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俳優志望の覚悟

20代半ば頃、俳優志望と呼ばれていた時期があります。
「呼ばれていた」というのが何とも情けない。
「お前は何になりたいんだ?やっぱり俳優か?」
「え~、あっ、そうですかねぇ」(頭をポリポリ搔きながら)
「キッパリそうですって言え!そんなんじゃオーディション受からんぞ!」
 上京して飛び込んだ映画事務所で映画監督やプロデューサーから、からかわれていました。
 
正直なところ、
映画監督志望と言うには映画を観ていないし、
プロデューサー志望と言うには仕事内容を把握していないし、
まぁ、俳優志望とでも言っておけば無難かなぁという感じで、やり過ごしていたのです。
嫌な若者だなぁ。
 
映画「役者として生きる~無名塾31期生の4人~」を拝見しました。
無名塾とは1975年に俳優仲代達矢さんと妻で劇作家・演出家の宮崎恭子さんが立ち上げ、
役所広司さん、若村麻由美さん、真木よう子さん、滝藤賢一さんなどを生み出した私塾です。
無名塾の塾料は無料ですが、役者修行として入塾後3年間はアルバイト一切禁止らしい。
 
不定期で塾生を募集し、2019年は31期生が入塾しました。
高専卒業後、国立大学編入が決まっていたのを辞めた方、
演劇部に所属していた高校生の頃、東日本大震災で被害にあった演劇部の公演を観て、自分の甘さを問いただして入塾希望を決めた方、
数年前、無名塾の合格が決まったのに、短大中退に戸惑って辞退したけれどあきらめきれず、再度、試験を受け直した方、
中高と演劇部を突き進み、やはり、自分の進む道は役者しかないと決意した方、彼ら4名のドキュメンタリー作品です。
 
朝7時、世田谷の稽古場の掃除から始まる稽古漬けの日々、
コロナ禍で舞台役者としてデビューしていく様など、
顔つきも演技も変わっていき、
3年間が経った今の心境などを拝見し、
彼らの覚悟に、20代の頃、「俳優志望って感じかなぁ~」の自分を思い出しました。
申し訳ないやら恥ずかしいやら。
 
僕は自分が何になりたいのかもわからないまま、日々、過ごしていたんだろうなぁ。
結局、やけくそ気味に「何になりたい」と職業ではなく、「何がやりたい」になってしまったんでしょうね。
そして、いつしか顔を塗っていたのです。

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