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今、苦しんでいる価値はある。(リーグ第24節・清水エスパルス戦:2-2)

 等々力競技場での清水エルパルス戦は2-2のドロー。

ラストプレーとなったCKでジェジエウが見せた渾身のヘディングも、無情にもゴールバーの上に。そして、タイムアップを告げるホイッスルが鳴り響きました。

これで引き分け数は「11」。リーグ戦は5試合勝ちなしと、足踏みが続いています。

 前節仙台戦は、中二日でのタフなアウェイの戦いで、逆転されながらも追いついたことで、チームとしても前向きに捉えることが出来る勝ち点1だったと思います。しかしこの清水戦に関していえば、同じ展開だっただけに「先制して追加点を奪う」、「失点しても我慢して連続失点はしない」という前節で出た課題を克服できずに引き分けに終わってしまった思いがあります。

試合終盤は5バックとなって、がむしゃらに守り倒す清水守備陣を崩すことは出来ませんでした。後半は、ほぼ一方的に近い形で押し込んでいたのは事実ですが、その数に見合うだけの「大決定機」を作り出していたかというと、素直にはうなづけないところもあります。試合後の中村憲剛が、攻撃面での課題を指摘します。

「ハーフコートで押し込むのなら、もっと緻密さ、丁寧さは必要。何かを劇的に変える必要はないと思っている。緻密さ、丁寧さ、目を揃える作業は続けていくしかない。メンバーもけが人が出たり、毎試合変わっている。その中でどれだけ出た選手の良さを出せるか。意図的に出せるように、みんながもっと相手と味方を見ながらできるようにやると良いかな」

 崩しきれなかった攻撃陣だけではなく、水を漏らしてしまった守備陣も厳しい表情です。自身のパスミスで失点を招いた谷口彰悟も、「最近、失点が多い。個人としてもチームとしても改善しないといけない」と自分自身に矢印を向けて反省していました。これだけ簡単に複数失点してしまっては、「勝てるものも勝てなくなる」と、危機感を強めます。

「1-1になった後でも、後半は最初からうちのペースで、いつ点が入るか。そういう状況に持っていった時にミスから失点してしまった。そういうところを改善していかないと、勝てるものも勝てなくなる。追いついたのは良かったことですが、『追いついて良かったナイスゲーム』という感じではない。そこはシビアに受け止めてやっていくしかない。勝たないといけない状況の中で、こういう結果になってしまったのは悔しい」

 幸いにも首位のFC東京と2位の鹿島アントラーズが引き分けたため、首位との勝ち点差8は変わりませんが、残り試合は10。状況は厳しくなリつつあります。

 今回のレビューでは、試合を分析するとともに、シーズン終盤に向けた現状と改善点にも目を向けてみました。ラインナップはこちらです。

1.前半の攻撃の中心にいたのは齋藤学。右サイドで躍動した彼が、試合前日に語っていたこと。

2.「ドウグラスは相手の一番注意しないといけない選手だった。厳しくいかなくてはいけないところで、ファールになってしまった。力不足です」(下田北斗)、「流れに関係のないところで点を取られてしまって、そこで向こうが元気になってしまった」(中村憲剛)。畳み掛けながらも奪えなかった追加点と、それまでの流れを失ってしまった失点。チームとしての「ズレ」は、なぜ起きたのか。

3.「仙台戦も勝てたと思うが、今日もそうで、失点がイージーだった。もうずっとだが、自分たちからゲームを難しくしている印象は強い」(下田北斗)。ミックスゾーンで苦悶の表情を見せたホクト。大島僚太不在の今、ボランチに求められている仕事とは?

4.「悠くんの動きの方がいいなと思ったので、急に判断を変えました」(馬渡和彰)。スペースへのランニングで生きるマギーニョと、狭いエリアで仕掛けられる馬渡和彰。マギーニョ→馬渡のスイッチで呼び込んだ同点撃から読み取れる、今後の右SBの使い分け。

5.9月からの5連敗で大失速したものの、リーグ3連覇を達成した2009年の鹿島。そのターニングポイントになった川崎との「16分の再開試合」。そして、当時も知る中村憲剛が語った「今、苦しんでいる価値はある」という言葉の意味。

以上、5つのポイントで全部で約15000文字です・・・書きすぎました・笑。

いつも通りにゲーム分析をするとともに、ポイント5では、10年前の取材備忘録にもなっています。そのため、いつもとは違うテイストになっていますが、しかるべきタイミングだと思い、あえて書きました。かなり濃い内容になっていますので、10年前の歴史を知らない方も知っている方も、ぜひ読んでみてください。

なお、プレビューはこちらです。→試合をディープに観戦するためのワンポイントプレビュー(リーグ第24節・清水エスパルス戦)

では、スタート!

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