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介護に関して探偵事務所に一番多い依頼。

母のショートステイ先が面会禁止になり、1年半以上が経ちます。
コロナ禍になるまでは母の滞在期間中、僕が安八町にいれば、自転車で散走がてら施設内のカフェへ、よくコーヒーを飲みに行っていました。
「介護士チェックのスパイと思われるかもしれんなぁ」
 と母が冗談を言ったほど。
 
介護施設の許可をとり、一人の高齢者男性をスパイとして送り込んで3か月間撮影したドキュメンタリーを拝見しました。

映画「83歳のやさしいスパイ」。
 
新聞広告で80~90歳の健康な老人を募集するところから始まります。
「情報機器が使えること」が条件。
「自宅にはWifiが設置してあります」とアピールした後、「つないだことはないけれど」と言うなど、面接から笑いました。
 
選ばれたのは83歳のセルヒオさん。
施設には撮影隊も入りますが、24時間ではなく、毎日でもありません。
セルヒオさんは毎日、スマホで自分の声を録音して送信報告します。
よって操作から学び、小型カメラを仕込んだ眼鏡も装着していました。
 
スパイのセルヒオさんに課せられているのは、利用者の家族から、介護士からの虐待がないかどうか調べてほしいという依頼(実際、探偵事務所への依頼は多いらしい)に対する調査です。
 
それぞれの人生を背負って入所している高齢者たちには、当たり前ですが様々な人間模様があり、
優しいセルヒオさんが一人一人に対し、じっくり時間をかけて丁寧に接する様が温かい。
認知症を患い、他人の物を部屋の引き出しに貯め込んでしまう女性の話を優しく聞き、
施設に25年住む独身女性からはセルヒオさんに対する恋心を打ち明けられ、友人としてならと優しく、でも、きっぱりと断り、
進行していく認知症を恐れる女性に「泣いていいんですよ」と声をかけて泣かせてあげます。
施設に入ってから誰も面会に来ない女性詩人がつぶやいた「人生って残酷ね」という言葉も胸に刺さりました。
 
最後、セルヒオさんが出した調査結果や退所のシーンについては書かないけれど泣きました。

今週末、帰宅する母に普段より優しく接しそうです。
数時間後には母子戦争になるんでしょうけどね。
 
写真は南米チリはサンティアゴの映画館。
「83歳のやさしいスパイ」の舞台になった施設がチリだったので。

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