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イスラーム信条学入門 第1課

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慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名によって

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غلامعلی سنجری

著者:ゴラームアリー・サンジャリー教授

はじめての方必見です↓
イスラームの学問 イスラームを知るとは?

前回までのおさらい↓
序章

イスラーム信条学入門 第1課

認識論

目的:
1、 認識の意味
2、 認識ツールを知る
3、 五感のみでは認識のために不十分である

導入:認識の意味

人間の魂と理解は、あらゆる知識・学識・情報を持たない状態で人体が創出された後だった※1。(訳者註:つまり、精子と卵子が結合した後、所定の段階を経て肉体が形成され、その後に人間の魂と理解が肉体と結びついた、その際にあらゆる知識・学識・情報は持ち合わせておらず、白紙状態であったことを指す。人間の魂や理解が、人体(受精後から)の発生時の①前から存在したか、②それと同時か、③人体の発生後かの議論があり、これは信条学入門の後に学ぶ、イスラーム神学の来世معادの分野で詳細に検討される。)

このように、常に不明瞭なモノを明確にすることを追求する為に、創造主は人間に真実を追い求める知覚を定めた。つまり、人間はまさに最初の創出から(訳者註:つまり出生後の赤ちゃんの頃から)目や耳や…でもって新たな知識・学識・情報を追い求める者であった。このため、創造主はツールを定められた。人間がそれによって知識や知・叡智・教養を獲得し、望むものを入手できるように。別な言い方をすると、人間は常に認識を追求する存在物である。しかし、認識はどの仲介、ツールを用いて獲得するのか、留意しなくてはならない。認識は五感というツールのみで得られるか?認識ツールは五感という1つのツールだけではなく、もっと多いのか。よって、まず初めに、正しい認識の獲得と完全な宗教を見つけるために、ツールと認識ツールについて議論を展開することが必須である。

故に、認識の定義において、認識とは新たな知識・学識・情報を理解することだと言える。しかし、どのように認識は生じるのか、そして認識ツールはいずれなのか?

認識ツール

人間は新たな知識・学識・情報を理解するために、仲介を必要とするが、知・叡智・教養の獲得と認識手段は五感のみではない、と指摘しなくてはならない※2。むしろ、五感は知・叡智・教養を獲得する手段の1つである。では、認識ツールを順に挙げていく。

① 五感:人間は自身の知・叡智・教養の多くを五感によって獲得している(視覚、聴覚、臭覚、味覚そして触覚)。この五感は、人間の出生から寿命が尽きるまで、知識増加の原因となるツール・仲介である。美しい母の顔、花々の良い香り、食べ物の味など、すべて五感によって獲得する知・叡智・教養である。
このように、もしあるヒトがこの五感のいずれかを持たないと、確実に、その感覚で生じる知・叡智・教養から隔てられる。たとえば、盲目者は決して花々の色を見ず、それについての情報は全くない。このように、目という手段から生じる知・叡智・教養からは利益を受けることはない。


② 知性・理性:人間という存在において、五感が知覚出来ない現象を、そのツール・仲介によって理解する能力である。人間はそれによって論証し、比較する;五感が知覚しない、指摘不能な事象さえも理解する。たとえば、愛、敵意、人間性を五感は示すことが出来ないのである、五感がそれらを理解するために。(訳者註:つまり人間性自体に触れることも、敵意自体を見ることも出来ない。たとえば、敵意が顔の表情に現れたとしても、それは表情であり敵意自体ではないので、敵意自体を見ることも、触れることも出来ない)。

しかし、人間はそれらを知性・理性の力で理解する。このように、これら知識・学識・情報があることを、理解もしくは認識するために、五感より上位の力や能力が必須であり、それを知性・理性عقلと言う。よって、五感というツールで理解出来ない概念の認識は、別な能力、つまり知性や理性の力により獲得する。


③ 精神的理解※3;心の浄化、そして心の鏡を磨くことにより、ある人々に生じる様相で、いくつかの知識を獲得出来る。人間の心は、罪から遠ざかった結果において、平穏にそしてまさに、1つの埃もない鏡となる。このとき、彼の存在という鏡は、世界の真実の映像を、彼自身内に反映し、彼はそれを知るのである。伝承を見てみると、『40日、純粋に創造主のために尽くす者には誰でも、創造主は知・叡智・教養の複数の泉を心から口に溢れ出させる』※4。この知識・学識・情報の真実と、五感や知性・理性の知識とは異なる。精神的理解の最上級は啓示وحیと名付けられる。

啓示وحی:啓示は精神的理解の一種で、それにより預言者のみに報せを与える知識の小窓である。預言者は人類の導きとして様々な知識、たとえば、予知・予見や一般人に隠されている知識、導きの様々な手法の知識などを必要としているが、クルアーンの節によると、創造主は3つの手法で自身の預言者に教えを授けている※5。今までの内容から明確になったのは、認識を得る手法は、唯一五感のみであると憶測してはならないことである。むしろ、五感以外の手法からも知識や知・叡智・教養を獲得する手法がこの世界にはある。

霊感الهام:霊感も知・叡智・教養の小窓であり、創造主は一部の自身の賢者たちにそれを開放する。霊感は精神的理解の別種であり、当然預言者たちには当てはまらない。むしろ、預言者の階位に到達しない、ある一部の者たちの様相を含んでいる。たとえば、ムーサー(モーゼ)علیه السلام様の母にくだった霊感※6、マリヤム(マリヤ)علیها السلام様にくだった霊感※7である。たとえ、偉大なクルアーンにおいて霊感が《啓示وحی》の単語で述べられても、そこでの聖法的啓示は預言者からであり、預言者は聖法的啓示で聖法を創造主の僕に齎し、宣教をする遣いである。預言者以外の啓示وحیをそのまま霊感الهامと言うことが可能である※8。


:承諾する認識ツールによって獲得する世界に対する様々な見解は、いずれになるのか?(訳者註:たとえば実験検証できることのみを認める世界観、精神的理解をも認める世界観など)認識ツールの違いによって、我々の世界の見方も変化する。
次の課では、世界の見方を検討する。

まとめ

ある人々は、認識ツールが五感のみであると信じている。しかし、少々留意して注意深く検討すると、五感は認識ツール、そして知・叡智・教養を得る手段の1つに過ぎないと見抜くだろう。知識は、別な方法でも手に入る。認識ツールと知識獲得のためには、五感の他に、知性・理性、精神的理解もその手段となる。
啓示と霊感は精神的理解を意味し、至高なる創造主は、自身の賢者の一部にその栄誉を授ける。当然、啓示は預言者からであり、霊感は預言者には当てはまらない。創造主は他の者たちにも霊感を授ける可能性がある。

以上


脚注

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※1.وَاللّهُ أَخْرَجَكُم مِّن بُطُونِ أُمَّهَاتِكُمْ لاَ تَعْلَمُونَ شَيْئًا وَجَعَلَ لَكُمُ الْسَّمْعَ وَالأَبْصَارَ وَالأَفْئِدَةَ لَعَلَّكُمْ تَشْكُرُونَ
アッラーはあなたたちが何も知らない時、あなたたちを母の胎内から生まれさせ、聴覚や視覚や心(知能感情)を授けられた。おそらくあなたたちは、感謝するであろう。 16.蜜蜂章78節


※2.ある人々は、五感で理解したあらゆることを知識とすることを信条とし、知識と知・叡智・教養を五感のみ限ると考えている。知・叡智・教養の獲得は五感のみではなく、知識もまた五感で得られる知識だけではないことを見落としており、むしろ、ある知識は五感以外によって獲得されるのである。(訳者註:たとえば、空腹感、昂揚感、悲しみ、喜び、怒り、感謝などは五感での認識ではない。これらは自身が知っている感覚でありこれらを臨在知علم حضوریと言う。イスラーム哲学、イスラーム神学で議論される話題である。)

※3.アッラーメ・タバータバイー、イスラームのシーア派、72頁

※4.《من اخلص الله اربعین صباحا جري الله ینابیع الحکمة من قلبه الی لسانه》
بحار الانوار، ج67، ص 242. ر.ک: عیون أخبار الرضا، ج2، ص69.


※5.42.相談章51節。創造主はこの節で啓示の伝達方法を3つに限定している。①創造主と仲介を通さずに直接、関係そして知識を創造主から得る②何かしらの仲介③創造主が自身の預言者に陰から語りかける。

※6.そこでわれらは、ムーサーの母に啓示した。… 28.物語章7節
あなたの母に啓示されたものを、われらが啓示したとき。 20.ター・ハー章38節

※7. 天使たちがこう言った時。「おお、マルヤムよ!まことにアッラーはあなたを選んであなたを清め、全世界の女性の上に御選びになられた。」3.42.  

「おお、マルヤムよ!あなたの主に従い、サジダしなさい。ルクー(立礼)する人たちと一緒にルクーしなさい。」 3.43 

これは不可知の世界の情報であり、われらはこれをあなたに啓示する。彼らが筆を投げて誰がマルヤムを養育すべきかを決めた時、あなたは彼らの中にいなかった。また彼らが相争った時も、あなたは彼らと一緒ではなかった。 3.44 

また天使たちがこう言った時。「おお、マルヤムよ!まことにアッラーはご自身からの御言葉で、あなたに吉報を伝えられる。マルヤムの子、その名はマスィーフ・イーサー、彼は現世でも来世でも高い栄誉を得、また〔アッラーの〕側近の一人であろう。 3.45 
3.イムラーン家章42~45

訳者註:太線の啓示、これは霊感を意味する。)

※8.クルアーンが述べていることに加えて、預言者に啓示を通じて、賢者に霊感を通じて知識と叡智の小窓が開かれたことは、他にも歴史において我々に報告されている。その例として、3代目イマーム・フサイン様による、彼の援助者たちの実際的地位の目撃。アーシューラーの前夜、突如クルアーン全章の暗記者となったカーズィム・サールーキー、6代目イマーム・サーディグ様の恩寵により、ハッジ巡礼における、アブー・バシールの真実の目撃(訳者註:ムスリムが肉体的、金銭的、時間的にハッジ巡礼を果たせたにも拘らず、行わなず死んだ場合、彼は盲目で召集される、という真実)など、例は他にとてもたくさんある。

※クルアーン日本語訳は「聖クルアーン日本語訳 澤田達一」より引用

以上、この続きはありません。

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