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情報社会を生き抜くための本13「人間と機械のあいだ」(池上高志+石黒浩)

池上高志さんと石黒浩さんの共著であり対談集となっている。まえがきに石黒浩さんは次のように書いている「本書が、生命研究とロボット研究が一緒になって乗り込んだ船の、長い航海に向けた船出を祝うような本になればと思っている」

池上高志さんは、人工生命(ALIFE)の研究者。研究の現状を石黒さんとの対話の中で次のように語っている。「2000年以降・・・インターネットそのものが新しい自然現象としてエンジニアによって立ち上げられた。その結果、生命そのものの定義も知性のあり方も予想できない形で変わろうとしている。それが今のALIFEの状況ではないかと思います。」

石黒浩さんは、ロボットの研究者。自分自身とそっくりのアンドロイドを作ったり、桂米朝やマツコのアンドロイドをつくったことで知られている。ロボット研究にある「不気味の谷」という概念について以下のように説明する。「例えば、マツコ・デラックスさんのアンドロイドである『マツコロイド』を作ったときも、最初、マツコさんは『これは自分じゃない』と言ってとても嫌がっていた。しかし収録三回目くらいからマツコさんも含む全員が、マツコロイドがそこに『いる』とことが普通になったのである。つまり人間が適応することで、マツコロイドはもはや不気味なものではなく、そういう『人』として現場に存在するようになったのだ。」

内容的には人工生命やロボット・アンドロイドと人間との狭間に関する最新研究であるとともに「心は存在か、現象か」とか「人間の定義は」という哲学的な内容になっている。読んでいると機械と人間のはざまがどこまで接近しているのか、接面を見る思いになる。

シンギュラリティは科学の問題ではない。哲学の問題なんだとあらためて思ってしまう。



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