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徹底検証:誰が本多平直氏を陥れたのか―あるいは立憲民主党へのレクイエム

今回のnoteでは、本多平直議員が辞職に追い込まれた事件を、改めて振り返りたいと思います。

私は以前、「必要な手続きや推定無罪など民主主義の原則を破て一政治家の政治生命を途絶させようとした行為」によって、福山幹事長・枝野代表・寺田座長の三人は最低でも離党相当であると主張しました。

この問題は、残念ながら、党の処分が決定される倫理委員会の決着前に、本多議員が自発的に離党・議員辞職をするという形で決着してしまいました。

しかし一連のプロセスに対して、党は有権者に対して説明責任があるはずです。

この件について、本多氏が辞職を表明した当日、福山幹事長がなんと言ったのか、ぜひ皆さん見てください。

もう離党されたのでその細かいことを言及する必要ありますでしょうか?
意見書の1つひとつのやり取りに対して、私が何か説明をしたり反論したりすることが必要でしょうか?

今回の話を喩えれば、警察やマスコミに冤罪をかけられた容疑者が、自殺したような状況です。「冤罪の件、もう自殺したのだから、何か説明をしたり反論したりすることが必要ですか?」と言うのは、あまりにも無責任です。

本多氏がどうであれ、立憲民主党には自分たちの振る舞いの正当性について説明する義務があります。

本多氏の追放に、立憲民主党中枢はどれだけ主体的に関与していたのか?

そもそも、本多氏が離党するに至る一連の事件とは、いったい何だったのでしょうか?

多くの見方は、「党は本多議員の発言を揉み消そうとしたが、フェミニスト団体の批判がおさまらなかったために、やむなく本多氏を離党させた」というものです。本多氏に同情的な人でも、大多数の人間がこの見方を採用しています。

調査報告書も本多氏の意見書も精査した私は、その見解に非常に強い違和感を感じます。

先に私の結論を書きます。

立憲民主党中枢、少なくとも福山幹事長は、本多氏の追放に早い段階から主体的に関与しています。

本多氏の「性交」発言を捏造し広く流布したのは寺田座長ですが、そこには一部の党幹部の黙許があったはずです。福山幹事長は本多氏に対して音声データへのアクセスと記者会見での説明を拒否し、「虚偽自白」を勧めました。その上で、内密に進めていた党員資格停止処分を無理に正当化するために、「調査報告書」を作成させ、公表したのです。

このように私が主張する根拠は以下の通りです。

①性交同意年齢引き上げは、党幹部らの事前方針だった
②寺田座長は、党方針とWT運営で板挟み状態だった
③産経新聞へリークしたのは寺田氏の可能性が濃厚
④寺田座長は、党からの処分がないと確信していた?
⑤福山幹事長が音声データの隠蔽に関与している
⑥福山幹事長が本多氏の記者会見を止め、「自白」を強く促した
⑦調査報告書の致命的欠陥は党の責任
⑧福山幹事長による委員会への諮問自体の不公平性
⑨調査報告プロセスの不公平性
⑩調査報告書は、明らかに本多氏の処分を正当化する目的で書かれた
⑪立憲民主党はマスコミに対して発言の訂正を行っていない

ひとつひとつ説明していきます。

①性交同意年齢引き上げは、党幹部らの事前方針だった

調査報告書によれば、ワーキングチームは性交同意年齢の引き上げという結論が先にありました(p.4)。

寺田座長は、就任当初、法務省の検討作業は進んでいるので国会中に一定の方向性をつけようという政調会長など党幹部の方向性の中で、座長を打診されて受けた。これに対して本多議員の立ち位置は、反対に思い入れが強いと理解していた。本多氏としては承服しがたかったと思うが、党としての方向性だったと寺田座長は考えている。(p.6)

泉政調会長ら党幹部は引き上げ方針をすでに決定しており、それに対して、本多議員はいわば党方針に対する抵抗勢力と見做されていたのです。

②寺田座長は、党方針とWT運営で板挟み状態だった

ともあれ、本多議員の慎重論に配慮すれば、党が結論が出せなくなるということに寺田座長が非常に思い悩んだ事実があります。

以下は、調査報告書の中で例外的に直接話法で書かれた箇所です。話者は寺田座長です。

10数回の勉強会で、運営する事務局自体に心身の疲労があったし、秘書が眠れなくなるような状態になり、自分自身としても精神的にきつい思いをした。自分との考え方があまりに違うし、毎回高圧的に語気を強めて意見したり要求したり、考え方を否定する、ということなので、心身共に疲労した。男性じゃなかったら続かなかったと思う。女性たちは心身ともにやられていた。自分の運営自体に問題があったかどうかはともかく、一般的なWTとは違う雰囲気が続いていた。(p.7)

寺田座長の「男性じゃなかったら続かなかった」という直球ミソジニー発言については、さしあたりスルーしてください。

ここで大事なことは、寺田座長がWT運営と党方針の間で板挟みになっていたということです。

③産経新聞へリークしたのは寺田氏の可能性が濃厚

本多氏の意見書から、問題となった5月10日の会合から産経新聞の報道までを時系列で再構成してみます。

・5月10日。年齢差の離れた恋愛は絶対に存在しないと主張した島岡教授に対して、本多氏は「例えば(実在の)私が恋愛の存在を主張しても、それを認めないのか」との趣旨の質問を行う。
・5月13日、寺田座長は本多議員と面会し、会話の内容を秘密裏に録音する。
・6月3日朝、党所属全国会議員に対しWT中間報告案が一斉送信され、その中に「50代と14歳の性交の発言」が掲載されていた。この報告案はイレギュラーなことにWTでの事前確認・了承を経ておらず、したがってメンバーである本多氏の預かり知らぬところで作成されたものだった(意見書 p.8)。
・6月4日、産経新聞にて「50歳の私が14歳と性交して捕まるのはおかしい」という発言が匿名報道される。

論点は2つあります。

まず第一に、発言が事実上の捏造であったということです。本多氏によれば、「歳の離れた恋愛は絶対にありえない」という島岡教授に対して、回答を引き出すために、「実在する私が主張しても、絶対に恋愛は存在しないと言えるのか」という主旨の質問を行ったのでした。それも、現行では年齢差が離れた性行為は淫行条例違反になることは前提の上での、立法過程の議論です。

それに対して、産経新聞で報道されたのは、「50歳近くの自分が14歳の子と性交したら、たとえ同意があっても捕まることになる。それはおかしい」という発言でした。ここに事実の歪曲があります。

第二に、この歪曲された発言を産経新聞にリークしたのは誰だったのか、という問題です。この実行者は、寺田座長である可能性が極めて濃厚です。そう推測できる理由を列挙すると

・前述の党幹部方針との板挟み
・WT直後に本多議員との会話を秘密裏に録音しており(後の寺田意見書の材料)、この時点で本多氏を陥れる意図が見受けられること。
・メンバーに諮ることなく、捏造された発言が掲載されたWT中間報告書が全議員に寺田氏が一斉送信したこと。

④寺田座長は、党からの処分がないと確信していた?

産経新聞に捏造発言をリークをしたのが寺田座長であるというのは、本件について関心があるほとんどの人が、見解が一致するところだと思います。しかし、そうだとすると、また別の重大な疑問が浮かび上がってきます。

寺田座長が行ったことは、明らかに党の名誉を傷つける行為です。WTの議論を前に進めるためであれ、自分たちの仲間である議員に「ペドフィリア」というレッテルを貼り、世間一般に広く悪評を流布したわけです。

そのダメージは本多議員だけにとどまらず、立憲民主党の名誉を著しく毀損するものです。調査報告書によれば、「男尊女卑のリベラルおじさん政党」と言われたと記されています(p.7)。

寺田座長が発言を捏造しリークしたとするならば、その行為は明らかに立憲民主党規約第48条に違反します。

1.党員は、政治倫理に反する行為、党の名誉及び信頼を傷つける行為、ならびに本規約及び党の諸規則に違反する行為を行ってはならない。

そして、この違反に対して、党は処分を下す必要があると同2項で定められています。これは最悪の場合、辞職勧告にまで至る深刻な処分です。

しかし実際には、寺田氏に対しては、党からは一切のお咎めがありませんでした。

ここが不自然なのです。寺田座長は、なぜ「自分が処分されるはずがない」と知っていたかのように、このような危険なリークを行えたのでしょうか。

⑤福山幹事長が音声データの隠蔽に関与している

本多氏の件で特異なのは、元の発言内容とその文脈が現在に至るまで確定していないことです。この点について、元データとなる音声・録画データ、そして議事録が一切開示されていません。

元々、本件について、当初元データへのアクセスを拒否したのは寺田座長でした。中間報告書が全国会議員に一斉送信された6月3日、本多氏は寺田座長に対して「こうした発言をした記憶はない」「音声データを聞かせてほしい」「もし言ったとしたら本意が伝わらない表現なので撤回したい」旨を要求したが、拒否されたのでした。

断言しますが、外部講師も呼んでいる複雑なワーキングチームの議論で、録音データが存在しないことはありえないことです。これがなければ議事録を作成することも不可能ですし、いかなる報告書を書くことも不可能だからです。

そもそも、もし本当に音声データが存在しないのならば、何を根拠に調査報告書では発言を微修正し、こっそり「性交」という言葉を削除したのでしょうか?

さて、翌4日、発言が産経新聞から報道されました。その時のことを、本多氏は次のように発言しています。

もし本当にデータが存在しなければ、福山幹事長は「存在しない」と一貫して言っているはずです。

「有無が不明」「5月10日のものはない」「あるけれど聞かない方がいい」などというのは、実際にはあるけれど隠している場合でしかありえません。

録音データは必ず存在するはずです。そして、その録音データの隠蔽の主体は、明らかに福山幹事長です。

⑥福山幹事長が本多氏の記者会見を止め、「自白」を強く促した

しかし、なんのために福山氏は録音データを隠したのでしょうか?

その後の経緯を見てみましょう。報道されたような発言はしていないはず、記者会見で真意を説明したいと訴える本多氏を、福山幹事長は抑止し、「発言をそのまま認め、お詫び、撤回するコメントを出すこと」を提案したのでした。

本多氏自身も振り返るように、ここで福山氏の「提案」に乗っかってしまったのは、政治家としての脇の甘さだと私も思います。

しかし経緯を見る限り、福山幹事長が、本多氏に対して「虚偽自白」をさせることに成功したという側面は確実にあります。

その前提として、どうしても音声データへのアクセス拒否が必須となります。「直接的な証拠」を隠し、事実関係を曖昧化した上で、自白させるという戦術だったとみて差し支えないでしょう。

⑦調査報告書の致命的欠陥は党の責任

本多議員の謝罪コメント以後、本件は「ハラスメント防止対策委員会」(本noteでは「第三者委員会」と呼ぶ)で調査報告が行われることになりました。

この調査報告書が、様々な致命的な欠陥を抱えていることは、以下のnoteで指摘した通りです。(有り難いことに、立憲民主党内部の国会議員を含めて、かなり広く読まれているようです。)

列挙すると

・公表日が不明
・委員会のメンバーが非公表
・当該WT参加者が確定されていない
・事実と評価のレイヤーが分けられていない
・事実認定に重大な不備がある
・本多議員に対して、事実を挙げることなく、パワハラ・小児性愛者という印象操作を行っている

などです。このような杜撰な報告書を書いた責任は金子氏を筆頭とした第三者委員会にありますが、これを受理し、本多氏処分の根拠としようとした時点で、最終責任が党執行部にあることは明白です。

⑧福山幹事長による委員会への諮問自体の不公平性

この報告書について、不公平性という観点から再検討してみましょう。本報告書の冒頭部分を読み直してみます。

2021年6月9日立憲民主党福山幹事長から、下記内容での諮問を受け、立憲民主党ハラスメント防止対策委員会は、その諮問内容について以下のとおり報告を行う。

1 諮問の内容
立憲民主党政務調査会に設定された性犯罪刑法改正に関するワーキングチームにおいて、2021年5月10日に本多平直議員が行ったとされる発言を中心とした事案について
1 事実調査(本多平直議員本人を含む関係者へのヒアリング)
2 今後、このようなことが再発しないよう、性犯罪に関して認識を共有するためにどのようなことを党内で行うべきかについての意見具申について、諮問する。

この短い文章から、かなりのことを読み取ることができます。

a. 調査の対象は、本多議員のみ
b. 調査手法がヒアリングに限定されている。
c. 事実も確定しておらず、当人から異論があることを知りながら、「このようなこと」(本多発言)の再発防止を諮問している。
d. 本多議員の発言の原因が、性犯罪に関する認識共有がなされていないためと原因を指定している。

これらは調査報告の大前提であり、その諮問を行ったのは福山幹事長であることが明記されています。当初から幹事長は、本多議員の発言を「性差別」であると断定し、党内での再発防止策を実施する意図があったのです。

繰り返しますが、この諮問は、調査報告書によって「事実認定」がなされる以前の出来事です。そして本来ならば、発言の議事録・音声といった元データをあらゆる手法を使って探し出し、事実を再構成することが指示されなければならないずです。しかし、実際には逆に、調査手法が「ヒアリング」に限定されたのでした。

ここからも、録音データへのアクセスを拒否したのは福山幹事長であるという本多議員の主張が、間接的に裏付けられています。

⑨調査報告プロセスの不公平性

他にも不自然なことがあります。

調査報告書は、党内ワーキングチーム内の議論が漏洩した経路について、「どのように報道機関に情報が伝わり発表されたかは判然としない」の一文で済ませています。

繰り返しになりますが、本来ならば、発言の捏造リーク自体が、党の信頼と名誉を著しく毀損するものです。これが内部の議員によってなされたものならば、かなり強い処分対象となってしかるべきでしょう。ですが、この点について第三者委員会は、明らかに一切の調査を行っていないのです。

すなわち本報告書は、処分対象となりうる寺田・本多、2人の当事者のうち、明らかに一方だけを最初から狙い打ちしているのです。本多氏を狙い打つ不公平性は、調査以前の福山幹事長による諮問の仕方そのものにすでに表れていますが、それを調査報告書は踏襲しているのです。

もうひとつ、適正手続きという点で、この調査プロセスには大きな問題があります。そもそもこの調査報告自体が「騙し討ち」だったことが挙げられます。

本多氏の意見書より以下引用します。

また、本件委員会による調査は倫理規則第5条第3項に定める調査にその実体上も該当し得ないものと解されますところ、以下の点を貴会及び貴委員会において適正手続きの保障の観点より幹事長及び本件委員会にご確認を頂きたいと思います。
(1) 幹事長より本件委員会に対して「処分のための公正な調査」が明確に諮問されているのか。
(この点、本件報告書「1 諮問の内容」にはそのような記載はなく、「1 諮問内容」にある「1 事実調査」については6月18日に、本件委員会の金子雅臣委員長より「処分を前提にした検証ではない」旨の説明を受けております。また、私は、仮に処分を検討するのであれば党規に基づく調査を行うよう幹事長に対し文書で要請をしていました。)(p.2)(強調は引用者)

すなわち、この調査報告書によって本多氏の離党処分が後に諮られるわけですが、そもそも「処分を前提にした調査ではない」という説明を委員長から受けているのです。

本多氏が指摘する通り、本来は処分の発議があって、はじめて調査がなされるべきです。にも関わらず、その順序が逆転しており、適正手続きが行われたとは言いがたい状況です。(党幹部が「手続き論はもはやどうでも良い」と言ったという報道を思い出してください。)

なぜこのような騙し討ち的な手続きとなったのか。福山幹事長が、調査報告よりも前に「厳重注意」処分を行ったこととの整合性を取るためでしょう。おそらく福山幹事長が、「虚偽自白」の説得に成功したのは、「記者会見で釈明を行わず、発言を事実だと認めれば、これ以上の処分には処さないから」という甘言があったものと考えられます。

もう一度言いますが、このような甘言に乗ってしまったのは、本多氏の政治家としての落ち度というか、脇の甘さでしょう。とはいえ、本多氏の振る舞いに対して、このような形で本多氏を貶める組織の陰湿さは、個人的にはははるかに許容できるものではないことも付言しておきます。

⑩調査報告書は、明らかに本多氏の処分を正当化する目的で書かれた

金子委員長は、本多氏に「処分を前提にした調査ではない」と説明しました。しかし、いまや調査報告書を精査すれば、本多氏の処分を正当化することを目的として執筆されたことは明白です。

本多議員について報告書は「立法府の一員としての資質自体が大いに問われる」と評価している訳ですが、その結論に至るまでの論理は完全に破綻しています。

「複数外部講師への本多議員のパワハラ的な言動もインターネットなどで話題になっている」、ヒアリングでも「多くの人たちが本多議員の日頃の言動の問題点について触れている」と指摘し、「言われている一連の発言が厳密な意味でパワーハラスメントに該当するかどうかはさておき」、外部講師に対する威圧的な対応が問題であると書かれているのです。

ここには、調査報告書として最低限必要な事実の摘示が一切存在しないにも関わらず、議員としての資質に欠けているという結論が出されているのです。

同様の論理操作は、本多氏の「小児性愛者」的な「認知の歪み」を指摘した箇所にも表れています。本多氏に対して、誰かわからない小児性愛者というレッテル貼りに乗っかる形で、根拠なく「認知の歪みを本質的に修正したと言えない」「真摯な反省と、今後への決意を厳しく問う必要がある」と結論づけているのです。ここには一切の事実の摘示は存在しません。

事実認定を行わず、外部の匿名の批判を援用して本多議員に対して「議員不適格」「小児性愛者」と評価づけたのが、本報告書の基本的な(非)論理展開なのです。このような致命的に破綻したロジックを調査報告書に書けるのは、最初から結論が決まっているからだと断定して差し支えありません。

⑪立憲民主党はマスコミに対して発言の訂正を行っていない

本多氏が主張するように、最初に産経新聞から報道された「50歳の私が14歳と性交して捕まるのはおかしい」という発言は捏造に近いものがあると考えられます。それは本多議員の証言だけではなく、もう一方の当事者である島岡教授の発言からも、調査報告書からも「性交」という単語が消えていることからも汲み取れます。

しかし、もう一方で「性交」発言は、調査報告書以後の各報道でも使われ続けました。たとえば朝日新聞は、「立憲・本多平直議員が辞職表明 性交同意めぐる発言で」という記事において、次のように書いています。

未成年と同意のもと性行為をして逮捕されるのはおかしいなどと発言した、立憲民主党の本多平直衆院議員(56)=比例北海道ブロック=は27日、国会内で記者会見を開き、衆院議員を辞職することを明らかにした。立憲に離党届を提出し、受理された。

本多議員が「性交」という言葉を使ったことを否定した当の記者会見についての記事でさえ、このような事実誤認報道が続いているのです。

そのため、政治についてマスメディアを通じてのみ間接的に知る多くの人たちは、本多議員の問題について、バイアスがかかった情報に晒されている状況だと考えられます。

なぜこのような状況が続いているのでしょうか。

立憲民主党が当初の誤った情報に対して、公式に謝罪・訂正を求めていないことが原因です。この状況は、録音や議事録など元データを隠蔽することによって可能となっています。

もし仮に、立憲民主党が録音データと議事録を公開し、元の報道を発言を訂正したとします。そうすれば、最初の報道との違いがはっきりわかりますし、マスメディアに対して訂正を求める必要が生じます。その時に、本多氏に対する党の対応は、その正当性を失うことは明白です。

立憲民主党として、誤った報道を放置しているのは、意図的なものであると断じざるを得ません。

総括:本多議員を貶めたのは誰か?

ここまで本多議員のパージに、どれほど党中枢が主体的に関与してきたのか詳細に検討してきました。

あらためて、まとめて考察しましょう。

調査報告書は、党幹部の命令によって、本多氏の処分を正当化する目的で作成されたものであることは、まず疑いがありません。もちろん、諮問したのが福山幹事長であることは自明ですが、そういうことではなく、本来は独立して評価される結論が、党の方針として予め定められていたということです。

なぜそう断言できるのか。逆の仮定を置いてみれば、それがどれほどありえないことかわかります。仮に委員会が、完全に党から独立した存在であったとします。単に委員会がその能力の低さによって、破綻した文書を作成するだけでは、あの文書は公開されることはありません。まともな組織なら、日付すら不完全な文書を受理・公表するということ自体、あり得ないことなだからです。

実際、同じ金子雅臣氏が委員長となって作成された「デイズジャパン検証委員会報告書」※直ダウンロード注意 と、今回の調査報告書をぜひ比較してください。この2つを虚心坦懐に見て、同じ人間が作成したと思う人は、まずいないはずです。金子委員長は、「まともな調査報告書」とはどのようなものかを、明らかに理解している人間なのです。

独立した委員会がたまたま致命的に破綻した調査報告書を出し、その欠陥に野党第一党が気がつかずに公表する。これはちょっと考えられません。そうではなく、そもそも調査報告書は本多氏処分のための「根拠」として、一部の党幹部の命令によって作成されたと考えれば、すべての辻褄が合います

事実認定を行わず外部の匿名の批判を援用して本多議員に対して「議員不適格」「小児性愛者」と評価づけたのが、基本的な(そして破綻した)論理構造でした。これは委員会の意志というより、諮問した人物の意志の表れです。本多氏処分という結論が決められており、その大義名分を創るという目的が与えられたからこそ、調査委員会は破綻した論理や印象操作を用いざるを得なかったのです。

そう考えれば、調査報告書についての全ての謎、すなわち致命的な欠陥がある文書が、作成され、ろくに校正もされないまま公開されたこと、それを元に本多氏処分が稟議にかけられたこと、調査委員会のメンバーが非公開であること、5月10日も含めて全ての元データが公開されていないこと、すべての説明が付きます。


では福山幹事長ら立憲民主党中枢は、いったいどの時点から本多氏の件に関与しているのでしょうか?

確実に言えることは、6月の匿名報道直後から、正しい情報をマスメディアに伝えないように、福山幹事長が一貫して動いていたということです。本多議員の意見書によれば、録音データへのアクセスを拒否し、記者会見を止めて虚偽を事実であると認めさせたのは福山です。この姿勢は、その後も一貫して変わっておらず、福山幹事長からも枝野代表からも一切の説明はなく、データは非公開のままとなっています。

では、報道のリークに、党中枢が関与していた可能性はどの程度あるのでしょうか?本当に、一部で言われているように、寺田座長のスタンドプレーなのでしょうか?

私は、リークそのものにも党中枢の一部が関与していた可能性が高いと考えています。その理由は2つあります。第一に、党の名声を大いに傷つける情報操作を行った寺田氏が、一切何の処分も受けていないこと。第二に、調査報告書において、情報漏洩ルートは一切何の調査もされた形跡がないこと。

これらのことから、本多氏発言の捏造・漏洩については、党中枢の一部からは黙認があった可能性が高いと、私は判断します。

立憲民主党はもはや存在しない

なぜ立憲民主党は、本多議員のパージに動いたのでしょうか。この点については、また別の記事を書く必要があるかもしれません。

ただ一つ言えることは、性交同意年齢引き上げは党の既定方針であり、ワーキングチームはそれを裏書きすることだけを求められていたということです。そのトップダウン式の意思決定過程において、国民のために真摯に立法議論を行う本多議員が邪魔だったことは確かでしょう。

議論したフリなり、杜撰なペーパーなりに沿って党方針を決定したフリをするというこのパターンが、立憲民主党では顕著に見られるようになっています。本多氏の調査報告書がその一つです。もう一つの実例が、アベノミクス検証委員会です。

枝野代表が「自民党が逃げ腰なので、わが党でしっかりと検証を行う」と言って9月14日に立ち上げられたアベノミクス検証委員会は、1週間後の21日に報告書(※直ダウンロードリンク注意)を出しました。その報告書がどのようなものか、ぜひみなさん、目を通してください。なにしろたったA4二枚なので、あっという間に読めます。

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アベノミクスの検証をするなとは、私は言いません。大いにやればいいでしょう。でも、さすがにこの内容は酷すぎます。大学生がこんなレポートを提出したら落第ですし、中学生でもこれぐらいは書けます。せめて自民党に反対する活動ぐらい、真面目に遂行できないものでしょうか。

ともあれ、私たちはここから、現在の立憲民主党の組織体質が読み取れます。すなわち、党中枢が先に結論を決めており、それを裏打ちするために「議論した」「有識者が検討した」というアリバイ作りを、組織の下部に強いているのです。

これは先月下旬に枝野代表が言った、「党内の選挙で政策を競い合っていること自体が、政党として成り立ってない」という発言とぴったり符号します。

党中枢が政策を決め、下部組織や議員はただの駒である、そして都合が悪くなったら悪評を意図的に流してパージする、そのような独裁政党に成り下がってしまったのです。

ここにはもはや、立憲主義も民主主義も存在しません。

私たちが「枝野立て」と後押ししてボトムアップで創ったあの立憲民主党は、もはや存在しないのです。

今の「立憲民主党」は、党代表の元側近に対してさえ、ここまで陰湿かつ粗悪な謀略を使って陥れる政党に成り下がっています。次期選挙でどれほど耳障りの良い政策を出していたとしても、有権者との約束を守るほどの誠実さがあるのか、そこは支持者の皆さんによくよく考えていただきたいと思います。

次号予告と、心からの願い

長い記事を読んでいただいてありがとうございました。

実は、この記事ではまだ書けなかったことがあります。

1つは、立憲民主党のうち、中枢にいる一部の幹部が本多平直氏をパージすることによって、いったい何をしたかったのかということ。

もう一つは、なぜ党の処分にあれだけ抵抗していた本多氏が、とつぜん離党届けを出したのか、という問題です。

前者について書くかどうかは、折を見て判断したいと思います。

後者については、私自身で寺田氏の意見書などを検討した結果、離党は本多氏自身の意志であるという結論にいたっています。この点については、改めて別に記事を書きたいと考えています。

いま私が言えることは、この決断ができる本多平直氏に対して、私は心の底から自然と敬意を感じたということです。そして、それは政治家として最も重要な美質であり、だからこそいつか私は本多氏に、必ず国政の場にかえってきてほしいということです。


最後に。なぜ衆院選の間際になって、ここまで執拗に立憲民主党を批判するのかという批判もあると思います。ただ、このnoteは、何よりも党内の議員たちを宛先として書いています。

立憲民主党の中には、すぐれた資質・能力をもった議員たちがたくさんいることを知っています。彼ら彼女らが、独裁的な党中枢とともに沈んでいくのは社会にとっても大きな損失ですし、個人的にも耐えがたいことです。

本多氏の件に関して、党内でどのような動きが起こっているのか、党の大幹部でさえもわからないという話も伝わってきています。私がこの総括記事を書いたのは、彼らに1つの地図を提供することが目的です。

この航海図が、立憲民主党再生に役立てれば幸いです。そして、再生した立憲民主党の中核を担う1人は、本多平直氏であるべきだろうと私は思うのです。

私の一連の記事と、そしてこれから書く記事が、本多平直氏の名誉回復に繋がることを、心より願っています。


あと、立憲民主党からの反論は大歓迎です。党として公式に説明を行なってください。それと同時に、5月10日WTの録音データや議事録!第三者委員会メンバーを含め、すべての関連データ・情報を開示することを強く要請します。

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