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もし、自分が死んだら…

僕には子どもがいません。
よって子どもを持つ喜びを味わったことはありません。
しかし、逆に苦しみもありません。
もちろん喜びの方が多いのでしょうが、苦しみがあることも自然なことなのでしょう。
 
グランツプロデュース「くちづけ」@新宿シアタートップスを拝見しながら、
「私たちが死んだ後、息子(娘)のことを考えると……」
 「引きこもり」や「知的障害」などの子どもを持つ親御さん達から聞いた話を思い出しました。
 
物語の舞台は知的障害者が暮らす施設。
知的障害の娘を持つ父親が親子でやってくるところから物語は始まります。
 
彼は漫画家として、これからという時に、娘を産んだばかりの奥さんを亡くしました。
施設に入れて働こうにも娘は嫌がり、出てきてしまうので、結局、つきっきりの二人暮らし。
締め切りに追われる漫画家の仕事から、挿絵などのイラストで食いつなぐ日々へ。
 
しかし、娘が成人し、お互い歳をとっていくにつれ、彼は思います。
「もし、自分が死んだら、娘は……」と。
そこで自分も知的障害者が住む施設に住み込みで働く機会を得ます。
幸い娘さんも、一緒に住む知的障害者たちとの相性もよく、幸せな時間が流れ始め……と言いたいところですが、どんなことにも「永遠」と「絶対」はありません。
 
こういった施設が、「絶対」につぶれない、「永遠」に存続するとは限らないのです。
施設を運営していくのにもお金がかかるのですから。
現実に施設運営のシビアな話をうかがったこともありました。
 
そして、自分が死んだら……。
 
終演後、役者との面会がコロナ禍で禁止だったことが逆によかったです。
元々、観劇直後に感想を述べるのは苦手なのですが、昨晩の舞台は、それ以上に考えさせられました。
受付で劇団「スタジオライフ」代表の藤原さん宛に差し入れを預け、早々に失礼したのです。
一緒に観劇した障害者問題に詳しい友人と新宿駅まで無言だったなぁ。

今も、唸りながら、綴っています。
 
こういった話を考えると、ふと思い出す一人が写真の彼女。
ネパール滞在中、散歩がてら映画館に行くと必ず僕(金髪が珍しかったのかもしれません)のところに近寄ってきて、自分の持っているCDを見せて説明してくれました。

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