石田梅岩の悟りと実践

石田梅岩の悟りとは、簡単に言えば、我々と万物は一体であるということを知るということであり、また、我々の存在の本質は生死や時空を超越していて不生不滅であるということを知る、ということである。このこと自体は、太古の昔から、ウパニシャッドや仏教、禅、または老子や荘子等によって語られてきたことと大して違いはない。

石田梅岩の思想の特徴は、その悟りを得た後、実社会においてそれをどのように実践していけばよいのかということを、儒教を基礎として、極めて豊富な例を用いて具体的に述べているところにあると思う。その観点は、上述した思想、宗教にはあまりないものであった。

現代社会において言うなら、その実践とは、自分の仕事を天命だと思って、他者の幸福のために、真心をこめて奉仕すること、と言えるだろう。そして、相手方だけではなく、双方に利益となるように仕事をすることも大切だ。また、収入以上の生活はせず、倹約を守り、お金を貯めておけば、もしもの時に役に立つし、困っている人を救うこともできる。

例えば一日中モニターにかじりついて株の取引をしている人たちなどは、収入はあったとしても、お互いの幸せのために働いているという意識はなく、いつも不安で心が満たされることはないだろう。また、株取引では誰かの資産が誰かの資産に移転するだけで、社会全体の富は増大しない。

自分の仕事が他者の幸福に貢献し、その対価を得て自分も幸せになる、というのがやはり人の生き方としては正しいものだと思われる。そういう仕事ができれば心も満たされ安心することができる。また、そういう働き方をする人が増えれば増えるほど、社会全体も豊かになっていくだろう。

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