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杉田庄一ノート101 「海軍少年飛行兵」(朝日新聞社)…その2  序文


以下、序文である。旧仮名遣いを直してみた。苦しい戦況の中であるが、戦意を高揚しつつ海軍航空隊の重要性を格調高い文章で綴っている。塚原二四三は最後の海軍大将、にしぞうと読む。

以下の文章は、旧仮名遣いを私なりに直したものであるが、一部漢字をかなに、かなを漢字になおして読みやすくしている部分もある。あくまでも自分の参考資料としているものであり、引用する場合は原著にあたってほしい。


             
 海軍少年飛行兵こそは、精強世界に冠たる我が海軍航空部隊の中核である。
 顧れば支那事変勃発以来ここに五年、ひきつづきわが国は驕米狡英と戦端をひらき、大東亜戦争を迎えたが、緒戦以来、今日に至るまでの世界戦史に未だかつて見ざる赫々(かくかく)たる我が海軍航空部隊の活動は、昭和五年創設以来日夜御勅諭を奉体し、 孜々(しし)としてよく奮励、よく努力、 黙々として大いに実力の向上と精神の練磨とに心血を注げる海軍少年飛行兵に負うところ極めて大いなるものがあるのである。
 彼我の航空決戦は益々激化の一致を辿り、皇国の興廃は一にかかって航空兵力の充実整備にあり、しかして我が海軍航空部隊の責務いよいよ重大を加えるときに当り、朝日新聞社が豊富なる資料と優秀なる筆陣とによって、海軍少年飛行兵の制度、その生活、訓練等の実際をあますところなく平易懇切に紹介せられたる本書を公にせられたるは、誠に治せんに時宣に適したる企てというべきである。 本書は海軍少年飛行兵志願者にとっては必ずや絶好の手引書となるのみならず、 一般読書子にとっては、溌剌として無邪気なる紅顔の少年たちが、必死の訓練と努力とをつみ、 一度び広茫万里の戦空を翔っては勇戦奮闘、随所に敵を撃滅し、一死よく尽忠の大精神を発揮し、悠久の大義に生くる海鷲日頃の練磨を知る一端ともなり、誠に感銘深きものがあると信ずる次第である。
 皇国の隆替を決すべきこの大東亜戦争の帰趨は、むしろかかって今後にあるが、この一戦を完遂し、我等が祖先の偉烈をつぎ、皇国を磐石の安きにおかんとする熱血にもゆる少年諸氏が、これによってわが海軍航空に投ずべく奮起せられんことを切望してやまぬ次第である。
 ここに本書を広く世に推奨し、一言をもって序文とす。

       昭和十九年二月
            海軍航空本部長、海軍中将 塚原二四三

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