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人類学的地域/3.インド この地域は三群の大人種が居住する地域である。

 ⚪︎メラノ・インド人種/アジア・黒色人種/ドラヴィダ人種
  ⚪︎中鼻ドラヴィダ人[典型的なドラヴィダ人種でヴェダにくらべると、さらに濃色の皮膚を持っているが、顔はより上品であり鼻はより狭い。頤は後退することなく、唇は厚ぼったいが外翻しない。皮膚の色を除けば、ヨーロッパ人と考えられることであろう。彼らの身長はヴェダよりも高く、1.62mある。毛髪は渦状を呈さないが、彎曲はより強い。頭は常に長頭である。それゆえ、メラノ・インド人は、白人と黒人の中間的特徴を持っている。大部分の人々は、アフリカ黒人と、オーストラリア黒人を繋ぐ橋としての黒人とみなす。デカン半島の土台を成しているが、とくに二つの地方で純粋である。南東では、コロマンデルの海岸に沿って広がり、ドラヴィダ語族に属するタミル人(身長1.62m、示数76.2)とドラヴィダ語族ではないアーリアン語族に属するシンガリーズの二つが主な代表。北東では、高原の最後の支脈から、ガンジス流域の平野までを占める大集団を構成するオーストロアジア語族に属するムンダ族が主な代表。

スリランカの人々(タミール人)


  ⚪︎広鼻ドラヴィダ人/先ドラヴィダ人/類ヴェダ[現在、インド全体で、濃色の皮膚を持つ人の住んでいるところで、ヴェダの特徴が目につくことが実際に知られている。ただ彼らにあっては、人種的特徴が多少薄化され、とくに額は真直ぐで、眉上弓は突出の度が弱い。デカン半島に局在して原始的集団を構成し、採集・狩猟・初歩的な耨耕を行う。半島の南部では、山岳地方に住み、クルンバ・カデール・パニヤン(身長1.56m、示数73.3)など多数の種族を形成している。彼らの皮膚はきわめて濃色で、低身長、厚唇、非常な円顔で頤が後退している。デカン北部や、ガンジス河までつづく丘陵では、より高身長、長顔、明色皮膚を持ついっそう大きな群を作っている。中でもビルとゴンド(身長1.59m、示数76.2)が最も有名である]』


ゴンド族ー中部インド


 ⚪︎ヴェダ人種(セイロン島には、島の東部の山岳や森林に逃げこんだ非常に原始的な集団が存在する。数千人の個体しか含まず、きわめて初歩的な文化を示しているに過ぎない。これがヴェダである。彼らの身性の型は他の島民たちとまったく異なり、身長は非常に低く(1.54〜1.56m)、皮膚は濃色であるが黒くはない。毛髪も同様濃色で、長く波状であるけれども、ひげはわずかしか生えず、身体の毛も少ない。頭は非常な長頭(示数75)で、特徴は額が後退し、窪んだようにみえる目の、上の方の眉上弓が強く発達していることなどである。顔は低く広く、どこか子供に似たところがある。鼻も幅広く、陥凹した鼻根を持つ。唇は軽く突きでているが外翻しない。また突顎も示さない。昔からこの体型に対して注意が向けられてきた。彼らはオーストラリア人と顕著な類似性を示し、現生人類の中で、最も原始的なものの一つである。)

ベッダ族ースリランカ


⚪︎インド・アフガン人種[多くのインド人は、白色人種に属する。彼らは、とくにインダス・ガンジス流域の平野に局在するが、遅れて半島に侵入したこと、北西のイラン、トルキスタン地方からやって来たことは疑いない。インドに、印欧語とその文化、ならびに犁耕と、おそらくは族長制度とをもたらしたものは彼らである。背が高く、つやつやした明色の皮膚を持つのを特徴とする。体は大きく釣合が取れている。頭は格好よく、長頭で、額は真直ぐ、顔は長く、鼻は直状で、ヨーロッパ人よりわずかに幅広。毛髪は波状で、前述の二人種よりもおそらく黒くない。栗色の場合もある。眼は農色であるが時に灰色が見られる。全体として、これは美しい人種で、姿態の端麗なこと、調和の取れた釣合を持っていることが目につく。とくにインダス河の盆地、ガンジス河の平野を占めていて、シクならびにパンジャブの住民において、とりわけ純粋である。(シクの身長1.72m、示数73.8)。印欧語とカースト制度を持って来たのが彼らであることが一般に認められている。《※ドラヴィダ語族に属するとはいえ牧畜民であって、南デカンの山岳に住んで高身長、華奢な鼻、明色、多毛性などによって、近隣集団と区別されるトダ族もこの人種に区分される》]

シーク教徒

アナトリア人種(インダス低地ならびにデカン西方における白人は、別の人種体型をもってきわだっているが、広く分布していることがわかったのは最近のことである。中位の身長(1.65m)で、頭は高く、後頭部が平たい短頭(示数81〜82)、顔は短く、鼻は長くしばしば凸状である。皮膚は明色か、軽度の褐色、毛髪と眼は濃色で、ひげの発育は豊かである)

南東人種(ヒンドスタンの西全域、とくに回教徒の上流階級において、その影響を見ることができる)

黄色人種の活動は、ブラーマプートラの渓谷に沿い、ビルマをよぎってあらわれた。この影響は中央蒙古人種ならびに南蒙古人種によるもので、ヒマラヤとアッサムに見られる。

ブータン人



※参考文献 
人種とは何か 著者寺田和夫 岩波新書 1967年
人種 (著者アンリ=ヴィクトル・ヴァロワ 訳者寺田和夫) 白水社 1971年
モンゴロイドの道 朝日新聞社 1995年
「民族」で読み解く世界史 著者宇山卓栄 日本実業出版社 2018年
世界民族辞典 弘文堂 平成12年
世界民族言語地図 東洋書林 2000年
世界の民族全20巻 平凡社 1979年
中国少数民族辞典 東京堂出版 平成13年


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