World Haptics 2019のSICの記録
今回は樋口さんが企画した学会アドベントカレンダーなるものがあるということで,色々思案した結果過去に書こうとした記事をアドベントカレンダー用にリファインして投稿することにしました.
自己紹介をしますと,私は大阪大学大学院基礎工学研究科の助教の石塚裕己と言います.研究分野はHapticsとかロボティクスで,最近はセンシングとかにも興味が出てきました.
ここ数年学会関連の仕事を引き受けることが多いのですが,学会関連の仕事ってタイムスケジュールが不明だったりするので,いちいち考えて作業しないといけません.
流れ作業でできそうなことってマニュアルにしておいた方がずっと楽だと思うんですよね.考える必要がないところは考えずに,考えた方がいいところは考えるのがベターかと思います.
ということで,今回は多分日本語で,スケジュールが公開されていないであろうイベントのStudent Innovation Challenge(SIC)のスケジュールについての記録を公開したいと思います.
日本で国際学会が開催されることはあっても,SICが開催される可能性は極めて低いのです.
そもそも,SICというのは何かというとある機材が提供されて,その機材を使ってデモを作って学生同士でコンペをするというセッションになります.論文が出るわけでもないので基本的には学会内ではそんなにプライオリティが高いセッションではないです.その割に,メールベース以外の作業が多く,手間がかかりました.
SICチェアを引き受けた日本人という天文的な確率の人に向けてWorld Haptics 2019のSICの記録を残します.これを見てスケジュール感を把握してもらえればいいかと思います.
2018.3
予算が余ったので,大学院に進学する学生とサンフランシスコで開催されたHaptics Symposiumに参加しました.ちなみに,ゴールデンゲートブリッジとかウォルトディズニーミュージアムはとても楽しかったです.
会場でよくわからないままWorld Hapticsのミーティングに連れていかれました.そこで,ある先生の鶴の一声でSICのチェアにされてしまったと記憶しています.
なんのことかさっぱりわからなかったんですが,一緒にやることになったのが慶應義塾大学の仲谷先生でした.ちなみに,それはそれでとても良かった.
2018.5
特に上からの指示は無かったので,自分たちでSICのテーマ設定や協力してくれそうなスポンサーを探す作業をしていました.ちなみに,途中からもう一つSICが追加されたのですが,それは企業スポンサーの意向があるので事前にテーマが決まっていました.
センサを作っている会社やアクチュエータを作っている会社を当たろうというアイディアがあったのですが,機材の輸出の関連でNGという会社もいくつかあり,そのあたりの情報も含めて候補をいくつかに絞りました.
2018.6-7
ピサで開催されたEurohaptics2018でのミーティングでexiiiとHTCへ協力を依頼することになりました.帰国後,コンタクトを取って直接打ち合わせを行いました.電子機器を送るのは実はとても大変なので,楽をしたければ機材は使わないほうがいいのかもしれません.
ちなみにピサの斜塔は案外小さかったです.
2018.9-10
この時期にVR学会とAsiaHapticsがあったので,会場で告知をしました.それと投稿の案内とWebサイトの作成を行いました.Webサイトのほうは過去のサイトを参考にして,体裁を整えて作ったと記憶しています.
2018.12
プロポーザルの評価の依頼を数人の著名な研究者に依頼しました.その結果がこれ.2/3くらいの打率でした.
また,海外へのコミュニティに告知をするように,出版担当者に依頼しました.
大阪で開催されたSICE SIで報告した記憶がありますが,何を言ったか特に覚えていません.
もう一人くらいチェアがいると楽という理由で,神戸大学の永野先生にもSIの会場で協力を依頼しました.
2019.1-2
締め切り後,プロポーザルの評価項目を作って評価者で採点しました.集計後,評価者に確認を取って最終的に10件中5件が採択されました.ちなみに,チェア側では必ずコメントを付けることとして,投稿のお礼としてフィードバックを返せるようにしました.
採択者には即座に機材の送り先を送ってもらい機材発送の手続きを行いました.今回,HTC viveとEXOSを輸出することになったのですが,なんらかの制約を議論した記憶があります.その結果,韓国とブラジルがEMSでイタリアとドイツがfedexでの輸送になりました.
この辺りは機材によって色々と制約がかかるので,早めに確認することをお勧めします.関税の話とか,初めての人にはよくわからないかと思います.
2019.3-4
機材の到着の連絡を待つのと,到着後各チームのキックオフミーティングをしました.この頃ちょうど現所属に移りました.ちなみに,関税は受け取る側が支払う必要がある場合があったはずなので,関税の領収書を保存するように依頼しました.
2019.5
ここで早いようですが中間評価という名前の進捗確認をしました.それとVISAが必要な参加者の対応も行いました.
2019.6
あまり記憶が無いのですが,この時期にプログラム用のシートを作っていたようです.あとは,二転三転あって,表彰関連の作業をどうするかという話がコロコロと変わりました.
色々と二転三転することはしょうがないのです...
2019.7
各チームには日本に来る前に
・領収書を持ってくること
・貸し出した機材を備品含めて全部持ってくること
・発表前にテザーがあるので,動画を事前に用意すること
と指示を出しました.
また,プロポーザルの評価者への当日審査の依頼とスコアシートの項目作成,スポンサーへの予備機材貸し出しの依頼と動画の共有を行いました.
会期中
各チームのセットアップの手伝い,関税の立替払いの返済や観客の評価用のシートの作成を行いました.
観客の評価は各チームによって対応が異なるので(あるチームは貼ってくれというし,別なチームは気にしないとか),どう評価すればいいのかというのは難しいなぁと思いました.
あとは必ず機材トラブルや備品の不足(特にACタップ)があるので,このあたりも可能な限りチェア側で用意しておく必要があるかと思います.今回困ったのがHTC viveのトラッカーを固定するためのポールが無いという話でした.会場近くの秋葉原で在庫を学会の経費で買えたので良かったのですが...
セッション後は,採点して,結果を評価者全員で確認して,表彰して終わりという感じでした.
ちなみに,機材を回収し損ねると帰国後に再度送ってもらう必要があり,手間が発生するので,回収するものリストを事前に用意しておくのがベターです.
とこんな感じの流れで作業をしたのですが,文面に起こすとそんなに大変ではなかったように見えます.
実際は,関税の作業が大変だったり,参加者からメールが来なかったり,機材が中々届かなかったりと困ったことがたくさんありました.
処理が難しそうな箇所については仲谷先生が適宜対応してくれて,簡単なところは私が対応,ミスったら永野先生と仲谷先生がフォローという形で作業を進めました.
自分の能力の至らなさはいつも色々な面で痛感することがあるのですが,今回は永野先生と仲谷先生に色々とサポートしてもらって勉強したという感じでした.
次に何か学会の仕事があたって,自分の下に若手が付いたら私もメンタリングできるようにならねば...
最後に,こういう仕事がどの程度大変かというのは,どれくらいセッションにコミットするかによるかと思います.
今回はできるだけ楽しいセッションにしたいということで,色々とセッティングを頑張りましたが,手を抜こうと思えばいくらでも抜けるかと思います.
ここに書いてあることでめんどくさそうなことを全文簡素化してやればいいのです.(e.g. 送るのは小包レベルにする,メンタリングはしない,設営も学生に全て任せる,etc)
逆にもっといいセッションにしたいと思えば,これを参考に付帯すべき事項を考えて頂ければ幸いです.
学会運営業務は,仕事の方法を学べるとか良い人と知り合えるとか良い側面もあるので受けてみるのも悪くないのでは?と書いて終わりたいと思います.
メリクリ