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中村憲剛さんの優れた言語化能力を解説する。(2021ACL第4節・ユナイテッド・シティFC戦:2-0)

ACL第4節の川崎フロンターレ対ユナイテッド・シティ戦。

試合は2-0で勝利。4連勝で決勝トーナメント進出に王手をかけることとなった。

今大会のACLはDAZNで配信されているのだが、この一戦の解説者は中村憲剛さんだった。

NHKの中継でJリーグの試合を解説することはあるが、川崎フロンターレの試合を担当することはこれまではなかった。詳しい事情はわからないが、引退したばかりのOBであり、FROという肩書きがあるクラブ関係者でもあるので、川崎フロンターレの試合に関しては、公平性に欠ける解説になる可能性を周囲が配慮しているのかもしれない。

 唯一の例外が、今季初公式戦となったゼロックス・スーパーカップでの川崎フロンターレ対ガンバ大阪戦だったが、このときは「ゲスト解説枠」だ。つまりDAZNが中継するACLの舞台で、今回ついに単独での川崎フロンターレの解説が実現したというわけだ。

 それにしても、現役引退後のバンディエラは、各所で大活躍である。育成年代の指導をすることもあれば、メディアを通じて目にすることもある。いろんな分野でアンバサダーの肩書きを持つなど引っ張りだこだ。

 個人的な話を明かせば、少し前から中村憲剛さんの案件を進めていて、月に一回ぐらいのペースでオンラインで打ち合わせをする機会を設けている。インタビューをするときもあれば、会議の打ち合わせで本人を交えて複数人とやり取りすることもある。

 忙しい合間を縫ってのやりとりになるのだが、日々、充実していることは本人からは伝わってくる。現在は「頂いているお仕事を全力でやる」のだと話していたのだが、そのスタンスも彼らしいと思った。

 思えば、現役時代も「出番が来たら全力でやる」という選手だった。もっと言えば、新人時代のあだ名は「シャカシャカくん」である。試合はもちろんのこと、普段のトレーニングでも、ウォーミングアップの時から練習着が擦れて「シャカシャカ」と鳴るぐらい全力で動いていたことから、先輩たちにそう呼ばれていたそうである。

 話が逸れた。メディアの仕事で目にする機会も多いが、その中の解説業に関して言えば、「いろんな人に、『サッカーって面白いな』と思ってもらえるように」というのが解説者としてのモットーだと話していた。

「(試合を)見る人がサッカーのいろんな見方をできるようなお手伝いをできるようにしたいですね。解説とは『解いて説く』と書きますから。そこは自分の役割でもあると思ってます」

 もともと、彼のピッチの出来事を言語化する能力は、現役時代から卓越したものがあった。なので、解説者として評判が高いのは当然のことだと受け止めているのだが、それが2021年の川崎フロンターレを解説した試合となれば、それはそれで貴重な機会である。実際、DAZNでの彼の解説を聞きながら試合を見たことで、何らかの発見があった人も少なくなかったはずだ。

 ということで、今回は、中村憲剛さんの解説を「解説」することで見えてきたものをマッチコラムにしてみようと思った次第である。

 中村憲剛さんがこの試合で何を見ていて、何を語っていたのか・・・・そこからこのゲームを語っていこうと思う。

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