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タケノコアク抜き格闘の末

タケノコのあく抜きという言葉と米ぬかを使うことくらいは知っています。
しかし、自分でやったことはありませんでした。
 
「自分でやれる?」
「やってみます!」
 のやりとりの後、近所の方から、いただいたのです。
米ぬかと一緒に。
 
インターネットで確認し、
たけのこの頭を切り、
切れ目を入れ、
パスタ用の大きな鍋に放り込み、水と米ぬかを入れ、沸かし始めました。
赤唐辛子も入れてくださいと書かれていましたが、
あく抜きに必要な科学的根拠がないという記事(あく抜きとアルカリ性の関係性が面白かったです)を見かけたので、入れませんでした。
本当は、赤唐辛子が見当たらなかっただけなんですけどね。
 
しばらく鍋の中を眺めていたのですが、
ふと雑用を思い出し、
まだ大丈夫だろうと、
少し離れているうちに拭きこぼして、IH調理器の電気が切れていました。
あいかわらず、どんくさい。
 
それからは台所に折り畳みの椅子を広げて座り、
スマホからベッドミドラーのアルバムを流し、
つまみのナッツを用意し、
赤ワインをちびちび飲み、
時折、おたまで、あくをすくっていました。
 
1時間後、たけのこの根元を串で刺します。
柔らかい。
どうやら茹で上がったようです。
僕の方も茹で上がり、つまり、ほろ酔いで心地よくなりながら、
鍋を流し台に移し、お湯を流し……

「あ―――――――――!」

 と家に響き渡るほどの雄叫びを発しました。
そのまま、冷ましておかねばならなかったのです。
そうすることで、タケノコから出た旨味が戻るらしい。
つくづく、どんくさい。
4分の1ほど残ったお湯に、水を足し、翌日まで放置しておきました。
 
翌朝、まな板の上にのせ、途方にくれます。
いったい、どこまで食べられるのか。
口に含みながら、「ここまでは大丈夫だ」と確かめ、
切り方をインターネットで検索して切り刻み、大きなジップロックに詰め込んでいきます。
パンパンに詰まった3袋を冷凍庫に放り込みました。
それが、ちょうど一週間前の旅に出る朝のこと。
 
昨日、ご飯を炊く際、思い出し、
山菜の釜めしの元に冷凍のたけのこを一緒に放り込みます。
山菜ごはんではなく、たけのこご飯に近い状態になってしまったけれど美味しい。
でも、旨味が逃げているような気が、いや、気のせい、気のせいと首を振り続ける僕を母は不思議そうに眺めておりました。

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