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本と美容室ミネシンゴ氏に訊く「地域を見る目の養い方、伝え方」ーまちは舞台、人は役者ー《アカデミーハウス特別インタビュー》


2024年6月末、山口県萩市に「本と美容室」がオープンしました。オープンしたのは神奈川県三浦市で出版社「アタシ社」を営むミネ シンゴさん。今回縁もゆかりもない萩市に「本と美容室」をオープンしたミネ シンゴ氏。
移住・地域活性化をテーマとした全国誌「TURNS」の編集ディレクターも務め、日本中を取材し尽くしたうえで、なぜあえて山口県萩を新たな出店場所として選んだのでしょうか。

そんなミネシンゴ氏がアカデミーハウス主催U30地域探求トークショーに出演してくださいました。
今まで私たちが気が付かなかった地域の魅力と今後、知るだけではなく広く伝える表現のコツについてお伺いしました。
(撮影者)

1984 年生まれ、横浜市出身。表現を通して商売をすることをモットーとしている。

美容師から美容専門誌編集者や営業を経て、「本と美容室」の経営へ。

ーーミネさんのこれまでの経歴を教えてください。

美容専門学校を出て美容師になりましたが体を壊し、美容専門出版社である「髪書房」に入社しました。美容学生やアシスタント向け雑誌Ocappaの制作に携わり、良い美容師との出会いを通して、また美容師をやりたくなり2年後に再度美容師に戻りました。
東京から鎌倉に拠点を移し、美容師として活動していましたが、
2011年に震災、身近な人の死があったり、自分の性格上、同じ場所で同じ仕事をやり続けることが向いていないとわかってきたり。美容師としての仕事は好きだけど、髪の毛というものを使ってもっと違う仕事をしたい、と思うようになりました。
美容師と編集を経たので次は営業だ!とHOTPEPPERBEAUTYのネット予約立ち上げの年にリクルートに入社しました。
3年半の期限付き契約社員という入社の仕方で30歳の年には卒業と決まっていました。
そこでリクルート在籍中に20代のキャリアの総集編として、「美容文藝誌   髪とアタシ」という雑誌を自費で創刊。
150件くらい書店営業に行って、1,500部700円ですべて売れました。
妻もリクルートでゼクシィという雑誌を作っていましたが、デザインを学ぶ専門学校へ行きデザイナーになりました。
夫婦で編集とデザインと営業ができると思い、
リクルート卒業後に「アタシ社」という出版社を作りました。
鎌倉で美容師をはじめ、その後独立まではトータルで8年ほど逗子に暮らしていました。サラリーマンを辞めて東京に行く機会も減り、
さらに神奈川を南下して神奈川県三浦市へ拠点を移しました。
その後、90年以上経った古民家を借りて蔵書室兼カフェ「本と屯」を作り、その2階を2020年に改装して1席のみのサロン「花暮美容室」をつくりました。

その後三崎の情報サイト「gooone」を制作したり、
泊まれる仕事場「BOKO」、雑貨や「ハプニング」をOPEN
2022年に「本と美容室」ブランド開始 一号店真鶴店OPEN
2024年6月末に「本と美容室萩店」をOPENし今に至ります。

「本と美容室 萩店」。100坪の古民家を改修。鏡越しにも広い庭が見える。
全国取材を通してを見つけたオススメ雑貨や食品も。

良いまちの定義は、良い店があるかどうか。


ーー萩に「本と美容室」を出店した理由を教えてください。

本と美容室のHPからうちの地域にも出店してほしいというメールがたくさん来ていて、その中の一つが萩でした。

熱量がすごい担当者の方で、山口の萩って行ったことないよね、と会社のメンバーと話していて一度行ってみよう!となりました。
そして、その担当者の方がこの地域で出店するために必要なキーマンをたくさん紹介してくれて、ぼくたちも通い続けるうちにまちのことがわかってきたり、まちに愛着が湧いてきたんです。
萩の中でも浜崎というエリアは、「伝統的建造物地区」なんです。
明治に建てられた建物を保全するために、
国の補助金と萩市の補助金で改修したんです。
そこで、ただ町並み保全するためだけではなく、
改修した建物を民間に貸し出して経済性を持たせようという流れになったそうです。
その後、プロポーザルが行われてアタシ社に決定し、大家さん(所有権)は市、運営権はアタシ社という形で物件を借りることが決まりました。萩としては初めての取り組みですし、全国的に見ても珍しい取り組みなんじゃないでしょうか。

マーケットとしてもいい場所だと思いました。
このあたりには大きな本屋さんが1件しかなく美容室もそこまで多くない。
まちの人たちに訊くと市外で髪を切っている人も多いですしね。
ただ、これらだけが萩を選んだ理由ではありません。
いろんな要素が絡み合った結果です。

ーー他にはどんな要素があったんでしょうか。

地元出身の方がゲストハウスをつくり、
おしゃれなレストランや宿も増えて、気軽にいける美味しいお店も増えてきたのがここ数年のことらしいんです。

この萩市浜崎といエリアにここ数年でお店を出したたちが
いてくれたのもここを選んだ理由の大きな一つです。

ーーはじめて萩市を見たときにどう感じましたか

「本と美容室」は神奈川県真鶴という場所でもやっています。
そこもここと同じ港町です。
港町は古くから行商人などいろんな人が行き交ってきた場所で、
ここも外部の人たちを受け入れながら自分たちの暮らしを守り、
いろんな人と付き合いながら経済をつくり、営んできたんだろうな、と感じました。

ーーミネさんが感じる良いまちの定義について教えてください

TURNSの編集ディレクターとして日本中をまわり、
山も川も旨いものも全国にたくさんあるのを知っているからこそ、
良いまちの定義は、「良い店があるかどうか」だと思っています。
初めてそのまちに訪れた人たちが「すごい行くところあるな」とか
「素敵な場所が多いな」と思ってもらえるまちには、
やっぱり人が集まります。
チェーン店ではなく、個人店の集合体としてみたときに、
昔からやってる居酒屋があったり、新しくできたコーヒースタンドがあったり、古くからの人も新しく来た人たちもいい感じに混ざっているのが
良いまちの定義な気がしています。

ーーここがそんな場所になりつつあるんですね

浜崎に素晴らしいお店が増えつつあります。
そうなると、浜崎の良さを感じて自分もここでお店をやりたい!と言ってくれる人も増えてくると思います。

自分たちの表現を通して、まちに必要なこと、受け入れてもらえる商売をすることで、
必ず人は集まってきてくれると信じています。

書店担当の瀬木さんは15年以上勤めた会社を退職しアタシ社に入社
オススメの本、貴重な本がずらりと並ぶ店内。

「まちは舞台、人は役者」という考え方。


ーー「本と美容室 萩店」は今後どういう場所になると思いますか。

たぶん、公園みたいな場所になっているんじゃないでしょうか。
本を買いたい、髪を切りたいなどの目的を持った人たちが半分くらい、
あとの半分くらいは目的はとくになく、誰かとおしゃべりしたり、自由に思い思いの時間を過ごす人たち。飲食許可も取っているので飲み物を注文することもできます。外には広い庭もあり、大きいベンチもある。子どもからお年寄りまで、ここの空間の使い方は人それぞれでいいと思っています。
お店ができて数日が経ちましたが、近所のおばあちゃんや、学校帰りの子どもたちが立ち寄ってくれたり、嬉しい光景が広がりつつあります。

庭には地域の木材を使ったベンチとウッドチップが敷き詰められている

ーーその先には何があるんでしょうか

その先になにがあるかまでは考えていません。
でも、新しいことを始める、誰かと誰かが出会って今までと違う何かが起きるって、
対話や人との繋がりからしか生まれないですよね。
それが生まれる場所、というふうに考えています。

ーーそんな場所が浜崎に増えるといいですね。

そうですね。
本屋さん単体の商売だとなかなか難しい世の中になってしまいましたが本と美容室のように、美容室や雑貨、飲食など複数の売上を見込めるビジネスモデルであれば本屋さんを運営していけると思っています。経済と文化、交流と対話、表現と技術を通してどうまちに溶け込んでいけるかを常に考えています。

関りの「濃さ」の違いが面白い。


ーー本屋さんと美容室と小さなカフェという組み合わせは、初めてみました

そうですね。
本屋さんと美容室と小さなカフェという組み合わせでやっているのは
あまりないと思います。
ちなみに、出版社が本の取次を通して本屋をやっているのは、
すごく稀みたいです。

様々なニーズにも答えられるラインナップ

日本全国を取材してきた、アタシ社のミネシンゴさん。美味しいものもきれいな景色もどこにでもあることを知ったうえで「良いまちの定義」の定義を見つけました。
自分なりの「良いまちの定義」を考えながら各地を見ることが大切なのかもしれません。


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