第9号:常識の壁を打ち破る魔法のフレーズ「それって誰が決めた?」
僕はビジネス書をよく読みます。
いろんな業種のビジネスマンの仕事術や物語を読みますが、なかでも好きなのが、人とは違う視点や発想で物事に取り組んで結果を出す人の本ですね。
最近だと、伊藤嘉明さんの「どんな業界でも記録的な成果を出す人の仕事力」(東洋経済新報社)。これは面白かったですね。
彼が仕事で打ち出しているのは、「よそ者の強み」。
経歴としては、日本コカ・コーラで31歳で最年少部長となり、その後、デル、アディダスジャパン、ソニー・ピクチャーエンターテインメント・・・と数年ごとに未経験の業界に飛び込んでいく生き方をしています。その業界のプロじゃないからこそ、言えること、やれることがあり、そして世界を変えることができると信じているんですね。
マイケル・ジャクソンの「THIS IS IT」というDVDをご存知でしょうか。
2009年に亡くなったキング・オブ・ポップであるマイケル・ジャクソン。彼の幻となってしまったツアーのリハーサル風景を撮影したフィルムを映画にしたものです。マイケル・ジャクソン版の「プロフェッショナル 仕事の流儀」といった内容で、このDVDは200万枚を超えるメガヒットとなりました。コンテンツが売れないと言われ続けている近年のDVD業界では、ありえない数字を叩き出しています。
伊藤さんはこの「THIS IS IT」を大ヒットさせた仕掛け人です。この売り方が、まさに「よそ者の強み」を生かした発想だったんです。
この「THIS IS IT」のDVD、ソニー・ピクチャーズエンターテイメントが当初見込んでいた売り上げは、30万枚だったそうです。
頑張っても、マックス35万枚だろう。マイケルといえど、全盛期に比べるとすでに旬は過ぎているのではないか。それが、業界を知り尽くしたベテラン幹部たちの見立てた結論でした。
しかし、アディダス・ジャパンから転職してきたばかりの伊藤さんは「100万枚いくと思います」と会議で言い放ちます。レコード店やレンタルショップに足を運ぶのは20代〜40代までの男性が中心なので、女性やお年寄り、子どもたちにもDVDを売ることができれば十分に可能だと思っていたからです。
当然、幹部からは冷ややかな視線を浴び、「素人だから、わかってないんだ」とバカにされます。女性やお年寄り、子どもたちといった層はレコード店やレンタルショップにはあまり来ないのだから、売れるわけないというわけです。副社長からも「大手レンタル店や販売店でも5万枚も注文してくれない。一番大きい2箇所を合わせても、やっと10万枚。あとは小さなレコード店だけ。全部合わせても30万枚も厳しい」となだめられたそうです。
そこでスイッチが入った伊藤さんは、「わかりました。じゃあ、目標を200万枚をします」と宣言してしまうんです。そして、そこから彼が実行した戦略が凄かったんです。
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