見出し画像

ど、どうしようか

台風10号が接近している。史上最強レベルと連日報道されている。想定外の被害が想定される事態だ。たいへんなことが起きるとは想定できるが、そのたいへんなことがどんなものかまでは想定できないということだ。このようなときは、現場判断が優先される。この目で見たことで判断し、処理し、行動するということだ。

OODA(ウーダループ)というナレッジマネジメントの考え方がある。ナレッジマネジメントでよく使われている手法はPDCAだ。PDCAは年次計画などでは有効だけれど、緊急事態ではそんな悠長なことをいってられない。そこでOODAだ。Observe (観察)、Orient (状況判断)、 Decide(意思決定)、Act (行動)の頭文字をとっている。もともとは朝鮮戦争時のパイロット、ジョン・ボイドが生み出した方法だ。
長期戦略は、後回しにする。利害関係や政治的背景はもちろん。生き延びるのにどうするかという行動手法だ。

まず現場を見ること。それがスタートだ。「見る、判断、決定、行動」・・・空中戦で生き残ったパイロットの知恵から生まれた。これができなかったら死ぬ。

朝鮮戦争時、アメリカ空軍の主戦闘機は開発されたばかりのF-86セイバー、対するソ連製のミグ15は速度、上昇力、武装ともに上回っていた。性能面でミグが圧倒的に上回っていたが、アメリカ空軍は互角以上に戦った。全方位に視界が開けているキャノピー(操縦席を覆う透明窓)と操作性の良さで、「見る、判断、決定、行動」がすばやくできたことによる。

ノースアメリカン F86セイバー。アメリカのジェット戦闘機。第二次世界大戦で活躍したP-51ムスタングの後継機で、特徴だった全方位を見通せるキャノピー(操縦席風防)はそのまま生かされている。また、ドイツ空軍で開発されていた後退翼を取り入れてはいるが、バランスの良い操縦性も残している

ミグ-15。ソ連のミグ設計局が開発したジェット戦闘機。ジェットエンジンはロールスロイスから盗み出した技術で作り、機体は戦時中にドイツで開発された技術をエンジニアともども持ち帰って開発した。

ちなみに最近読んだ「フォッケ=ウルフ迎撃隊」にもドイツ空軍のエースパイロットが新人に攻撃方法を話す場面がある。「1見る。2決断。3攻撃。4反転もしくは休む。の4段階だ」・・・同じだ。
https://note.com/ishimasa/n/nb984f1c37a06

平時と緊急時の行動は違う。マニュアルは必要であるが、マニュアルにとらわれてもいけない。OODAが重要だ。

今、日常が平時と異なってしまっている。常在戦場とも言える。現場のリーダーだけでなく、トップリーダーにもOODAが求められている。

昨年亡くなった緒方貞子さんは、OODAタイプのトップリーダーだった。国連難民高等弁務官だったとき、紛争地域を実際に見て回り、決断をおこなった。その姿勢は、部下や関係者を奮い立たせ、5フィートの巨人と呼ばれた。