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日本財団の研究 社会的養育改革編① ベビーライフ事件を引き起こした、養子縁組あっせん法のおぞましい本質


日本財団の研究 社会的養育改革編を始めます

最近、認定NPO法人フローレンスの駒崎弘樹が話題になっています。

そのキッカケの一つが、特別養子縁組によって子どもを300人以上海外に売り渡していたとされる、いわゆるベビーライフ事件です。ベビーライフは、フローレンスら他2団体とともに「日本こども縁組協会」を組織していました。

しかし、昨今のSNS論調を見ている限り、この事件の背景にあるスキームの全体像については、あまり知られていないように思います。

特別養子縁組あっせん事業は、2014年から「革命的」な手法で推進された、「社会的養育改革」の一部にすぎません。その改革には、特別養子縁組あっせん法の他、児童福祉法改正や子ども基本法の制定など、与野党全会一致で通した一連の法改正が含まれています。そして子ども家庭庁の創設も、この流れの中で理解される必要があります。

そして、その改革を強く推進した、特定の組織や人物たちが、確かに実在するのです。もちろんその最重要人物は、駒崎弘樹です。

しかしもう一人、駒崎と同じぐらい重要な人物が存在します。皆さんがご存じ、あの超有名な弁護士の配偶者だということだけ、ここでは書いておきましょう。

この「日本財団の研究」では、これから数回に分けて、「社会的養育改革」について論じていこうと思います。これは、私が日本財団に極めて強い興味を持つキッカケになった巨大な問題です。

この記事を読んでくださっている皆様にも、ぜひ最後までお付き合いいただければ幸いです。我が国中枢の闇の深さを、垣間見せることができると思います。

本記事は、初回につき全文無料です。

ベビーライフ事件の概要

ベビーライフ事件について、簡単におさらいしておきます。

日本から国際養子縁組で海外に渡った子供は、2011~19年の約9年で少なくとも336人に上り、人身売買の恐れがあると指摘されています。そして、その相当部分に関わっていたとされるのが、一般社団法人ベビーライフです。

ベビーライフは13~15年度に計113件の養子縁組を成立させており、このうち養親の居住地が海外の国際養子縁組は71件。この間に海外の養親から受け取った費用は計約2億1000万円。一件あたり300万円近い高額の費用を養親に請求していました。

以下は、ベビーライフの公式Webサイトに掲載されていた、養親と子どもの写真です。一見して、多くが外国人であることがわかります。

Internet Archive ベビーライフ 沿革

ベビーライフが社会問題になったのは、2020年7月に突然事業を閉鎖し、従業員や養親・実親らが代表と連絡を取れなくなったことが契機です。

複数の元従業員の証言によると、閉鎖に至る原因は、代表とスタッフとの対立でした。

代表は、利潤のために高額あっせん費用と国際養子縁組をすすめたい。それに対して、スタッフは、国内での養子縁組を推進するために、あっせん費用を安く抑えたい。その対立関係から、スタッフが数十人単位で入れ替わり、最終的には事業が存続できなくなったのです。

ベビーライフが突然事業停止されることにより、様々な問題が起きました。たとえば、養親が実親と連絡が取れない、産みの親が出産の際に必要なサポートを受けられないといった問題です。

特に深刻なのは、資料が失われることにより、子供が自分の実親が誰なのか、知ることができなくなったということです。一部の資料は、代表から同事業を担当する東京都福祉保健局に送られたようですが、その大部分は失われました。

養子縁組あっせん法の概要

ベビーライフ事件の、もっとも重要な法制度的な背景が、いわゆる養子縁組あっせん法(正式名称 民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律)です。少し堅苦しい話になりますが、この問題の本質を理解する上で必要なので、おつきあいください。

この法律は、2016年に衆参両議院で与野党全会一致で可決され、2018年4月から施行されました。

この法律について、一般には「これまで法的に規制されてこなかった養子縁組あっせん事業者を、許可制にしたもの」と解説されています。確かに、この法律は次のような条文から始まっています。

第一条 この法律は、養育者との永続的な関係に基づいて行われる家庭における養育を児童に確保する上で養子縁組あっせん事業が果たす役割の重要性に鑑み、養子縁組あっせん事業を行う者について許可制度を実施し、その業務の適正な運営を確保するための措置を講ずることにより、民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護を図るとともに、あわせて民間あっせん機関による適正な養子縁組のあっせんの促進を図り、もって児童の福祉の増進に資することを目的とする。

民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律

しかし、これらの説明には、最も重要な前提が(おそらく意図的に)排除されています。

1947年に成立・施行された児童福祉法では、そもそも営利目的の養子縁組あっせんは違法とされてきました。

第三十四条 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
八 成人及び児童のための正当な職業紹介の機関以外の者が、営利を目的として、児童の養育をあつせんする行為

児童福祉法

そして同条文に対する違反は、第六十条により、「三年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」と定められています。

実際、2017年には、特別養子縁組あっせん団体の元理事らが、営利目的で子どもを斡旋し200万円を取った疑いで、千葉県警に逮捕されています(弁護士ドットコム)。養子縁組あっせん団体に対する児童福祉法違反は、70年間で全国初でした。

2018年に施行された養子縁組あっせん法においても、営利目的のあっせん事業は違法とされています。

第七条 都道府県知事は、前条第一項の許可の申請が次に掲げる基準に適合していると認めるときは、同項の許可をしなければならない。
五 営利を目的として養子縁組あっせん事業を行おうとするものでないこと。

第九条 民間あっせん機関は、内閣府令で定める種類の手数料を徴収する場合を除き、養子縁組のあっせんに関し、いかなる名義でも、実費その他の手数料又は報酬を受けてはならない。

民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律

また、第三条では、次のような項目もあります

2 民間あっせん機関による養子縁組のあっせんは、可能な限り日本国内において児童が養育されることとなるよう、行われなければならない。

なぜベビーライフは起訴されなかったのか

しかし、一件300万円を養父母から徴収し、国際的に養子縁組あっせんを行い、無責任にも事業を突然放棄したベビーライフの代表が起訴されたという話はありません。

なぜこのような悪質な事業者が野放しになっているのでしょうか。児童福祉法違反で逮捕された千葉県の事業者と、ベビーライフでは、いったい何が違うのでしょうか?

養子縁組あっせん法においては、金銭の徴収に対して「内閣府令で定める種類の手数料」という制限しか存在しないのです。その手数料について、厚生労働省令第百二十五号の第三条において、次のように定められています(長いので要約します)

第一号手数料:特定の養親希望者に関する業務に要した費用。
相談援助、調査、交通費、通信費、研修費、養子縁組あっせん児童およびその父母への援助、出産費用、養育費、裁判所提出書類作成費、国際養子縁組に関する費用、相談後の支援費用。
第二号手数料:特定の児童やその家族に関する業務に要した費用。
相談援助、調査、交通費、通信費、出産費用、養育費など。
第三号手数料:養子縁組あっせん事業に要する総費用から第一号および第二号手数料を差し引いた残額。人件費、事務費、その他の運営費用

そして、省令で定められた名目の手数料と、その金額をあらかじめインターネットなどで明示しておくことが求められています。

言い換えれば、自治体がチェックするのは、「手数料の名目」だけです。手数料の金額が適正なのか、それが実費よりも多いか否かをチェックする仕組みは一切存在しないのです。手数料名目さえ適法だったら、実質的には営利目的のあっせんを行う団体も、合法的な事業者となるのです。

はっきり言って、完全にザル法です。

ちなみに、同厚生省令では、国際養子縁組に関する規定もあります。あっせん法では原則国内とされていた養子縁組ですが、実質的には海外養子縁組も容認されていたことが理解できます。

5 法第六条第三項第六号の内閣府令で定める書類は、次のとおりとする。
五 国際的な養子縁組のあっせんを行おうとするときは、当該国際的な養子縁組のあっせんの相手先国に関する書類
六 国際的な養子縁組のあっせんを行おうとする場合であって、取次機関を利用しようとするときは、当該取次機関に関する書類

以上が、ベビーライフ(の代表)が起訴されない法的根拠になっています。

養子縁組あっせん法の本質は、営利目的あっせん事業者の合法化

このように整理すると、養子縁組あっせん法の本質は、一般に主張されるように「事業者を許可制にした」ものではありません。

そうではなく、これまで児童福祉法で厳に禁じられてきた営利目的のあっせん事業者を、実質的に合法化するものだったのです。

そして、こんなザル法を与野党全会一致で通してしまったのです。ベビーライフ事件は起こるべくして起こった事件であり、その被害者に対して、法案に賛成した全国会議員には道義的責任があると思います。

しかし、なぜこのような酷い法案が、与野党全会一致で可決されてしまったのでしょうか。

それを理解するためには、どのような組織や人物が、養子縁組あっせん法などを推進してきたのか、その人脈的な背景を知る必要があります。

次回予告

皆様読んでいただきありがとうございました。

この記事に意味があると思われた方は、拡散やサポート・フォローをいただければ大変に有り難いです。

次回は、ベビーライフが加盟していた日本こども縁組協会(駒崎弘樹会長)を、厚労省と日本財団がバックアップしていた話について書く予定です。



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