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日吉辰哉プロの実況を何とかして欲しい

ちょっと耐えられない

かなり直接的な表現をしますが、2024/3/21のMリーグにおける日吉辰哉プロの実況が、私が観ている試合の限りにおいては、過去最低レベルの実況だったので、苦言を呈したく、記事化します。
あまり面白い話ではありませんので、そういうものを記事化しても楽しく読んでいただける気はしませんし、それはややポリシー外ではありますし、そういうことを書くのにはエネルギーが要りますし、「喜んでやります!」とはとても言い難いのですが、これはちょっと耐えられないなと、臨界突破した感もありますので、(この記事を書いているのは3/22ですので)翌日のタイミングということで少々頑張ってみることにしました。

先に断っておきますが、私としては日吉プロの実況について、「基本的には好ましいものであるし、Mリーグを楽しく観るため、盛り上げていくためには不可欠である」と考えていますし、現在のご活躍を否定するものではありません。今後も、「麻雀の面白みを伝えられるような実況」の有力者として、各所に呼ばれて欲しいと思いますし、そうなるだろうとも思っています。
しかし、他方、「盛り上がりを重視しすぎるあまり、『実況すべき内容が落とされていた』り、『選ばれる言葉が無神経』になってしまっている」ということもそれなりにあり、特に昨日の試合ではそれが最悪レベルだったと考えます。私は特定チームのファン・サポーターである前にMリーグ箱推しですので、なんらかの理由が理解できれば、ファン・サポーターとして「酷い」と思うようなことを実況で言われたとしてもある程度納得もするのですが、そういったものも特に感じられず、前述した日吉プロの実況のダメな部分が前面に出すぎており見ていられない、というものになっていたと感じました。これについて、「(noteでの指摘をしようと考えるほど)酷い」と感じた部分を、昨日の実況から抜き出して書いていきます。

『実況すべき内容が落とされている』

日吉プロはもともと「実況誤りの多い実況者」です。ツモ牌の見間違えなんかは日常茶飯事で、聴牌者のツモは全部ツモ牌にでも見えているのか、ツモ番のたびに騒いでは、解説者に「落ち着いてください」と言われることも少なくありません。また、そもそも待ち牌を間違えていることすらあります。

他のスポーツでそんな実況は、まあないでしょう。野球を例にしましたが、サッカーでだってセンタリングをシュートと言ったりFKは常に直接シュートするものだと言っていたりはしません。如何な理由、盛り上げのためであっても、そもそも起きている事象を正しく伝えられなかったり、あまつさえ歪めてしまうのでは、それは実況ではありません。単なる観戦者の願望です。それも、「その事象(例えばツモ)が起きることが嬉しいと思える人」の願望であって、「嬉しいと思えない人」にとっては、「相手びいきの実況をしている、公平性のない実況者」でしかなくなる、ということでもあります。

昨日の第二試合、南4局1本場の実況はこの「実況誤り」が最悪な形で出てきます。状況は「フェニックス魚谷選手3着、BEAST菅原選手4着。魚谷は満貫ツモでトップ条件、菅原選手は魚谷選手からの5200直撃以上で着順アップ」と考えればまずは良いです(他にも条件はあるけど、起きた事象からはこの条件だけわかっていればOK)。そこで実際に魚谷→菅原の5200のアガりが発生します。実況はこちら。

日吉「キツいリーチ来ましたよ。うわ魚谷一萬残ってる、一発だ」
石橋「あっこれ大変じゃない、満貫打つと変わる、5200は?」
日吉「リーチ一発ドラ1、5200は変わらないです。(計算)このままだと変わってない、裏ドラ次第。(裏なしを確認)これは魚谷3着ですね、菅原が4着のまま。」
(中略、得点が反映される)
日吉「あっ100点変わったごめんなさい。(中略)そして菅原最後魚谷からの直撃を決めたことによって100点逆転。これはBEASTにとってはメチャメチャ大きい100点ですね」

あのですね。この試合ってメチャメチャ大事で。BEASTは4着から3着になれればレギュラーシーズン通過の条件残るし、逆にフェニックスはラス引きはシーズン最下位になってしまう可能性を考えれば絶対に避けたいことのはずで、この条件って絶対に間違えてはいけないレベルのものなんですよ。
それを何ですか?計算して「5200では変わらない」と断言しておきながら、100点変わって入れ替わり?これ、実況ですか?

すべての間違いに対してそれを責めるつもりはありませんが、普段からミスの多い実況者が、大一番の最も大切なところでもなお、順位や条件にかかわる大きな実況ミスをする、というのは、本当にありえません。「やってはいけない」という意味で、ありえません。
実況の精度がこのままなのであれば、正直に言えば、この時期の実況やらないで欲しいです。冷めるから。

『選ばれる言葉が無神経』

この日の実況が最悪だったというのにはもうひとつあります。引用しましょう。まずは第一試合東1局の実況から。

日吉「さあ石橋さん。冒頭でも仰っていました。雷電・フェニックスは絶対にトップが必要という状況ですよね。裏を返せば、麻雀って同点トップは例外とすれば、1チームしかトップが取れないわけですよ。」
石橋「そうなりますね。」
日吉「ということは、この第一試合が終わった時に、フェニックスか雷電のどっちかがトップではないわけですよ。そのチームは、今期のレギュラーシーズン、かなり終わりに近づくという言い方をして間違いないですか、状況的に。」
石橋「そうですね…。」
日吉「ですよね!」
(この状況で打つことのプレッシャーに軽く触れて次の話題へ)

続いて第二試合終局後の得点アナウンス時の実況がこちら。

日吉「そして雷電とフェニックス、雷電残り2ゲーム、フェニックス4ゲーム、これはレギュラーシーズン通過の夢が途絶えたと言っても過言ではないような着順という結果となりました。」

選手が「難しくなってしまったけれども」といったりするとか、ファンが「今期はもうだめか」と思うのならわかります。実況がそれを言うんです?先の引用で「トップが取れなかったら終わり」と言われた雷電とフェニックスですが、じゃあ、2試合とも落としたので、終戦ということでもうMリーグは見なくてもよいですかね?終戦なんですもんね?

この試合、日吉プロは終始「ここでトップが取れなかったら終わり」ととにかく殊更に強調して実況を続けます。でも、そんなことは解ってて見てます。冒頭でも勝負どころであることは解っていますし、途中から見た視聴者に対してアピールするのだって、延々「苦しい」「苦しい」と単に言い続けてドラマ性が演出できると考えているのであれば大きな間違いです。それだけでは、延々とチームのしんどさを利用して、抉って、突き付けているという話にしかなりません。

翻って、素晴らしかったのが雷電の2戦目に出場した萩原選手のコメント。こちらも引用します。

萩原「それはね、現実と、諦めないという気持ちのバランスって、僕らは生きている中でそういうことと直面しながら選択をしていくんだけど、そういうことは僕らも馬鹿じゃないんで、いろいろ考えながらやっているけれど、やっぱりね、一戦一戦、出るからには、本田も全力を尽くしたし、僕も全力を尽くしてやって、結果がなかなかついてこなかったって言う。まあ気持ちは悔しいかな…。でもね、今日打ってたメンバーは本当に楽しかったですよ。」
襟川「最初の入場シーンでいつも通り胸に手を当てて入ってこられたときに、ユニバースの皆さんのことも考えられたんじゃないかなと思うんですが。」
萩原「いや、悪ぃなと思って。毎年毎年こんなに応援してくれてるのにさ、もう4人とも嘘つきみたいになっちゃって(笑)でもね、ひとつひとつの試合の結果っていうのは、すべてに僕は意味があると思っているから、これに関しては、受け止めるものは受け止めるし、雷電に対して思うことがある人がいても、僕らは何も変わらないかなと思っています。」
(中略)
襟川 「正直、残り2戦で、厳しいような状況になってはしまっているんですけども、本当に今日も勇気をもらえるような、熱い気持ちが伝わってきました。皆さんに向けて、残り2試合に向けて、すみませんが一言お願いします。」
萩原「いやもうね、別に僕ら現実的にかなり数字が厳しくても、僕がここで暗い顔してごめんとか、すいませんとか言ったところで、みんなの明日が楽しくなるわけじゃないんで。今日も応援してくれて本当にありがとう。残り2試合、ここまで応援してくれたんだから、ついでに、最後まで、応援してください!ありがとうございました!」

もうひとり、2試合連闘となったフェニックス魚谷選手のXのpostを引用します。

2チームともに、まだやれることもやるべきこともあり、終戦では全くないです。例えば、前項でも触れましたが、フェニックスは今期最下位となると、2年連続で最下位ということになってしまうので、それは避けたいとみんな考えているでしょうし、雷電だってひとつでも上の順位でいたいというのは道理であって、その意味では何も終わっていません。
もっとシビアなことを言うのであれば、Mリーガーは全員、成績次第では今年のシーズン終了をもって契約終了となる可能性もあるわけで、そういうことに向けてはここからでもしっかり成績を取り戻すということが求められてきたりもするわけで。
実際、2選手ともにそうした言葉は口にしていません。ファンは千差万別なので、「今期終わったわ」って思っている人はもちろん、口にしている人もいますが、それはファンだから自由であって、そのうえでチームに何を求めるのかもまた自由です。ひとつでも勝ってくれよ、でもいいですし、もう見ない、という人もいるでしょう。

でも、その「終わり」を、なぜ実況が勝手に決めるようなことを言うんですかね。選手も、ファンも、共通して「終わり」と言っているわけではないそれを、選手でもファンでもなく中立的な立場であるはずの実況者が、なんでひとり先に「終わり」って表現するんでしょう。そんな無神経でひどいことはないですよ。

どうしてそういうことになるのか

そもそも論として、日吉プロの実況は「目の前の状況や起きている事象に対して素直に言葉を発することによって成立している」と考えています。それは素直ではあるがゆえにキャッチーであり支持されたのですが、反射神経的であり、「その場で発される言葉に問題がある」場合や「単純な誤りが多い」場合には、最悪「適当なことばかり言っている実況」となります。
この方向性の「良い実況」は「当意即妙」と言えるでしょうが、少なくとも昨日の実況はそうではなかったと思います。

どうすればいいのか

「反射神経的」な実況が、それだけではまずい、というのなら、そのフォローは、いくつかありますが、それ自体は難しくありません。

ひとつは、「単純ミスをなくす」ことです。待ち牌の確認ミスや数え間違い、点差の計算ミス、ツモった牌の確認。こういうのを正確にやっていただくのは実況のベースであって、それが守れておらずに突飛なことをするというのは、いわゆる「型破りと形無しの違い(「守破離」という概念において、「守るべき型」を理解して破るのは「型破り」だが、そもそもの基礎を知らずにそれを破ることだけ考えるのは「形無し」である、というお話。いろんな歌舞伎役者が度々口にするところでもあるので、聞いたことがある方もいるでしょうか)」と同じ誤りがあると思います。
日吉プロはキャラ的にも、多少気持ちの逸りがあったり、ミスがあったりしても、それをスパイス的に楽しませることができる実況者だとは思いますが、あまりにも分量が多いのであれば、それはスパイシーを通り越して単に辛くて食べられないだけです。

ふたつには、「フォローを入れる」ことです。実はこれはできています。近藤誠一選手の「奇跡の倍満」の実況は、日吉プロの実況の中でも特に有名なものの一つでしょうが、引用します。

日吉「倍満ツモったらトップだ…」
土田「倍満あるじゃないこれ。」
日吉「倍満ツモったらトップ、いやこれリーチでしょ?誠一さんに任せたんだよ、あなたで負けたらしょうがないって言っているんだ、リーチでいいじゃないか!(リーチ)七萬一発でツモたら裏1でトップですよこれ。」
(中略)
日吉「いけるか、近藤!(ツモ)いった嘘だろこの男!?裏1でいい、裏1で倍満!どうなんだ!(裏1)あったぞ!信じらんないだろこんなの!」
土田「かっこいい、素晴らしい!」 

https://www.youtube.com/watch?v=S2MHTglmAqg

この実況が素晴らしいのは、「フェニックスが崖っぷちである」という前提もそうですが、ちゃんと「チームメンバーが近藤選手に進退を託している」という取材が事前にできていて、視聴者が知ることのできないその情報をしっかり提示することでその出場や苦境に正しくドラマ性を演出できている部分にあります。単に「ここで敗退したら終わり」ということに言及しているのではなく「敗退したら終わり、だけれどもその進退を最も頼れる仲間に託した」とするのがドラマ性であり、そこに感動できます。
翻って昨日も、「雷電本田選手が四暗刻単騎を聴牌する」という似た事件が起きました。どうでしたかね。そういうフォローはあったでしょうか。私は五萬に対するよくわからない言及を連呼しているだけに見えましたが。山に3枚全部残っているから五萬を残せ、を連呼するだけって、実況としてはまったく意味がないです。それはただただ日吉プロがそうなって欲しいだけでしょう。その方がドラマチックに見えるから。それが反射神経的だと言わないでなんだというのでしょうか。

みっつには(ってあんまり言いませんかね)、「適当なことは言わない」です。こちらは昨日の試合にはあまりなかった(というか、正直、上ふたつの要素があまりにも強すぎて嫌になってしまって、半分くらい聞けていないので引っかからなかった可能性がある)のですが、例えば以下のようなことを指します。2024/2/26の第一試合、南3局。ラス目のU-Next Pirates瑞原選手が、ラス牌の二萬を一発ツモ、跳満を上がった際の実況を引用します。

日吉「一発ラス牌!瑞原はラスにならない!こんなの一発でツモります?こんな跳満あります!?ゴリハネ!ゴリラ跳満!ゴリラジャンプですこれ!」

https://abema.tv/video/episode/444-1_s60_p177

ゴリハネって何ですか?
いや、わかりますよ。瑞原選手は昨年度くらいから押しを強くしていて、それが実って大きい手が和了れていて、MVP目前まで活躍出来ていて、そういう方針や姿勢を「ゴリラ麻雀」と言っているんですよね。まあ、誰が、どこから見ているかわからないMリーグの放送でチョイスするものとしてはいささかハイコンテクストに過ぎるとは思いますが、まあそこから来てるんですよね。で、それにしたってゴリハネってなんですか?ゴリラ跳満と直しても意味が解りません。ゴリラジャンプに至ってはもう口が滑ってますよね。
これは明らかな悪ノリと悪癖というほかありません。思いついたことを面白いと思って適当に言ってしまう。これは以前から指摘されていますよね。

萩原「あとはなんだろう、造語。麻雀実況・解説にありがちな造語を作るわけですよ。これはね、飲み屋のレベルなんですよ。」
亜樹「造語?」
萩原「要は、例えばですよ。とりやが「うれチーピン」っていう問題。なんだようれチーピンって。(中略。他の対局で他のプロがそれを言ったとして)お前は面白いと思うのか?」
(中略)
萩原「造語が、俺は何かね、ダジャレとかさ、どうしても内輪ウケ感がして。で、内輪で楽しんでいるものって外に広がっていかないんですよね。よく言うんだけど、プロ野球の実況がね、「今のフォアボールはうれ四球ですね」とか言って笑うアナウンサーいるんですか?「うれシュート決まりましたね、これは決勝点になりますよ」とか。そんなのいないよね。造語全部がダメって言っているわけじゃないの、これは良くできて、よく考えられている造語だなみたいなこととか、なるほどな、すごくいいなってものはもちろんあるんですよ。日吉はそん中でもノリで言っちゃうから。「粘る松本、粘る小林、ネバマツとネバコバ」とか意味が分かんない!これさ、面白いのかなみたいな」
(中略)
萩原「乱暴に言っちゃえばフリー雀荘の親父レベルな感じの会話になっちゃうわけよ、どこか。それを喜んでくれる人たちもいるんですよ、ファンの中には実際に。だから全部を否定しないけど、ちゃんと精査して、発信するんだったら考えて発信してくれよと。何十万人も見てくれてます、って調子に乗るんだったら、発信するものをちゃんと考えて喋れ、ということがすごく大事だなと僕は思う。」

https://www.youtube.com/watch?v=uH7Zx_rbOxM

さて、ゴリハネゴリラ跳満ゴリラジャンプってこのレベルを脱してますかね。

おわりに

以上まで、日吉辰哉プロの昨日2024/3/21の実況について思うところを書きました。思いのほか長くなりましたが。

冒頭でも述べたように、日吉プロの実況は、それ自体はMリーグに必要なもので、面白いものではあります。だからこそ、古舘伊知郎さんのチャンネルにも呼ばれて対談をしたり、Final Fantasy 14のリアルイベントに呼ばれて実況をしたりと活躍されているわけです。
なんだけども、こういう感じで嫌な部分が目に付いて(あるいは耳について?)しまうようだと、いつかどこかで嫌われてくることも増えてくるんだと思いますし、それはあまりにももったいないので、そうなっては頂きたくないなあと思う次第です。

ただまあ、少なくとも、この先盛り上がるシーンで日吉プロの実況だったら、ちょっと視聴は考えるかも知れないです。疲れちゃう。私はフェニックスのサポで、その意味では確かにRS突破は難しいですが、同時にKONAMIのサポでもありまして、その意味では観る機会自体は減らないのですけども。

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