空の青と本当の気持ち。 (天皇杯3回戦・ジェフユナイテッド千葉戦:1-1<PK4-3>)
川崎フロンターレの何人かの選手たちは、限界を越えた中でプレーしているようにも見えた。
前半の途中から動きがだいぶ鈍くなり始めたように感じたのだが、いくら何でもペースが落ちるのが早すぎる。試合内容や戦術的な部分を指摘するよりも、そちらが気がかりだった。
この試合に向けたオンライン囲み取材で涙を見せた鬼木監督の表情が、頭の中で蘇ってくる。あれだけ強い鬼木監督が、どうしても感情を堪えきれなかったのだ。あの時の表情は、チームを取り巻いているあまりに多くのものを物語っているように感じた。
ウズベキスタンでの約3週間に渡る遠征。さらに帰国後の隔離生活と行動制限。それがもう1ヶ月にもなる。先週の清水エスパルス戦での後半のパフォーマンスを見れば、選手とスタッフが心身ともに消耗し切っているのは容易に想像できた。その中で迎えたこの天皇杯の直前には、選手にもコロナ陽性診断者が出てしまった。
試合後、これまでよりもさらに難しい環境下で試合に臨んでいたことを谷口彰悟は明かしている。
「コロナには相当気をつけてはいましたが、その中でもチームに陽性者が出てしまった。それによって隔離の強度というか、部屋から一歩も出ないとか、部屋食にしたりと、そういう生活にグレードを上げて、対策をして進んできました」
実際の詳しい状況は分からないが、連戦におけるコンディション調整や身体のケアもいつもとは勝手が違ったことは想像できる。それでも言い訳せずに、ピッチで向き合い続けた選手たちのパフォーマンスを責める気にはなれなかった。
試合は90分で決着がつかず、1-1のまま延長戦に入っていた。ジェフ千葉に前線の選手が次々と投入され、足の止まった川崎フロンターレ相手に勢いを持って攻撃を仕掛けて続けてくる。延長戦に入ると、優勢になった千葉のゴール裏が何度か湧き、フクアリ全体のボルテージも明らかに上がっていった。
しかし今年、公式戦で一度も負けていないチームは、最後まで負けを受け入れなかった。次に進むために、王者のプライドなどかなぐり捨ててピッチに立ち続けていたようにも思えた。
猛攻に晒されても、決してゴールだけは割らせない。途中交代で入ったスピードに秀でた岩崎悠人がサイドから抜け出しそうになった絶好機も、疲労困憊のジェジエウが全力疾走でピンチの芽を刈り取った。一体、どこにそんな体力が残っているのか。
ジェジエウだけではない。山根視来、車屋紳太郎、登里享平、そしてGKのチョン・ソンリョンと、試合開始からピッチに立ち続けている最終ラインの選手たちは、とっくに底をついていたであろう体力を振り絞って、最後まで集中を切らさなかった。
清水戦で、その場に座り込む姿を見せるほど足を痛めていた家長昭博は、「強い打撲もあって心配」と試合前の鬼木監督が触れたほど出場が不安視されていた。それでも120分に渡ってピッチに立ち続けた。この日、唯一となる得点を決め、5人目のPKキッカーもおそらく任されていたはずだ。
何が、彼らをあれだけ突き動かし続けたのか。
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