見出し画像

石積みがなぜ崩れるのか 背後の地形

至る所の石積みが崩れている。田舎の道を走っていると、山の方の畑の石積みが崩れていたり、道沿いの石積みが孕んでいたりする。熊本地震では柑橘畑で石積みが数千箇所崩れたというし、西日本の豪雨災害では、愛媛県の西武沿岸の斜面や石積みがたくさん崩れた。災害後の応急処置として土囊袋を積むところも多いが、いずれ破れるので石積みがよい。どうやって下に転がった石を運ぶのかという問題はあるが。
石積みは色々な要因が重なり、崩れることが多いようだ。石の積み方が悪かったり、形の悪い石ばかりを使っていたり、グリ石が詰まっていなかったり、石積みの下にコンクリートの水路を作って水はけが悪くなったり。
今回は、石積み背後の地形について考えてみたい。石積みが崩れる直接的で最も影響力のある要因は、石積みの背後にある土が積み石を押し出すことだ。そして土は雨が降ることによって押し出される。つまり石の積み方が悪いと崩れやすくなるが、そもそもの地質や地形が崩れやすい場合がある。

・間隙水圧の高まり

土は雨が降っていないときは土と土の間に隙間がある。この状態のときは下に滑り落ちようとする力に対して抵抗する力が働きやすく、崩れることはない。ところが雨が降ると土の隙間全てが水で埋まり、抵抗する力が弱まり、上から水が流れると下から水がすぐに排水される状態になる。この状態になると斜面が滑って崩れ、石積みを背後から押し出して崩れる。

・流れ盤と受け盤

画像1

石積みが押し出されて崩れる石積みの後ろは流れ盤という地形になっていることがある。流れ盤とは地層が山肌の傾斜と同じ方向に堆積している状態だ。流れ盤の硬い土や岩の層の上に柔らかい土が乗っていると、雨水が柔らかい土の中に浸透して斜面が滑って崩れ、その上に乗っている石積みも崩す。修復するときは、大きめのハンマーで後ろの岩(岩盤)を割って、グリ石をきっちり入れる。土が入っていなければ石を押し出す力が働かないので、崩れにくくなる。もしくは、岩盤をそのまま残して長い石でブリッジする。

徳島県上勝町で修復した石積みは、地層までいかないが、山肌の方向にある岩盤が後ろにあった。これは割って石を積むのがよかったのだが、そのまま岩盤を残して横の部分だけ積んでしまった。後悔している。

画像2

画像3

岩盤をブリッジした石積み@ドモドッソラinイタリア

画像4


ちなみに流れ盤とは逆に、傾斜地と反対方向に地層が堆積している状態を受け盤という。斜面に地層が刺さっているような状態だ。この地層は傾斜が急だが雨が降っても土が流れにくい。
ちなみに川を挟んで流れ盤と受け盤が向かい合っているところも多い。徳島県のつるぎ町に川を挟んで流れ盤と受け盤になっている場所がある。下の写真の手前が受け盤で奥が流れ盤だ。

画像5

傾斜の緩やかな流れ盤の地形をカゲジ、傾斜の急な受け盤をヒノジという。カゲジは日当たりが悪く、ヒノジは日当たりがよいのでそのような名前になったのだと思う。なぜ川の対岸で畑の斜面の角度が違うのか不思議に思っていたが、地質で違いが出ていたようだ。ちなみに、手前の畑の傾斜は40度ほどあり、土が15〜20cmしかないため、石を掘り起こして日光に当て、土にするという作業がある。どこを掘っても石混じりの土なので、麦などの穀物や芋の栽培が適している。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?