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「一生こんなことやってんのかなぁ」の違い

僕の席から、右斜め前で視界が入るテーブルにスーツ姿の男性4人組が座っていました。
全員20代後半くらいでしょうか。
 
4人それぞれの目の前にはノートパソコンが並び、
僕の視界に入る2人の画面上には、チャット、メール、ファイルが同時に浮かび上がっていて、3つの作業を同時進行しているようでした。
叩くスピードの早いこと、切り替え画面の早いことと言ったらありません。
頭の中はどうなっているんだろう。
 
僕はパートナーとコーヒーを飲んでいました。
彼女が化粧室に立った際、ぼーっとしながら、何気なく彼らの会話を聞いていても、
「仕様書」という単語以外はわからないカタカナ言葉のオンパレードで、僕にはわかりません。
だからこそ、「一生こんなことやってるのかなぁ」の声が際立ちました。
 
20代半ばの記憶が蘇ってきます。
映画にしろ、イベントにしろ、編集にしろ、耳障りは華やかだけれど、
関わっているというだけで、
やっている仕事は雑用ばかり。
生活は不規則で収入も不安定だし、こんなことをしていて、本当に未来があるのかなぁと思いながら、
「一生こんなことやってるのかなぁ」
 とつぶやいたのです。
「だいじょうぶだよ」
 そんな時、パートナーは抑揚のない淡々とした声で言っていたっけ。
それでどれだけ救われたことか。
彼女は全く憶えていないけれど。
 
30代後半にも、そんなことをつぶやいた記憶があります。
ホワイトマンとして顔を白塗りにして、
メンバーの家でこたつに入って、24時間の生活の様を撮っていたとき、
「一生こんなことやってるのかなぁ」
 とつぶやいた憶えがあります。
 
20代は不安だらけのネガティブな感情だけれど、
30代は「このまま続けたい」といったポジティブな感情で、
口から出た言葉は同じだけれど全く違うんですよね。
僕の斜め前のテーブルの彼らは、どっちなんだろう。

「人の心配している場合か!」
 想い出に浸っているとパートナーから叱られるわけで。

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