都知事選二人出馬は、民主主義のゲームチェンジャーとなりうるか 中編 ―政治離れと選民主義のデッドロック―

前編のおさらい

前編の要点を簡単におさらいします。

●日本では有権者が政治家を信用していない、だからこそ、逆説的に選挙が人気投票になってしまっている。

●前回都知事選では、実現不可能な政策をわざと出した小池百合子と同じぐらい、まともな政策を出せないのに立候補/推薦した鳥越陣営の不誠実さが際立った。

●宇都宮けんじも山本太郎も、最も弱き人に手を差し伸べる、という姿勢では共通している。だから、「人気投票」ゲームをチェンジできる可能性はある。

というようなことを書きました。みんな読んでね☆

民主主義というゲーム

ところでみなさん、いきなりですがここで問題です。

ゲームで必ず勝つ方法ってご存じですか?

どんなゲームでも良いです。将棋や囲碁のようなボードゲームでも良いですし、サバゲーでも良いです。

答えは簡単。自分に有利なようにルールを設定する、ってことです。

たとえば、将棋で負けそうになったら、「王手をかけたら負け!」ってルールに途中で変えちゃえばいいんです(笑)。

え、そんな答えアリなの?って言われるかもしれません。でも現実世界では、強い人間が勝手にルールを決める権限を持っています。だから、権力者は世襲され、格差はどんどん進行するわけです。

それが、なんでも閣議決定で変更する安倍晋三の強さの秘訣だったりするわけです(笑)。

でも本来、「民主主義」という制度は、「強いものはより強く」という不公正を匡す仕組みを持っています。なぜなら、権力者より弱者のほうが数が多いのですから。

だから権力者は、民主主義ができるだけ機能しないようにあの手この手を尽くし、民主主義というゲームを別のゲームに変えようとしてきたのです。たとえば、小選挙区制だったり、「選挙カーによる連呼」だったり、マスメディアによるタレント扱いだったり。

そうやって、一方では有権者の声が届かないシステムを作り上げて政治不信をあおり、もう一方では特定の政治家の人気を煽ることで、選挙制度を民主主義とはまったく別の何者かに作り替えてきた。これが、現在の「人気投票」選挙の実態だと考えると、いろいろと見えてくるものがあります。

民主主義ゲームを元に戻そう

では小池百合子に対して、山本太郎および宇都宮けんじが圧倒的に優れている点はどこにあるのでしょうか?

ちょっと並べてみましょう。

●有権者への誠実さ
●弱者へのまなざし
●政策
●対話・討論能力

各項目、山本氏と宇都宮氏の間でどっちが優れているか、かなり優劣つけがたいし悩ましいところですね。でも、少なくとも小池百合子と比較すれば、二人とも20馬身ぐらい付けて圧勝していることは明らかではないでしょうか。

ということは、これらの要素によって勝てるゲームへと選挙戦をチェンジすることが、二人のどちらかが勝つための最低条件ということになります。

でも、このゲームチェンジって、すっごいまともなものだと言えます。どの項目も民主主義において不可欠な要素、政治家として最も重要な資質です。つまり、「まともな民主主義選挙」へとゲームを戻しさえすればいい、ということです。

民主主義を阻害する「心理的ブロック」について

でも、まがりなりにも、都知事選はもともと民主主義選挙のはずです。なのに、なぜまともな政治家が勝てないのでしょうか。それが最も本質的な問題です。

まず、一つだけ言えることがあります。「有権者はバカ」という話で片づけることだけは、今すぐにやめてください。支持者が一般有権者をバカにする態度を取ることで、候補者の票が増えることはありません。

民主主義の実現を阻んでいるのは、マスメディアでも有権者のリテラシーでもない。その本質を一言で言えば政治不信なのです。有権者の大部分は、政治家というのは基本的に市民を騙すものだと思っている。だから、候補者が正しいことを訴えようとすればするほど、逆に耳を閉ざしてしまうのです。

多くの一般有権者の中にある、この「心理的ブロック」の存在に、私は街頭で気がつきました。ごくたまに「ぼっちスタンディング」っていうのをやるんです。広く一般市民に訴えかけたい問題についてプラカードを作り、一人で人通りが多い街角に立つだけの、誰でもできる簡単な運動です。

いきなりですが、皆さんにここで質問です。どちらが注目されると思いますか?

1 声を出してアピールする
2 何も言わず黙ってプラカードを掲げる

これ、市民運動系の人は、当たり前のように1を選択します。

でも、現実に効果があるのは2です。それぞれ結果はこんな感じでした。

1 こちらを決して見ないようにしながらすべての人が通り過ぎる。
2 3人に1人ぐらいの確率で、プラカードを凝視する。慌ててスマホ取り出して検索したりする人も多数表われる。

まさかと思われる方は、住まれている街の最も人通りが多い場所で、ご自身で試してみてください。

もちろん、どれぐらい注目されるかは、問題の内容とプラカードの作り方などに依拠します。でも、とにかく「声を出してアピールすると逆にスルーされる」という鉄則だけは、如実に理解できると思います。

この経験は、私自身にとっても衝撃的でした。で、考えました。そして、多くの人は決して政治的に無関心なワケではなくて、押しつけられる感じに対して心理的バリアーを張っているだけだ、と気がついたのです。そして、それを「声を出してアピールする」タイプの大部分の市民運動の人は、「政治的関心がない」と勘違いしてしまっている。

そうじゃない。多くの人は、少なくとも自分に直接関わりがある政治的問題については、押しつけがましくないスタイルできっかけを与えられれば、あとは自分で調べるのです。

「ぼっちスタンディング」については、二人一組で動くときのやり方など、他にもいろんな効果的なテクニックを編み出したので、また別のタイミングで記事にしていきます。

野党が勝てない本当の理由

ともあれ、いわゆる左派・リベラル系野党の場合、候補者自身というよりも支持者が選民主義的な言動をしてしまっていることが非常に多いです。「正しさ」を押し付け、「正しさを理解しない人間は愚かだ」という態度を取っています。

それは現場を見てきた若い人なら、みんな実感していると思います。

その端的な証拠が、よく言われる「投票率が上がれば野党は勝てる」という考えです。この考えがどうして間違っているのかについては、以前にブログに書いたことがあります。

「投票率が上がれば野党は勝つ」という言葉の対偶を取れば、「野党が勝てないのは、投票率が上がらないからだ」という話になります。ここには、「愚かな民衆が政治に関心がないせいで、安倍政権が続いてしまっている」という潜在意識が表れています。

でも、それは因果関係として全く逆です。投票したい候補者がいるから投票率が上がり、結果として野党が勝つのです。そして、「関心がない相手を責めるほど、相手が政治から離れていく」という悪循環が生まれます。

それがリベラル野党が支持を集められない、非常に大きな、おそらく最も大きな障害です。

訴えようとする候補者と、耳を閉ざそうとする有権者のデッドロック

なぜ野党が勝てないのか、ここでもう一度、状況を整理しましょう。

●過去の経緯など複合的な要因(たとえば前回都知事選の鳥越陣営の振る舞い)によって、有権者にはすでに政治家不信が根付いてしまっている。

●そのため一方では投票率が下がり、他方では選挙がただの「人気投票」に堕している。

●その状況では候補者がどれだけ自分の誠実さや政策を訴えても、有権者は耳を閉ざしてしまう

●それを見た野党支持者が、「正しさ」を理解しようとしない有権者を批判する。

●上の態度によって、一般有権者が嫌気がさし、ますます政治離れが加速する。

この最後の3つは、互いにドン詰まっている、いわゆる「デッドロック状態」です。相手に訴えを聞いてもらおうとして、相手の耳をこじ開けようとすればするほど、相手は固く耳を閉ざしてしまう

私たちが勝つためには、訴えようとする政治家・支持者と、耳を閉ざそうとする有権者の、このデッドロックを解除する必要があるのです。

そのデッドロックを解除するためにはどうすれば良いのか。

後編では、いよいよ都知事選でのゲームチェンジ手法について具体的に話します。

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社会問題研究家。 専門は、社会哲学・社会システム論(経済含む)・データ分析・カルト研究。 著書に「リベラルの育て方」https://amzn.to/357sDCG 「人権の経済システムへ」https://amzn.to/3bHUGev TwitterID:@ishtarist

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