

 樹木の高度を計測する器具についても、このフィールドの研究レベルに応じて、実用的な測量器具なのだろうと推察している。ドローン・赤外線・特殊レーザーなどの最新の測量装置や技術も適用できるのかもしれないが、いずれにしても費用対効果の面から採用されることはないのかもしれない。

 

3.【世界自然遺産地域や周辺の緩衝地帯のモニタリング】

 いわゆる登山道を片道約1時間かけて歩くという工程において、世界自然遺産の周辺を体験できる要素があるアクティビティーを体験した。ゴール地点において、見晴らしがよいわけでもなく、達成感が感じられないという独特な体験であった。途中にマイルストーンもなく、ゲーム性やエンターテイメント性が皆無であるところにも特徴がある。素人が簡単に楽しめるような要素がそぎ落とされており、動植物に知見のある玄人にとっては、見どころが多くある場所なのかもしれないが、それらの知識が少ない素人にとっては、無心になれる体験ができるところに特徴があるのではないかと思慮している。

 登山後に森林公園で休憩したが、こちらに例えば足湯があったり、売店があったり、温泉があったり、カフェがあったり、冷たいお絞りがあったらなあなどと夢想していたものの、開発と保護のバランスから考えても、現状のままでも良いのかもしれないと複雑な心境になった。

 その後、琉球大学が研究としてモニタリング調査を行っている管理区域を見学させていただいた。研究手法としては、区域を指定して、樹種をカウントすることや、希少生物の存在を確認するようなモニタリング調査がされており、基礎的で原始的な手法なのではないかと思慮している。1haの中の樹種・樹数・形状などを定期に把握することで、その区域の生態系の基礎データを取得し、それらを研究・分類・比較解析などにオープンソースとして利活用するということをされている。

 非常に地味で時間のかかる調査であると思われるが、昨今のDX技術の進歩などによって、調査手法やその負荷が低減されていくような要素も残っているのではないか。

 

<提言・感想>

 森林計画を理解する上での基礎情報を実体験として得られる科目であった。私のようなバックグラウンドを持つものだけでなく、比較的、森林に興味のある者や、単純に山が好きという理由だけでも、参加する価値があると思う。例えば、基本的な測量を学んだ工学部の学生などで、将来山岳トンネルや環境系に興味のある学生にとっては、将来、山林開発の際に役に立つような体験が得られるのではいだろうか。また、データサイエンスなどを専攻する情報・数学系の学生にとっても、森林という複雑系におけるそれらの技術の適用により、新たな知見を得られる可能性もあるのではないだろうか。よって、人気の授業科目になる要素が多くあり、例えば、受け入れ人員が許す限り、一般公開参加型にすることも一案なのかもしれない。最終日のアクティビティーは観光系の学生にも参加してもらうなどの協働科目にしてもよいのかもしれない。


以上

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