潮崎vs武藤(2021.2.12)

語らなければならない試合ができた。2021.2.12日本武道館。NOAHにおける潮崎vs武藤だ。極上だった。オレは武藤に、やられた。
久しぶりに全身全霊でプロレスを見た。というより、『見させられた』とでもいうべきか。最近は家事や育児にやりたいことで大忙しの中、『ながら視聴』やなんなら『音だけ視聴』していたこともあったプロレス。しかし、この試合に至っては、事前のインタビューからなんとなく『ちゃんと見なきゃ』感があって、事実そうした。そして実際、プロレスファン歴20年で得た総知識、総価値観をもって全力で見た。見た瞬間、これはnoteでも語ろうと決めたが、この数日、というか今この時もどう言葉で表現しようか考えたし、そもそも言葉にできるか不安な状況だ。長くなりそうだが感想を書いていく。ちなみにこの文章、スマホで移動中に打っているわけではなく、自分の部屋のパソコンで仕事態勢で書いている。

まず、試合に至るまでがいい

そもそもの話として、プロレスラーとして世の中に知られている人って言うまでもなく一流の人たちな訳なんだけど、その中でも超一流かどうかって、プロレスに対する自身の『哲学』をアートとしてのせて魅せられるかだと思う。そうでなければ、単なる『人より早く高く飛べる人』『人より力持ちな人』『人より頭から落ちても大丈夫な人』で終わってしまうというか。この試合の前日、録画した飯伏vsSANADAを見て、”だから飯伏って超一流ではないんだな”と感じたところだった。その点、武藤は凄い。それこそ自身のプロレスに対する哲学があって、それをナチュラルにアート化している。このナチュラルさが、ヤバい。もう、マイクアピールもインタビューも、自然に話すだけで味になってしまう域。
「ちょっと年とって、老いぼれているけど、そんなオレも夢は見ていいだろ?オレの夢、付き合ってくれ。」
いやカッコよすぎるだろ!!!誰がこんな哀愁と愛嬌と渋さに溢れた挑戦表明できんだよ!!
この挑戦表明を皮切りに、試合に向けて前哨戦だけでなく事前の煽りあいも見事だった。武藤が言ったのは『技のデフレ』。いや、やめてよこのキャッチーな、それでいて全然聞いたことない言葉!!武藤曰く、要は『潮崎のプロレスは技を無駄遣いしている。たくさん大技を出してフィニッシュするから、その分一発一発の価値は下がっている。オレは技のインフレを目指すよ(=少ない技でも、”間”や”説得力”でプロレスができる)』。これ、本当にそうなのよね。いわゆる四天王プロレスとか、僕も大好きなんだけど、でも結局何度も見るプロレスは意外に外道さんの試合だったりとか(笑)とにかく武藤のこの煽り方、古い言い方するとイデオロギー闘争、わくわくした。ちなみにプロレスだけでなく、ほかの格闘技も含め、最近は事前の煽りに力を入れ始めたと思う。そりゃそうだよ、どんなにいいことをしても、見てもらえなきゃ意味がなく、見てもらうには話題作りが必要だから。このへん、特に最近力を入れ始めた感じがあるのがK1とかRIZINだよね。まだまだ煽り方が青臭いけど(笑)

序盤のレスリング攻防がいい

なんか武藤についてばっかり語っているけど、もちろん潮崎もいいのよ?でも、結局この先も武藤についてになると思います、悪しからず。
試合はロックアップから始まった。解説が秋山と小橋氏なのもいいね。小橋氏の滑舌、ギリギリだね。あと、山田邦子さんのプロレス好き感が好き。たまに思わずため息つくのとかめちゃいいわwww
手首の探り合いから足をかけて早速投げる武藤。プロレスラーとして、『レスリング』でちゃんと見せてくれる。グラウンドで上に乗ったらそう簡単にひっくり返させないし、逆にわざとひっくり返させてあげることで力を見せられる武藤。ただワンシーン、武藤が本当にひっくり返されるシーンがあって、潮崎に「おっ」ってなった。足取ろうとしたのもちゃんとかわしたよね、潮崎。ちゃんと気づいたよ。ああいうの大事なのよね。
てか、武藤のコンディションもいいなぁ。膝もそうだし、体つきも、ガッチリこの試合に合わせてきている。WRESTLE-1の時のタイトル戦の時、このクオリティあったか?笑

タックルの応酬にならなかったのがいい

ここは味わいがあったなぁ!レスリング攻防ひと段落して武藤がショルダータックルするんだけど、それ以上展開しないんだよね。これは深読みしたいんだけど僕の思考が追い付かない。なんだろう、この感じ。武藤は潮崎に「来い」みたいにしたけど、潮崎は潮崎で「お前がもう一発こい」みたいな?お互いがマウント取り合うというか、『お前が挑戦者の立場だよ、向かってこい』みたいな心理戦なのかな。これは珍しいシーン。ここだけで酒飲める。

中盤の技の引き出し合いがいい

エプロン付近で仰向けになった武藤に袈裟斬り→リング内で逆水平→力任せなフェイスロックという往年の小橋を彷彿させる展開。武藤って逆水平こんな正面から食らうタイプだったっけ。気持ちいいよね、すかさない感じ。秋山、見習ってくれ。逆水平食らうときに体後ろに引くのやめてくれ!笑
武藤がね、このあたりでローリングソバットと浴びせ蹴りするの!これは沸くね!そういえば一時期めちゃくちゃな動きしてたもんな、足痛いのにバク宙キックとかwwwもうあの時期は確か天山が雪崩式フランケン(vsペガサス戦)やったり、健介がローリングセントーンやったりっていう、プロレス版ヴァーリトゥードだったもんな。
んで、ドラスクから四の字と見せかけてアキレスっていうね。ここもいい。試合展開を進めつつ、ちゃんとコントロールしちゃう感じ。
んで中盤フィッシャーマンバスター食らったあたりから武藤がちょっとキツそうなんだよな。多分110キロの武藤にここまで芯まで打撃を与えられて、投げ切れる人ってそういなかったんだと思う。そこからさらにうまいのが、武藤がここで四の字に持ってくところ。潮崎としてはここですぐロープにいくと王者として懐の深さを見せられない。だからロープいくまで必然的に長引くわけだけど、そのおかげで武藤は呼吸を整えられるという。ここの伏線は凄い、天才だ、ナチュラルボーンだ。序盤ならSTF、中~終盤なら四の字という、攻撃兼休憩技をもっているのが武藤のずるいところ。

ペースの奪い合いがいい

ここから試合が動く。武藤の低空ドロップ、ウィザード→潮崎のジャーマン→武藤のウィザード。ペースの奪い合い。武藤としてはここのウィザードがないと一気に劣勢になるところを、ちゃんとペースを残したって感じか。潮崎のゴーフラッシャーが決まったあたりででた山田邦子の名言「ダメです、私、私もう、おかしくなってきました」。いいよ、山田さん、私も同じ気持ちです。やっぱり解説席に座る人がレスラーでも専門家でもないのなら、同じファン目線で感情移入してくれるのが一番だよね。昔G1でゴン中山がめっちゃ叫んでたのとか、賛否両論あったけど僕がめちゃくちゃ大賛成。
どんどん互いの大技が決まっていく。そしてウィザードの連発。からのエメラルドフロウジョン。一度態勢崩してからの再チャレンジ。あのね武藤、あなたこの技禁止ですwww昔タッグで三沢の目の前で敢行(三沢、小川vs武藤、太陽ケア)やった時もそうだけど、慣れてない人がドライバー系やると、あり得ない角度かあり得ないスピードで落としちゃうのよwwwやめてくださいwww
そして物語は極上の時間へ―――

ムーンサルトの時間がいい!!

武藤がシュミット式バックブリーカーからムーンサルトの構えへ。この時間が、マジで極上。10秒ほど。ファンが見つめる中、、、武藤がムーンサルトに―――
いかないんですよぉぉぉぉ!!

この、『いかない』美学ね。『大一番だから封印を解く』っていう、『当たり前じゃないことをするのが当たり前』になっていることへのアンチテーゼ。武藤は試合後これを「いけなかった」と表現したけど、試合前の『技のデフレ』云々を考えると、これは深い。深すぎる。とにかくあの時間は非常に頭使う時間だわ。

最高のフィニッシュがいい!!

潮崎の事故みたいな雪崩式技が炸裂。そのあとショートレンジのラリアット。これを返す武藤の表情の限界具合がいい。武藤頑張れ!でももっと限界を迎えてくれ!みたいな不思議な感情。
そしてムーンサルトを返した武藤に思わず歓声を送ってしまう観客。わかる、その気持ち!!
そして走ってのラリアットを倒れずに耐える武藤、そしてカウンターのフランケン!!3カウント!!このカメラワークが最高!!中邑vs武藤戦を彷彿させる。武藤が潮崎を振り向かず、口開いてぜぇぜぇするのが死ぬほどカッコいい!そうだよフランケンがあったんだよ!!垂直落下とかエグい新技じゃないんだよ!!!新しいものを新しいところから拾ってこなくても、引き出しの奥にまだあるんだよ、宝物が!!
試合後迫ってきた清宮に特にアクションもなく、どこまでもナチュラルボーンで去っちゃう武藤。ちょっとのラブポーズがかっこいい。
NOAHにとっては数年ぶりの日本武道館で、最強の外敵でありある意味過去の人間である武藤が勝つという強烈なバッドエンド。でも本質的には全然バッドエンドではなく、内心NOAHファンもちょっと武藤が勝つことを望んでなかった?みたいに問いかけられちゃってるみたいな不思議な感覚に襲われるフィナーレだったね。

というわけで完全にプヲタしましたこの記事。
でもまぁまぁ、いい味の記事になったでしょう。もう一回試合見てみようとなったことでしょう!
そして数日後―――
武藤はなんとNOAH入団を発表。我々はどこまでもこの男の手のひらで弄ばれ続けるのだろう。いやてか弄ばされ続けたい!!

これからもプヲタとして驀進します!!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?