夫のちんぽが入らない/こだま

「タイトルが口に出せない」となにかと話題になっていた本書。

夫とセックスができないという悲劇的な話なのに、読後感が悪くないのは、ひとつひとつの出来事を丁寧に書いているからか。夫と「私」の確かな絆を感じるからか。

「普通の夫婦」なんてないと思う。

夫のちんぽが入らないことも、そんなに思い悩まなくてもいいのにと思ってしまう。子どもができないことも、そんなに思い悩まなくてもいいのに。

普通を目指すと、そこにはつらさしかない。

真っ直ぐに自分を認めてくれる夫が「私」にはいるのに。


登場してくる人が割と皆エキセントリックで、でも皆根は人間くさいいい人なのが救いがあると思った。

特に大仁田のおじさんがいい味出していた。

つらかったのは夫の性を「私」が受け入れられてなさそうなのを感じたところ。

風俗に行ったり、DVDを見たりしている夫に対して、「私」の心がザワザワしている感じが伝わってきた。「私」は夫を表だって批判できない、批判する資格がないと思っているところがより悲しい。

どんなに大切な人だって、その人のことを丸ごと受け入れなきゃいけないなんてことないと思う。

生理的な嫌悪を感じたり、生々しいところも見えてしまうのが夫婦で、でもそんなところから少し焦点をずらして一緒に暮らしていけるのも夫婦だと思う。

夫婦は面白い、夫婦とは何なのだろうと考えた。


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