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石積みキャラバン6 福岡県うきは市

北九州市の平尾台に行った後、朝倉市を通り、うきは市のつづら棚田に向かった。うきは市の役所の方が以前学会で声をかけてくださり、石積み学校を開催したことをきっかけに関係が続いている。つづら棚田は平成24年の豪雨で水路が崩れ、高いところに建っている建物も浸水した。イビサスモークレストランさんというかなり上流の脇に建っているとても美味しいレストランがあるのだけれど、そこも浸水した。茅葺きの古民家も浸水し、改修したそうだ。災害が起こると石積みの構造物は姿を大きく変える。災害復旧で国の補助金を使う場合、なるべく早く、国の一律の基準に則って施工することになるので、過剰な設計や、これは、、というものができあがる。地場の素材を使うことが利点の一つである石積みだが、豪雨で石が川の下に流れると他の地域から石を持ってくることになる。そして重機を使って施工するなら大きめの石を使うほうが効率がよい。そうすると石のスケールが違う、とか目地にコンクリートが見えて不自然になる、とか、石が噛み合っていない、とか境界がはっきりしすぎる、というような見た目の違和感がまず生まれる。しかしこの石積みはどうなのか、という話は見た目だけで議論するのは難しい。応急処置と今後のことを同時に考えて最もバランスの良い選択肢を考えないといけない。石積み技術の面白いところは、技術レベルが様々であるということだ。農家の人が積む石積みとお城の石垣は基本的な構造は同じだが、重視している点が違う。農家はできるだけ早く効率的にどのような形の石も積めることを重視する。お城は構造的な強度に加えて見た目の美しさや権威を示すこと、敵がよじ登れないように隙間をつくらないようにすることを重視する。また、コンクリートを使う練石積みにするにしても、どのくらいコンクリートを入れるかは擁壁が必要とする機能によっても入れ方が異なる。そうするとまずは石積みの技術が様々な種類があるということと、それをどのように使い分けるかということを考える必要がでてくる。その上で技術を持った職人さんを育てるとか、そのためにはどのように石積みをする機会をつくるかということを考えないといけない。災害復旧のために応急処置的に石積みの擁壁をつくるといかに技術や知識が蓄積されているか、いないかがあらわになる。

朝倉川の災害現場の横を通ったが、想像以上にひどかった。河川は改修するかもしれないが、改修しない私有地がたくさん出るのだろうと思う。そもそもそこに生活する価値がないと石積みや擁壁を直す理由が生まれない。

つづら棚田の修復した石積みは高さ1.3mで幅4.5m。以前積み直したところの続きの部分。石が足りないので追加してもらったけども、丸石なので元々ある石とは違う。平成24年の豪雨災害の復旧工事でたくさんの石を使ってしまったので日田市など近隣の市町村から石を買うようになったらしい。などという話を石工と農業を兼業されている方からお聞きした。色々伺っていると、その石工さんも工事現場で一緒になった他の石屋さんのテゴ(お手伝い)をして石積みの技術を習得されたらしい。他の地域の石工さんもそうだったけど、伝統として石積みの技術を習得した人はいなかった。兼業しながら、土木の現場に行って他の人から学んで自分の地域に技術を持って帰る。技術は流動的で家の近くに発揮するところがあるから使われていたのだと思った。

2人で石を積んでいるとアウトドアのイベントの参加者の方がおもしろそうだというので飛び入りで手伝ってくださった。こういうワイワイできるところも石積みのいいところだ。

おしゃべりしながら石を積み終えた。

うきは市は山あり田んぼ畑あり果樹栽培が盛ん古民家あり伝建地区あり一通りの便利な店あり美味しいスイーツ店(ル・シュクルさん)あり美味しいもつ鍋屋さんあり美味しいコーヒー屋さんあり素敵な本屋さんあり温泉あり博多から1時間というアクセスというとても良くて恵まれたところだった。また行きたい。そういえば前はお城の修復を手がけている会社の方も来られていた。九州は石の構造物がたくさんあるので石積みの技術を学びたい方がたくさんおられると思う。

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