現在あるオタク・6 白いおにーさん

 先日「そして現在」として、若手俳優(2018年1月に25歳のお誕生日を迎えました、パチパチ)稲葉友君のファンイベントに行った話を書いたが、大っぴらに私と旦那は稲葉友君のファンである。
 かといって他の役者さんファンと対抗する気もないし

「彼を勝手に応援しないでくれる!?」

という感情もさらさらない。

「わーい、みんな仮面ライダードライブに出ていた役者さんが好きなフレンズなんだね、そしてとりわけ稲葉君が好きなフレンズなんだね」

 という立場である。

 厳密なファンの世界には、ファンとしての立ち位置を意味する、なにやら呪文のような専門用語が(どーたんとか、はくおしとか)あるらしいが、いまいち理解できていない。難解だ。

 たまたま彼の舞台デビュー作である『真田十勇士~僕らがまもりたかったもの~』の舞台を見に行き、線の細いとっても若い子が一生懸命「猿飛佐助」として立ち回りを演じているのに接したのが、私の彼を知ったきっかけだ。
 その舞台に足を運んだのは、正直、有名な他キャストさん目当てだった。
 劇団四季の「美女と野獣」の日本初演キャストであるその方は、もう圧倒的な表現力と迫力で舞台中を圧倒していたが、初舞台&初主演の稲葉君は、それこそひりひりと痛いくらい一生懸命に「佐助」になっていた。
 声を張り、細い体を翻し、所作の甘い所や至らない所は正直ありまくりだったが、その健気さと素直な感じが印象に残った。
 その後、幾つもの映画やテレビドラマに出演した稲葉君だが、主戦場は舞台。演劇好きな私ではあるが、観たり観なかったり、他のキャスト目当てに行って

「ああこの子、頑張ってるんだなあ」

と思ったり、の距離感だった。

 それが奥さん! 一気に露出ばーーーん(ジョジョの擬音風に読もう)ですよ。

 2014年から2015年にかけて一年間放送された「仮面ライダードライブ」。竹内涼真君の初主演出世作として名の知れた作品。
 彼は「警察官、職業仮面ライダー」である竹内君扮する泊進ノ介のバディ・婦警の詩島霧子の弟役だった。
 色白の細っこい、いたいけな少年から、ぴかぴか卵肌の美青年になっていた稲葉君が、日曜日に「へっへーん」と言うドヤ顔で眉を吊り上げ、陽気な笑顔で登場した。
 しかも作品は仮面ライダーですよ。正義の側ですよ。特撮番組の華、追加戦士ですよ。
 しかも東映ギャグロボット出身の石田監督の、ど派手な演出に載って。
 クラッカーと花びらとくす玉紙吹雪をまき散らし、花火まであるじゃないか。(本当です)
 そして二号ライダーに変身した! しかも平成ライダー屈指のかっこよさだ。
 白い細身のシルエットにブルーと赤のトリコロール。マフラーもひらひらはためいているぞ。これはどういうことだ。
 盆と正月が一緒に来たかと思った。
 スーツアクターの渡辺淳さんも惚れ惚れするボディラインに流れるような軽快アクション。
 変身前の詩島剛を演じる稲葉君と、完全にシンクロした演技巧者ぶり。
 それまでもドラマや舞台姿を見て来た稲葉君だが、こんなに弾けたキャラクターではなかった。
 どす黒い影を背負ったり、世間に反抗していたり、女をだましたりの、抜群の美男力(ジュノンボーイ様です) を生かした役が多かった気がする。
 その彼がど派手に、でもそこかしこに影や闇落ちフラグをちらつかせつつ演じる「仮面ライダードライブ」の二号ライダー変身者・詩島剛は、真っ白いお肌に白いパーカー、カラフルなTシャツに綿パン、スニーカーの紐までTシャツと揃えるというとてもポップな青年だった。
 前髪長めの茶髪をくせ毛風ウエーブにして、言っている間に敵が逃げられるほど長い口上を述べ、変身ポーズをきめる様は、変身後のライダーを演じるスーツアクターの渡辺淳さんのキレッキレのアクションとやんちゃな演技、影を漂わせる背中の表情と相まって、わしら夫婦の心を直撃した。(大事な事なので二度言いました)

 やべえ。変身セット買っちまうかも。

 思わず変身ベルト・マッハドライバー炎とシグナルバイク(変身ベルトにセットする変身アイテム。バイク型) と、Tシャツとパーカーをポチった。
 しかも白地に赤い裏地とラインのパーカーは、財団Bことバンダイプレミアム、通称プレバンで通信販売されていた。
 正直高かったが夫婦それぞれに注文したのでペアである。
 馬鹿だ。いい年こいてコスプレペアかよ、と笑わば笑え。楽しいからいいのだ。
 ちなみにご近所に買い物に行くときやお散歩のときに着倒しているが、一度も指さされた事はない。完全に元をとってます。 

 さて稲葉君演じる詩島剛は明るく元気な青年だが、登場して間もなく、ただの光属性のキャラではないなとわかる。
 家族の秘密や、どうやら大層体に負担のかかる変身についてもドラマにおり混ぜつつ、主人公を「しんにーさん♪」と呼びつつじゃれかかったりからかったり。
 しかもヒロインの弟ときたもんだ。シスコン。大層なシスコン。もうどれだけファン層のツボを突きまくるんだ。

 登場の間、ニチアサの華である上裸に肩から胸にかけての包帯姿、いわゆるニチアサ巻きやら、友人の敵討ちやら、弟感猛プッシュの可愛らしさと、かっこよさと不憫さと言う、ほぼパーフェクトな立ち位置で、稲葉君は舞台仕込みの演技力を発揮していった。

 正直こんなに吹っ切った演技するとは想像できなかった。

 舞台でもとっても生真面目で、若い脆さむき出しの演技が多かったから、その幅広さに感心した。
 私が見逃していた間に、色んなものを吸収して、引き出しにしまって、成長していたのだ。
 そして、仮面ライダーマッハと詩島剛ファンにとって、看過することができない「西堀令子」嬢絡みの放映に突入していくのである。

 仮面ライダーやスーパー戦隊というドラマは一年間通しなので、メインの脚本家一人か二人に、サブのライター何人かという布陣が多い。
 仮面ライダードライブもメインが明るいストーリーから闇ストーリーまで幅広い三条陸氏、タッグを組むのがウルトラマンからゴジラシリーズと、主にシリアスな心理描写を得意とする長谷川圭一氏で、そこにアニメや少女ものも多い香村純子氏、劇団を主宰しヒーローショーの脚本も多い毛利亘宏氏が入るという具合だった。
 その、長谷川圭一氏が、詩島剛の闇の部分を強烈に引き出して見せた。

 彼、稲葉友氏演じる詩島剛と言う子は、文字通り「ごう」≒「業」を背負った運命の子である。
 実の父であるマッドサイエンティストが怪物たちを作り、殺戮を繰り替えしているため、愛する姉に知られないうちに、父親の生み出したロイミュードと言う成長型アンドロイドを一掃しなければならないという固い決意を持っている。
 それは敵だったアンドロイド青年チェイスが葛藤を経て味方についても全面的に拒否してしまう程、強い感情である。
 たった一人の姉、大事な家族を守るため頑なに敵を憎む青年。
 どうしてくれよう。鉄板だ。どストライク過ぎる。

 脚本の長谷川氏は、人の心に潜む闇を引きだし、周囲と葛藤を経て感情をむき出しにさせるドラマ作りを好むが、後にVシネにまで発展させるほどに「憎悪に燃える女」がお好きなようでもある。
 詩島剛と言う未熟な若者を翻弄し、負の感情を増幅させ同士うちを招く、あまつさえ自分を殺させ、犯罪者である父の果たせなかった完全犯罪を成し遂げようとする。
 刑事ものである「仮面ライダードライブ」の中でもとりわけ複雑に絡み合う27・28話の前後編が、番組放映後1年を経てVシネマになったのだ。

 その前に長谷川氏の西堀令子愛が炸裂した小説本も出た。
 これはもう、どれだけ西堀光也と令子のゆがんだ父娘愛が好きなんだという、長谷川氏の執念が感じられる本であり、ドライブファンの中でも好き嫌いは分かれると思う。
 詩島剛ファンの中でも評価は分かれる。
 だが、私は好きだ。
 大森プロデューサーがメイン執筆を担当し、長谷川氏は監修になっているが、もうごりごりに西堀令子寄りでものすごい。西堀愛がスパークしまくっている。
 先行作品として、人気キャラであるチェィス≒仮面ライダーチェイサーのVシネマが一本作られ、大好評になったのを受けての作品である。
 メインライターである三条氏が脚本を書いた、敵のボスであるハートを変身させる『仮面ライダーハート』との二本立て。なんてこった。ダブル主演だ。盆と正月に加えてゴールデンウイークも『お待たせ♡』とやって来たようだ。

 しかもキャストの舞台挨拶付きの上映会まである。
 品川インターシティ。品川港南口から直結である。行くしかないっ
 私と旦那は、特撮友を巻きこんでチケット獲得に乗り出した。

ここまでが全部イントロなんである。本編はこれから。長いアバンタイトルで申し訳ないっ

(続くっ)

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