リカード・モデルは、比較優位の概念を用いて国際貿易の利益を説明する経済モデルです。このモデルは、2国間で2つの財を生産する状況を仮定し、各国が相対的に生産効率の高い財に特化することで、双方に利益が生まれることを示します。

リカード・モデルの説明

リカード・モデルの主な前提は以下の通りです。

  1. 労働のみが生産要素:各国の生産は労働力のみで行われる。

  2. 労働生産性が国ごとに異なる:各国の各財に対する労働生産性が異なる。

  3. 完全競争市場:労働者は労働市場で自由に動き、完全競争が成立している。

  4. 一定の労働力:各国の労働力は固定されている。

  5. 移動不能な労働力:労働力は国際的に移動できない。

閉鎖経済(図4-2)の均衡状態

閉鎖経済における均衡状態では、各国は自国内で消費するために全ての財を自給自足で生産します。この場合、各国は生産可能性フロンティア(PPF:Production Possibility Frontier)に沿って最適な生産配分を決定します。PPFは各国の労働生産性を反映しており、限られた労働力を効率的に配分するための指針となります。

自由貿易経済(図4-3)の均衡状態

自由貿易が導入されると、各国は比較優位に基づいて特化生産を行い、自国での生産コストが低い財を多く生産し、他国から比較優位のない財を輸入するようになります。これにより、各国の生産と消費の配分が変化し、全体として効率が向上します。自由貿易下では、PPFを超える消費点を達成できるようになり、これが貿易の利益を示します。

貿易利益の説明

貿易の利益は、各国が比較優位に基づいて特化生産を行うことによって得られる効率性の向上から生じます。図4-2と図4-3の違いを見てみると、次のようなポイントが挙げられます。

  1. 消費可能性の拡大:閉鎖経済では、各国はPPF上の点でしか消費できませんが、自由貿易が導入されると、交換条件によりPPFの外側に消費点が移動します。

  2. 総生産量の増加:比較優位に基づく特化生産により、総生産量が増加し、余剰が発生します。

  3. 交易条件の改善:自由貿易により、各国は自国で生産するよりも低コストで他国から財を入手でき、効率性が向上します。

具体的な図示においては、以下のようになります。

図4-2: 閉鎖経済の均衡

  • 横軸:財Aの生産量

  • 縦軸:財Bの生産量

  • 各国のPPFは直線(労働生産性に基づく)

  • 各国の消費点はPPF上に存在

図4-3: 自由貿易経済の均衡

  • 横軸:財Aの生産量

  • 縦軸:財Bの生産量

  • 各国のPPFは変わらないが、貿易によりPPFの外側に新たな消費点が生じる

  • 特化生産により効率性が向上し、消費点が拡大

まとめ

リカード・モデルにおいて、自由貿易の導入は各国が比較優位を活かして特化生産を行うことを可能にし、全体として生産と消費の効率が向上します。この結果、各国はより多くの財を消費できるようになり、貿易の利益を享受することができます。

このように、リカード・モデルは国際貿易の基本的な利益を示し、閉鎖経済と自由貿易経済の違いを明確に説明しています。

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