こども園での絵の具あそび
初めまして。イシザワと申します!
山形県を拠点に、美術館や地域のさまざまな場所でアートワークショップの企画を行い、子どもも大人も交流できるような場づくりを行っています。
数年前からは、保育の現場で「造形の先生」として、こどもたちと「本気であそぶ・まなぶ」機会をいただくようになりました。今回は、そんな様子をご報告します。
*写真は、園の先生方、保護者のみなさまの許可を得て掲載しています。
2021年、山形はお盆以降とても涼しい日が続いていました。8月26日は、久しぶりの夏の太陽が顔をのぞかせてくれた日でした。この日は、ご縁をいただき、天童市のキンダー水木こども園さんで造形活動を行いました。事前に先生方と子どもたちに体験してほしいことについて話し合い、8月の活動は絵の具を使ってダイナミックに遊ぶ、色の混ざりを楽しむことに決まりました!
園庭では、先生方が準備万端で絵の具や会場づくりを行ってくださいました。この準備の時間というのはとてもワクワクします。普段の何倍もの量の絵の具を溶いているときは、まるで怪しい博士、魔法使いになるような気分になります。
今回は、布に絵の具を乗せていきます。保護者の方たちにご協力いただき、ご家庭からシーツを提供していただきました!(最近は、ベットが多いので布団用のシーツを使わない場合もあるそうです。)洗濯物を干すかのように、園庭にずらっとシーツを並べます。
シーツを干している支えですが、流木で作った自作の物で先生方に大好評でした。こうしたちょっとした変化があると、環境全体の見え方が変わりますね。
今回の造形活動では、0〜5歳の、全ての年齢の子どもたちに参加してもらいたいと考えていました。その中で、特に印象的だったエピソードを1つピックアップしたいと思います。
準備の様子にいち早く興味を持ってくれたのは、0歳さんたちでした。初めて出会う人(石沢)にも興味津々に近づいてくれる子がいたため、他の子どもたちも新しい人やものへの関心が高いようです。
準備中にこちらにも近寄ってきてくれたので、私は絵の具遊びで使うハケを「さっさっさ〜」と動かしてみました。すると、すぐさま何人かの子が、私や先生の動きを真似しながらハケを動かしていました。
中には、1本1本ハケに触れて、毛質の違いを確かめている子もいます。大きなハケは0歳さんたちにとってはじめて出会う道具です。持ち手が太いので掴みやすいことも親しみやすかったのかなと思います。
この姿を見て、先生方も私も「すごい!」と「これは発見だね」と心動かされました。
私が「すごい」と思った気持ちの根底には、『0歳さんは、筆で描くことや絵の具遊びは難しいかもしれない』と思い込んでいたところがあったのだと思います。しかし、子どもたちはそんな大人の思い込みを軽やかに超えていきます。日常のふとしたやり取りの中で、子どもたちから学ぶ、気付かされることが多いことを実感します。その後の時間に、他のクラスのお友達が絵の具遊びで使用したスポンジを使って、布に色をつけることを楽しんでいたそうです。
先生方との振り返りの時間で、0歳クラスの担任の先生が、「子どもたちが『さわる、動かす、楽しーーー』」という動きと、身体の動きと心の動きがあったとコメントしてくれました。新しい道具や材料に触れて、子どもたちの動きが広がり、その姿を見た先生方が驚いたり・喜ぶ気持ちが子どもたちに伝わる。そして、子ども自身の喜びや楽しさにつながっていく。
造形活動が、子どもたちの新しい体験のきっかけとなり、先生方の発見を引き出す機会になってほしいなと改めて感じました。
4、5歳さんの絵の具遊びの様子。初めは遠慮して端っこから丁寧に色を載せていましたが、どんどん大胆になっていきます。
体重をかけて倒れるようにして手形と足形をつけるも。
自分の体に塗るのは、やはり気持ちがいいです。
道具も筆、ハケ、スプレー、スポンジと特徴の違うものを準備しました。子どもたちが自分の使いたい好ものを選びとることの大切さ、また、1人でも、少人数でも遊べる、というように遊び方を工夫できることも大切だと考えています。
2、3歳さんのクラスの様子。飛び道具のスプレーが大人気でした。
また、「布の両側から描きあう」という遊びのブームになりました。両側から描き合うことで、布の向こうから色が滲んで浮かび上がってくることを発見!不思議な現象に子どもたちは夢中です。
色を混ぜ合わせることそのものを楽しんでいる子どももたくさんいました。同じトレイの中でも、ハケを動かすたびに複数の色味が見え隠れするのが不思議だったのでしょう。
みんなの遊びの様子を見にきた1歳さん。道具にしていた石を発見して、持ち上げたり、絵の具でぬったり、環境の変化をキャッチして遊びに転換していました。
それぞれの子どもたちの遊びの集積がベランダに干されて、この日の造形活動は終了しました。
色の布はこれからも残ります。これを今後の保育の中で先生方に生かしてもらえたらいいなと思いました。
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