見出し画像

追悼ーー筒美京平さん

 昭和の偉大なソングライター、筒美京平さんが亡くなられた。

 筒美さんの数多ある名曲のタイトルがニュースで挙げられるたびに、そのメロディーだけでなく歌詞までもが一文字も違わず思い出されることに今さらながら驚く。例えば――「♪つぅぼぉみーのまぁまぁ~でぇ~ゆぅめぇをぉみいてえいーたぁい~かげえのぉよおお~にうつくしぃ~い~もぉのぉがぁたりだぁけみぃてぇたぁいわぁ~~イぃヨぉわぁまだぁ~じゅーろーくだぁからぁ~」......と、松本伊代さんの調子っぱずれな(失礼)歌声に乗せてあのエバーグリーンの名曲「センチメンタル・ジャーニー」のメロディーが一度頭の中で鳴り出すと、しばらくは止まらない。

 私はイヨちゃんだろうが早見優ちゃんだろうが、アイドルという存在に何の興味もない可愛げのない少年だったが、テレビの歌番組で耳にするうちに早見さんの「夏色のナンシー」や近藤真彦さんの「ギンギラギンにさりげなく」なども自然と覚えてしまった。今でも歌詞付きで思い出せる。

 こう言ってはなんだが、3分経てば忘れてしまうような他愛もない言葉の群れにすぎない歌詞に、30年、40年経ってもひとの心の中で生き続けるほどの生命を吹き込んだのはひとえに、筒美さんの天才の成せる業だろう。筒美さんと同じくらい魅力的なメロディーを書けるソングライターは昔も今も何人かはいるだろうが、これほどに言葉とメロディーの完璧で幸福そのものの調和を何十、何百もの楽曲で達成できた人が、ほかにどれほどいるだろうか。

 そんな筒美さんの天才が、同じように何十年も心に残り続ける言葉、そして歌声と出会えば、それは永遠に私たちの心に刻まれ、世代を超えて聴かれ続ける名曲となる。若き日の松本隆さんが歌詞を書き、太田裕美さんが歌った「木綿のハンカチーフ」がそれだ、と言えば、賛成してくれる人は日本に300万人はいると思うが、どうだろう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?