ヘクシャー=オリーン・モデルの概要

ヘクシャー=オリーン・モデルの概要

ヘクシャー=オリーン(H-O)モデルは、各国の要素賦存量の違いによって貿易パターンが決定され、各国が自国に豊富に存在する生産要素を多く用いる財の生産に特化することで貿易の利益を得ることを示すモデルです。このモデルは2つの国、2つの財、2つの生産要素(労働と資本)を仮定します。

前提条件

  1. 2つの国(例えば国Aと国B)

  2. 2つの財(例えば財Xと財Y)

  3. 2つの生産要素(労働と資本)

  4. 生産要素の移動が国境を越えない

  5. 各財の生産には異なる生産要素の比率が必要

  6. 完全競争市場

閉鎖経済の均衡状態(図5-4、5)

閉鎖経済では、各国は自国内で消費するために全ての財を自給自足で生産します。各国の生産可能性フロンティア(PPF)は、各国の生産要素の賦存量と技術に基づいて決まります。

図5-4: 国Aの閉鎖経済

  • 横軸:財Xの生産量

  • 縦軸:財Yの生産量

  • PPFは国Aの資源配分を反映

図5-5: 国Bの閉鎖経済

  • 横軸:財Xの生産量

  • 縦軸:財Yの生産量

  • PPFは国Bの資源配分を反映

自由貿易経済の均衡状態(図5-7、8)

自由貿易が導入されると、各国は自国に豊富な生産要素を多く使う財の生産に特化し、他の財を輸入します。これにより、全体的な生産効率が向上し、消費可能な財の量が増加します。

図5-7: 国Aの自由貿易経済

  • 横軸:財Xの生産量

  • 縦軸:財Yの生産量

  • 貿易によって消費点がPPFの外側に移動

図5-8: 国Bの自由貿易経済

  • 横軸:財Xの生産量

  • 縦軸:財Yの生産量

  • 貿易によって消費点がPPFの外側に移動

貿易の利益

貿易の利益は以下の点で説明されます:

  1. 資源の効率的利用:各国は比較優位に基づいて特化生産を行い、自国の豊富な生産要素を効率的に利用します。

  2. 消費の拡大:自由貿易により、各国はPPFを超える消費点を達成できるため、消費可能な財の量が増加します。

所得の再分配

ヘクシャー=オリーン・モデルでは、貿易の結果、各国の生産要素の需要と供給に変化が生じ、これが所得の再分配に影響を与えます。

要素価格均等化定理

要素価格均等化定理は、貿易が進展すると各国の生産要素の価格が均等化することを示します。これは、貿易によって生産要素の需要と供給が国際的に調整されるためです。

ストルパー=サミュエルソン定理(図5-9)

ストルパー=サミュエルソン定理は、貿易が特定の生産要素の価格に与える影響を示します。具体的には、輸出財の生産に多く使用される生産要素の価格が上昇し、輸入財の生産に多く使用される生産要素の価格が下落することを示します。

図5-9の説明

  • 横軸:財Xの生産量

  • 縦軸:財Yの生産量

  • 要素価格の変化が示され、輸出財に多く使用される要素の価格が上昇

まとめ

ヘクシャー=オリーン・モデルは、各国の生産要素の違いによって特化生産と貿易が決定されることを示し、貿易の利益を説明します。また、貿易による所得の再分配については、要素価格均等化定理とストルパー=サミュエルソン定理によって、生産要素の価格変動が各国の所得分配に影響を与えることが説明されます。これにより、貿易は各国の経済に多大な利益をもたらすと同時に、国内の所得分配にも重要な影響を及ぼすことが理解できます。

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