見出し画像

ロフトから見た忘れられない光景

連続テレビ小説「おちょやん」で劇団員が一緒の部屋で雑魚寝しているシーン。上からのカメラアングルを見ながら思い出しました。
 
青山円形劇場で一週間、ホワイトマンの公演をすることになった時のことを。
8ステージ全て別の公演を披露するという無謀な企画でした。
トラブル続きの舞台だったので想い出は山のようにあるのですが、
ワンシーンだけ選べと言われたら、劇場でも稽古場でもなく、自宅のアパートなんですよね。
 
そこに製作チームが寝泊まりした時がありました。
当時、住んでいたのはロフト(中二階)付きの部屋で、僕は上で作業して、そのまま寝て、また起きて作業する日々。
そんな時に来てくださったのでしょう。
精神的に追い詰められている僕を心配して来てくださったのか、
作業が間に合わないから催促しに来たのかは憶えていません。
 
ただ、ふと僕が目覚めてロフトから顔を出した時、下のフロアに制作チームがうつぶせるように寝ていた光景だけは強烈に脳に刻まれているのです。
その一人の藤森さんは大手芸能プロダクションのマネージャーの仕事を辞め、
「楽しいことがしたいんです」と雀の涙ほどのギャラしか出ないホワイトマンの製作チームに入って面倒を見てくださったのです。
 
構成を書かなきゃいけない、
演出プランも決めなきゃいけない、
出演者やスポンサーとの交渉が進んでいない、
お金は足りない、
チケットは売れていないなど、
自分で始めておいて、
勝手に精神的に追い詰められていき、
何かのトラブルで公演が中止になればいいと本気で思っていた時期だったのですが、
藤森さんの姿を見て申し訳ない気持ちで涙があふれてきました。
この時の光景と想いは一生忘れないのでしょう。
 
だから今でも自著本が出る度に彼女が眠る茨城の墓へ届けに行きます。
 
「ここ数年、来てないですよね?
本の原稿は進んでいますか?」
 思い出したら、彼女に言われているような気がしてなりません。
いつも優しいんですけど、どこか厳しいんですよ。
僕たちは彼女を「学級委員長」と呼んでいました。

写真は昨年、出版プロデューサーのホワイトマンから、いただいた青山円形劇場のフライヤーデータ。
彼との想い出も山ほどあるのですが別の機会に改めて。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?