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もの買って来る 自分買って来る

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私の手元にやってきたもの。 タイトルは河井寛次郎の言葉。
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2019年4月の記事一覧

5【金彩花柄のグラス】

花柄が好きだ。 いつの頃からか気に入った花柄があると、素材が何であれ用途が何であれ洋の東西や新旧を問わず財布の紐が緩んでしまうようになった。 それも、比較的成人してからの話。 「花柄」 一言で済ませようと思えば万国共通。 世界中にフラワーモチーフは溢れているし、 古代から人は「花」に対して執着してきているように思う。 強いアイコンだ。 しかし、いかにアイコニックな図案だったとしても私のなかで 「お花だったらなんでもよい」 というものではない。 花にだって描かれ方があ

4【硝子のろうそく立て】

灯火具が好きで、細々と買い集めている。 小さな硝子製のろうそく立て。 そのストンとしたフォルムや面取りが施されたデティールに、ヨーロッパのものかと足を止める。 聞けば、大正時代の硝子製。 割線が残っていて、内側は空洞。 作りはそんなに丁寧でもないし、大量生産だろう。 時間が経った硝子製品によくある、ごわごわとして波打つような肌。 対になって仏具として使われていたものだろうか? 乳白色の曖昧とした姿は、神棚のもののようにも思える。 内側の、放射線状に伸びる線が可愛らしい。

3【ミモザ】

2月の中ごろ、まだ肌寒い日。 自分のためにミモザを買った。 「今シーズン初めてのミモザです」と店の人が教えてくれた。 お花に詳しくないので、花屋ではいつも買うのをためらってしまうけれど思いきって 「このひと枝を短くできますか?」 と聞いたら、長い枝をパチンパチンと切って小さく束ねてくれた。 もっと花がたくさんついている枝もあったのだけれど、 私にとってはミモザの葉のグリーンがあまりにも美しく 花は少しだけついているものを選んでもらった。 ミモザの、たわわに咲く花の黄

2【中国童子針山】

べんぱつ。 それぞれ黄、青、桃、緑の服を着た子供たちが手を繋ぎ、何か大きな赤い球体を囲んでいる。 古代の中国の子供達を模したこれは、いわゆる唐子。 これは、針山、つまりピンクッション。 神戸の中華街のお土産物屋。 春節祭真っ只中の溢れる人混み。 なだれこむように入った、あふれんばかりに雑多なものが陳列されたお土産物屋で目が合った。 チープである。 なんだか薄汚れている。 ・・・粗い。 いやいや、買わないだろう。 しかし、店を一回りしてまた戻ってきてしまう。 再び

1【水牛の角の火薬さじ】

象の皮膚のような 古い仏閣の柱のような 薄い膜が永い年月をかけ蓄積して徐々に形を成したかのよう。 磨耗しているのか剥がれかけているのか、ひび割れ、なめらかな凹凸がある。 素材は水牛の角。 スウェーデンで、猟銃に火薬をこめるために使われていた民具。 “さじ”だ。 日本でも同様のものが作られていたけれど、日本のものは水牛の角の黒い部分を使ったものが多いのだとか。 不思議なもので、さじなのだ、と思うと全てがそれらしく見えてくる。 円錐形の上部に施された段々も、握りやすさを