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第 6 回 「共創でつくる自治体条例」 講師:高村 学人(立命館大学 政策科学部 教授)レポート課題 テーマ:法や条例の内容に私たちが従う理由と要因について、具体的な自治体条例をあげ、講義の内容踏まえて説明して下さい。合格レポート 90点(再々提出) 三度目の正直

第 6 回 「共創でつくる自治体条例」 講師:高村 学人(立命館大学 政策科学部 教授)レポート課題 テーマ:法や条例の内容に私たちが従う理由と要因について、具体的な自治体条例をあげ、講義の内容踏まえて説明して下さい。
 
以下に委任条例を前提とする地方分権改革以前の条例論がその後地方分権改革以降後法的にも条例論としてもどのように変遷したか整理する。
 日本国憲法第94条では、地方自治体は、法律の範囲内で条例を制定することが出来るとされている。そして、地方自治体法第14条2では義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならないとされている。条例という手段によっても、法律の範囲内で人々の権利や義務を制限することが出来る仕組みになっている。
 法律の範囲内については、委任条例と自主条例がある。委任状例は国が定めた法律の委任をうけて制定される条例のことであり、はっきりと法律で、条令で定めるという仕組みになっており、例えば廃棄物汚染防止法などがある。条例では、法律で定める許容限度よりも厳しい許容限度をさだめることができる。
 他方、自主条例とは法律の委任は無いが、自治体が、地域住民の生活を守っていたり改善していったりする必要から定める条例のことである。1980年頃から高層マンションによる景観が損なわれる事例などから、景観条例が全国の市町村に拡大したが、この時代に景観法という法律はなかった。法律の未発達を背景に自治体が国の顔色をうかがいながら、独自のルールづくりを行った。このような自治権がどこまであるか、争いもあった。
 2000年以降は地方分権改革が進むなか、法律の作り方も変遷していき、法律のメニューに基づき独自のオーダーメイド型の条例を作る流れに変遷していくことになる。法律のメニューになりことも加味することができることになる。
 さらなる条例の変遷とは、2010年以降、シンボル的な条例が増える。例えば、京都市の清酒乾杯条例(2013年制定)があり、当初戸惑いもあったが全国に波及していった。当該条例は、清酒ブームを引き起こす、同様の条例づくりを全国に波及された。また、地方自治体・地方議会には取り組みやすいものとなった。
政策実現の手段として、シンボル条例・立法が増加していった。
具体的な罰則はなく、行うべき行為をも具体的に定められておらず、法律や条令の趣旨や目的を世間に伝達していくことを重視している、メッセージ型の立法・条例である。いわゆる法の表出機能である。公示、定義づけ、価値表明機能である。
 例えば、京都の乾杯条例を取り上げて、権利義務を定める機能が中心であった条例が、社会的価値観や社会的活動の定義づけにその役割をシフトした権利や義務を定めるのではなく、社会が向かうべき方法性を明示して努力義務規定を定める新たな条例の形式が登場して、それが地方自治の現場で一定の効果をあげている。
 
ここで具体的な小笠原村海亀解体場条例について、上記の評価と提案を行ってみたい。
この条例の意図は、地場産業の育成に必要な施設を自治体が整備し、小笠原村でウミガメを解体する場所を提供し、その解体場の利用料を徴収するというものである。昭和59年に制定されており、地方分権以前の条例といえる。肉食としての海亀の捕獲となる産業は、現在では、ウミガメが絶滅危惧種に指定されていることから、実質、産業として成り立っていない。よって、この条例の目的である地場産業の育成に必要な施設という意味合いを失っているといえる。
 そのような中、地方分権以降の”法の表出機能”を用いて、共創時代の条例づくりとして、文化的資源の意味づけを目的に条例をアップデートすることを提案したい。
 例えば、小笠原の文化的資源は、”ウミガメ”と共存してきた歴史である。このウミガメを捕食しながら生活してきた歴史がある。それらをこの条例に明文化し、ウミガメの保護について、社会的な価値を示す機能(価値表明機能)を付加することで、村(社会)が追求すべき価値を示すことができるのではないか。
 条例の第1条の目的に「第1条 地場産業の育成に必要な施設として、小笠原村海亀解体場の設置及び使用に関し必要な事項を定める。」を、「~定め、ウミガメと共存についての理解を深める。」という努力規定条文を付加することを提案したい。そして、その理解を深めることとして、一年に一度、ウミガメへの感謝の日を制定し、祭りごとにより人と地域のつながりをもつ機会をつくることにつなげてみたい。これらは、地方自治体が追求すべき価値の一つである共創ことにつながるものである。
 伝統の多くは、昔から受け継がれてきたものではなく、最近になって人工的に作られたもの(人類学者 ホブスボウム)であるとされると評されることもあることから、法や条例に私たちが従う理由を、地方共創へ向かう意味付けにも連動させ、伝統を創り、各地の文化的資源の再発見・掘り起こしについて、法の表出機能を用いて、共創時代の条例づくりについて、小笠原村の一条例について具体的な改定提案をした。
 以上(1,975文字)


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