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桜木花道にエアジョーダンを着用させた理由とは?:スラムダンクの映画『THE FIRST SLAM DUNK』を語る(3回目)

 映画『THE FIRST SLAM DUNK』が2022年12月3日に公開されて、ちょうど一ヶ月が経ちました。興行収入はすでに50億円を超えているようで、「すずめの戸締り」と並んで絶好調ですね。

僕は年末12月28日に3回目の鑑賞をしてきました。

配布された宮城リョータのミニポスターが欲しかったのがいちばんの理由ですね。

 無事にゲットできました。

「3年時 7番のまま」の文字が添えられてます。ちなみに連載終了後に発売された描き下ろしのカレンダーや、スラムダンクのイラスト集に出てくる3年生の宮城リョータは4番をつけてることが多いっす。

(連載後に発売された描き下ろしのトレカイラスト)


これまでとは違う環境で観たいと思って、良い音響の映画館に足を運んできたのですが、いやー、チケットを取る時点でほぼ満員でしたね。本当に人気です。

(※初回と2回目のレビューはこちらをどうぞ)

(※こちらは映画本の「THE FIRST SLAM DUNK re:SOURCE」の書評です)

■「捨てる決断」に現れていた、井上雄彦先生の仕事ぶり

好調を維持している要因としては、原作に触れたことのない、いわゆる「未読ファン」にもかなり評判になっているというのが挙げられると思います。

基本的には、原作を読み込んでいるファンをターゲットにした作品なんですけど、実は原作未読の新規ファンにも理解しやすい再構成している作品だというのがわかります。

 例えば1巻から読んでいる原作ファンにとっては伏線となっている肝となる部分であっても、新規ファンにとっては説明が必要になるようなシーンであれば、映画ではカットされています。

具体的に言えば、ゴリに向けた魚住純の桂剥き、流川の仙道彰との回想シーン(「沢北じゃねーか」)、安西先生の「おい……見てるか谷沢……お前を超える逸材がここにいるのだ……!!」の心の声、晴子に対する花道の「大好きです。今度は嘘じゃないっす」などなど・・・・・・どれも湘北の選手とそのキャラクターとの関係性(魚住とは?仙道とは?谷沢とは?晴子とは?)を説明したり掘り下げる必要があるので、大胆に捨てています。

 当然ながら井上雄彦先生は、できれば全てのシーンを描きたかったはずです。でも、映画は2時間ちょっとですから、選ばなくてはいけないわけです。

 選ぶという作業は、他の選択肢を全て「捨てる」ということでもあります。例えば山王戦での合言葉でもある「ダンコたる決意」のフレーズも、この映画では出てきません。これは試合前日に安西先生が言ったフレーズであるためで、試合だけを描写している映画で、花道に「ダンコ」と連呼されても、あまりピンと来ないからだと思います。

この「捨てる決断」と、そこに削られたシーンに思いを馳せながらも、そこの大胆さがプロらしい仕事ぶりだなと思った次第です。

 もちろん、大胆にカットしたことで新規ファン向けにアレンジした配慮はありつつも、原作では描かれなかった宮城リョータの過去を物語の軸にすることで、熱心な原作ファンにも「初めて読むスラムダンク」という体験をさせています。まさに『THE FIRST SLAM DUNK』というタイトルに込めた思いが、そこにはあるわけです。何度か観ていると、この辺の塩梅が絶妙だなと思うわけです。

■3回目は観客席を要チェックや!

3回目の鑑賞ではこれまでとは違う環境で観たいと思って、良い音響の映画館に足を運んできました。TOHOシネマ新宿のドルビーアトモスだったのですけど、いやー、チケットを取る時点でほぼ満員でしたね。

 この作品を映画館で観てもらいたい理由として、「まるで観客席にいるような感覚で作品を観れるから」というのがあります。クライマックスの無音シーンは、まさに観客みんなが固唾を飲んで観戦しますから、あの一体感は映画館での観賞ならでは、なのではないでしょうか。

 そしてボールが響くダムダムという重点音、そしてオープニングと主題歌が流れる場面の臨場感が別格でした。物語の没入感も違います。いやー、今後おかわりする人は音響設備の良い映画館で観ることをオススメしますよ!!

3回目のレビューではストーリーの考察は省きますね。今回はどちらかと言えば、観客席を注意深く観察しました。よく観ると、セリフはなくとも、原作で描かれていた観客がちゃんといたりするんですよ。

 この山王戦は、他校の優勝候補のチームも集結したと言う描写が原作であります。

例えばコート脇に赤いジャージの集団がいて、これは3回戦で対戦する愛和学院ですね。反対側の緑ジャージは、大阪の大栄学園ですかね(原作で大栄学園のジャージの色の記憶がないけど、多分そうなはず)。海南大付属は上にいました(これは逆にジャージの色でわかる)。残念ながら、名朋の森重と監督の姿は発見できず。

テツ沢北も山王応援団の横にいました(ジャケットでわかる)。魚住は桜木軍団の前に座って観戦している後半の時間帯もありましたが、ある時間帯から場所を移動していました。原作で言えば、桂剥きが終わった後のタイミングぐらいになるんでしょうけど、この辺の移動した理由を考えるのもなかなか面白いです。なお、宮城の母・カオルも柱からちゃんと観戦してましたよ。

あと試合終盤に、三井寿が3ポイントと松本からファウルを受けてフリースローを獲得したシーンがあります。バスケットボールカウントとなり、このフリースローを成功させた後、三井は「見たか!」とドヤ顔をしているのですが、あれは山王の選手たちに向かっているのではなく、観客に向かって言い放っていたんですね。

原作では気づかなかったのですが、今回の映画では三井のフリースローの際に、失敗するように妨害していた観客が割といました(バスケではよくある光景)。試合終盤、山王の応援一色だった観客たちの割合が湘北の応援も増えてきた描写がありましたが、それでも山王に勝ってほしい観客も多かったというわけですね。

何度か鑑賞していると、そういう小ネタや客席に目を向けると発見するのも面白いです。

■井上雄彦先生が明かしたバッシュの話

 あと作品の小ネタで言うならば、スラムダンクファンには有名ですが、作品に登場するキャラクターは実在するメーカーと思しきバッシュ(バスケットシューズ)を着用しています。

 特に桜木花道と流川楓は、NBAのスーパースターであるマイケル・ジョーダンのエアジョーダンシリーズを履いていることで有名です。復刻もされていますが、超高額で取引されている圧倒的な人気シリーズです。

公開前、今回の映画のストーリーが山王戦ではないかと早い段階で考察されたのも、「花道の着用していたバッシュが、インターハイで履いていたエアジョーダン1だったから」というのも大きな根拠になってましらからね。

 実は井上雄彦先生が作品中に登場しているバッシュについて語っているインタビューというものが存在しています。

2015年に刊行された「バッシュとスーパースターで振り返るNBA30年史」という書籍で、そこで井上雄彦先生が「スラムダンクとバッシュ」について語っています。

 キャラクターが着用しているバッシュのモデル選びは「なんとなく」だそうです。

宮城リョータは、当時の感覚で、なんとなくリーボックっぽい。三井寿は中学MVPの設定なので、アシックスかな・・・とか、そういう感じで描いていたそうです。仙道彰がコンバースなのは、マジック・ジョンソンと関係あるのかもしれない(作者なのに断言していない・笑)。なお流川楓はジョーダンに憧れているから、エアジョーダン5(ここは明確)。

花道のバッシュもエアジョーダン6と1です。これにも理由があって。桜木はジョーダンのことは知らない。なので桜木には一番釣り合わない「豚に真珠」的なのが面白いと思って、エアジョーダンにしたそうです。エアジョーダンを30円と100円で入手したのは当時も笑いました。なお最初に花道が体育館シューズを履き潰したのも、井上先生自身の経験談なのだとか。

花道がインターハイで履いているのはエアジョーダン1で、赤黒カラー(湘北の色)はブレッドと呼ばれています。僕も復刻されたパテントを、去年に買ってしまいました・笑。

・・・・履かずに飾っておりますけどね。

ちなみにレイザーラモンRGが、あるキャラクターにコスプレして映画を観に行く動画はめちゃ面白いです。

おかわりをするとさらに発見があるので、オススメですよ。

ではではこの辺で。

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