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情報社会を生き抜くための本11「プルーストとイカ」(メアリアン・ウルフ)

本の題名が印象的で、いったい何の本かと思う。帯にある推薦者がまたすごい。立花隆、養老孟司、瀬名秀明・・・ますます何が書いてあるのと思う。副題は、読書は脳をどのように変えるのか?

プルーストとイカについて第1章でその題名の意味を解いている。「文字を読む脳の発達と進化のこの二つの次元、つまり、個人的・知的次元と生物学的次元が併せて語られることはまれだが、そうすることで発見できるきわめて重要で素晴らしい手本がある。・・・読字のまったく二つの側面を説明するため、メタファーとしては有名なフランスの作家マルセル・プルーストを、また、研究例としては非常に過小評価されているイカを取り上げてみる。プルーストは読書を、人間ならば本来遭遇することも理解することもなく終わってしまう幾千もの現実に触れることのできる、一種の知的聖域と考えていた。これらの初めて触れた現実は、どれもがアームチェアにくつろいだままで、その知的生活を一変させる力を秘めている。・・19050年代の科学者たちは、臆病なくせに器用さも備えているイカの長い中枢軸策を研究対象として、ニューロンがどのように発火、つまり興奮して、情報を伝達しあうのか、解明しようとした。・・・人間の脳が読むために行わなければならないことと、それがうまくいかなかった場合に適応する巧みな方法に関する研究には、初期の神経科学におけるイカの研究と相通じるところがある。」読むとい行為は、ただ文字面を読めることと読んで理解し考えることの二つがあることを示唆しているのだ。

作者のメアリアン・ウルフは認知神経科学、発達心理学、ディスレクシア(識字障害)の専門家。本書は専門書でありながら、示唆にとんだ研究で一般の読者にも広く読まれ、この本によって数々の賞を受賞している。

メアリアンは、「話すこと聞くことは遺伝子レベルで身につく言語能力であり,読むこと書くことは教育によって身につける言語能力である」ことを明らかにしている。文字を読み書きすることによって人類は思考の質を変えたが,情報社会の進展によって思考の質が再び変化していく時期にあるという。さらにデジタルデバイスを使って動画やSNSを視聴する脳の発達が断片的で深く考えなくなる危険性を持っていることや熟達した読み手になることが脳の認知機能を著しく発展させることを指摘している。 紙の本とデジタルの双方を使いこなすバイリテラシーの育成をすることが重要と言っている。


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