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永久凍土学びはじめ

永久凍土の融解が進むと、なんとなくまずいことになりそうなのは理解している。溶解した湿地帯から噴き出すメタンガスが、温暖化を加速させるのだ。

小学生の頃、北の荒野で一人サンプリングをする初老の研究者の姿をNational Geographicの記事か何かで見た。もはやおぼろげなイメージしか記憶に残っていないが、強烈にロマンを感じ「将来こんな仕事がしたい」と思ったものだ。それ以来、なんとなく永久凍土が気になっていた。

昨今様々な国や企業がカーボンニュートラルに向けた声明を発表している一方、あまりこの問題に対してアプローチしているという話は聞かない。一体、永久凍土の溶解問題には誰がどのように取り組んでいるのだろうか?解決策はあるのだろうか?気になったので調べてみた。

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永久凍土とは?
そもそも永久凍土とは何だろう?国立極地研究所によると「2年以上連続して0℃未満の状態を保つ土または岩。寒冷な高緯度や高山に分布し、最も厚いとされる東シベリア中央部で800m 以上に及ぶ。多くの地域で地表面付近は夏季のみ融解し、活動層と呼ばれる(これからの北極)」らしい。そして、地球の陸地の20-25%を占める範囲に存在するらしい(National Snow and Ice Data Center)。

そして、この永久凍土に5.7x10^13 m3のメタンハイドレートが眠っているという(産業総合研究所, 海老沼, 2005)。これは、メタンガス9.1x10^15 m3に相当すると試算でき(化学のグルメを参照して求めた)、2018年の日本のCO2排出量の14万倍の温室効果に相当するのではないかと考えられる(日本のCO2排出量, CO2に比べたメタンの温室効果は約25倍)。とにかくすべて溶解しなくても、永久凍土の溶解によってとんでもない量のメタンが排出される可能性があるようだ(試算の検算はお任せします、気力が、、)。

永久凍土が溶けると何が問題なの?
永久凍土が融けると永久凍土が捉えていたメタンハイドレートが溶けて、温室効果の高いメタンガスが発生してしまうことが問題だが、それに加えて色々あるらしい。

①排出のポジティブフィードバックループ
融ければ融けるほど溶けやすくなるらしい。実際これまでの想定を上回るペースで永久凍土の融解が進んでいて、温暖化で大気の温度が高くなることに加えて、土がぬかるんで樹木が倒壊し、砂漠化が進む。そうして、表土が日射に晒されることにより、さらに表土があたためられ、融解とメタンガスの発生が加速するようだ。しかもこの問題は、最近認知されたらしく、IPCCの2018年の報告書では考慮されていないらしい。もしかすると温暖化の予測が大きく上方修正されるかもしれない(Turetsky, 2020)。

②家屋やインフラの劣化・倒壊
永久凍土地域にあるインフラの約7割が、永久凍土層の融解の可能性の高い地域に存在し、融解の影響を受けるインフラへの損害によって2050年までに360万人が影響を受ける可能性があるらしい(Jan Hjort, 2018)。

この他にも、有毒ガスや有害物質の流出のリスクが懸念されているようだ(Wiredの記事で読んだ気がする)。


国内での研究動向は?
このように、色々な問題の発生源と語られがち?な永久凍土であるが、今どのような研究が国内で行われており、どのような成果が上がっているのかを概観したいと思う。

日本の研究.comという超便利なサイト(いずれきちんと紹介したいと思う)にて、どのようなプレスリリースが大学・研究機関から発表されたのかを調べてみた。

「永久凍土」と検索すると24件のプレスリリースがヒットした。それぞれの分類は下記の図のとおり。

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こうして見てみると、24件という数字の少なさに驚きつつ、特に気候変動問題と合わせて語られるものが多いことがわかる。今後、一つひとつ詳しく見ていきたいと思うが、なんとなく、融解を食い止める解決策にまで踏み込んでいる研究はあまりないような気がする。

浮かんできた色々な仮説
ごくごく簡単にではあるが、WEB検索で色々と情報を集めてみると色々な仮説が浮かんできたので列挙したい。

①融解問題が社会に十分に認知されていないのではないか?
問題の抱えるリスクの大きさや影響を与えるメカニズムを整理しわかりやすく社会に伝える人がいないため、社会的関心度が低く研究や技術開発に予算が付きにくく、永久凍土研究と解決策に繋がる研究がリンクされにくい状況にあるのではないか?
②永久凍土地域を緑化することが解決策となるのではないか?
永久凍土地域の植物が損なわれ、表土が日光に晒されることがポジティブフィードバックループの一部であったことから、迅速に広範囲の緑化を促す技術が、融解問題を食い止める解決策になるのではないか?(寒冷地における植物栽培の研究者を探す?)
③メタンガスを大規模に回収・固定する技術を開発することも求められている?
メタンハイドレート回収に関わる研究が必要では?カナダのDirect Air Capture技術でCO2回収を大規模に行うCarbon Engineering社のような企業がメタンガス の回収プラントの設置に関する研究を行う?また、効果的な配置や安定した運用を実現させるために、賦存量が多く融解リスクの高いエリアを特定したり、ぬかるんだ地域におけるプラント設置手法の開発を行っていく必要がある?また、回収したものを固定するための技術(金属錯体に吸着?)が必要?

おわりに
なんとなく気になっていたことなので、少し調べてみたが、奥が深そうだ。これまであまり馴染みのなかった領域で、不勉強を晒しているが、興味深いので今後も継続的に色々調べてみたい。将来的に、何か技術開発に自分も貢献できると嬉しい。

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