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パレスチナと宗教と政治思想と世界情勢

僕にとって分厚い本を読むくらいの情報量があったのではないでしょうか。
なかなか観る機会のないパレスチナの映画を拝見しました。
 
「天国と大地の間で」
 
ロードムービー(旅の物語)ということで楽しく拝見しましたが、
上演前と上演後にイスラーム映画祭の主宰者藤本高之さんの解説を聞けたことは大きかったです。
 
パレスチナと言うと、ガザ地区、ヨルダン川西岸、パレスチナ難民は思い浮かぶけれども僕には暗いイメージしかありません。
しかし、映画はパレスチナ人夫妻(正確には、これから離婚手続きしようとしているところ)のプール付き豪邸の自宅から始まります。
パレスチナだろうがセレブはいる、つまり貧富の差は他の国々と同じようにあるという当たり前の現実に、ハッとさせられるんですよね。
 
夫のターメルは親世代がパレスチナ難民となってレバノンに逃れ、そこで生まれたパレスチナ人で、オスロ合意の後で戻ることはできているけれど、IDも特殊で出国は不自由。
妻のサルマはナザル(イスラエルの領土になった場所)で生まれたパレスチナ人ですが、父親はイラン寄りの共産主義者で無宗教の家庭で育っているという夫婦それぞれに複雑な背景があり、
旅の途中で出会う、ユダヤ系イスラエル人、アラブ系イスラエル人、ユダヤ系パレスチナ人、アラブ系イスラエル人それぞれの想いによる確執、
そこに絡む宗教、政治思想、世界情勢(複雑なゴラン高原も描かれています)など、これでもかというほど情報が詰め込まれているので、頭はパンクしそうでした。
それでもロードムービーの楽しさが詰まっていて、「離婚」に対する共通認識はあるので、十分、楽しめる作品です。
 
終演後の藤本さんの解説で、さらに、「えーっ!」となり、
使い古された言葉で恐縮ですが、世の中は複雑な関係で絡み合っているなぁと改めて感じました。
そして、ふと、思いました。
ロシアで暮らすウクライナ人、ウクライナで暮らすロシア人、これからのウクライナ人の人生のことを。

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