文月や六日も常の夜には似ず
7月6日の夜なのに、なんだかいつもの夜とはちがってソワソワするなあ、という芭蕉の句。奥の細道にある。7月7日は七夕である。一年に一度しかない織姫と彦星の逢瀬の夜。その前夜であるということがこの句の趣き。
7月7日に読んだという体裁の句は「荒海や佐渡によこたふ天の河」の方である。体裁というのは、「曾良随行日記」によれば7日は雨で海も見えなかったし、そもそも出雲崎で読んだこととして書かれている。出雲崎をとおった時に構想が生まれ、直江津あるいは高田で行われた句会で披露されたと考えるべきかな。
「曾良随行日記」によれば文月の句を読んだ場所は直江津で、このあと高田の医師細川春庵のところに一泊して「薬欄にいづれの花を草枕」の句を残している。
「奥の細道」では越後路の記述はつれない。「曾良随行日記」によれば新潟に寄った際にあまり歓迎されないで不愉快な思いをしたらしく、それをひきづっていたらしい。また、旧暦の7月は現在の8月である。むし暑い越後路を歩いていれば、不機嫌にもなるわ。奥の細道での記述もつれない、「此間九日、暑湿の労に神をなやまし、病おこりて事をしるさず 。」
ようやく出雲崎で海を見て「地球規模の大きな風景?」で気持ちをとりなおし、直江津や高田に入ってからは歓待されて機嫌もよくなったと思われる。
それにしても芭蕉でなくても、今年の文月はあっちぇぞ。