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スラムダンクの新装再編版を語る〜第11巻:宮城リョータはなぜ湘北バスケ部に来たのか??

2022年12月3日に映画『THE FIRST SLAM DUNK』が公開されます。

公開間近になっても詳細が一切明かされないものの、スラムダンクファンとしては楽しみでしかない作品です。

そんなある日、「そういえば、新装再編版のレビューが10巻で止まっていたなぁ」と思い出しました。10巻について書いたのが2018年8月1日です。なので、約4年3ヶ月ほど前のことです。

映画公開もあるし、新装再編版レビューを再開してみることにしました。

あらかじめ断っておきますが、ちょっとマニアックなレビューです。物語のストーリーや展開には基本的に触れないので、そのつもりで読んでください。

第11巻のタイトルは「湘北vs.陵南1」
#149 最後の椅子から #161 敗北までの13話分の収録です

運命の陵南戦です。県予選最大の山場ですね。

■県大会決戦前夜

表紙の考察からいきましょう。

本編では描かれなかった描写が表紙になっているわけですが、これはいわゆる「県大会決戦前夜」。購入者特典の特大ポスターにもなったイラストです。なお本来は、湘北メンバー5人の構図なのですが、この表紙ではサイズの都合上、ゴリだけが見切れているという寂しい(?)構図になっております。

 陵南戦前日と言えば、海南対陵南戦の観戦を途中で切り上げた花道がシュート練習に向かい、流川、三井、宮城も試合途中で帰っています。

この花道の練習中に安西先生が倒れ、病院へ搬送。花道の迅速な処置で一命を取りとめたことを、赤木らは病院で安西夫人から伝えられます。一方、体育館に着いた流川、三井、宮城は安西先生不在で翌日の陵南戦を戦うことを花道から知らされます。

見切れてはいますが、表紙イラストにゴリがいるということは、あの後に前日練習をしっかりと行ったということでしょうね。ただメンバーが着ているシャツが原作で描かれていた練習前のものとは違うので、このイラストは全体練習後や居残り練習後の、まさに陵南戦前夜の体育館の一コマなのだと思います。

 帯コメントのフレーズは「君たちは強い・・・・・」

試合開始前に、安西監督が病室から選手たちに向かって口にした言葉です。「俺たちは強い!」はこのチームの合言葉となっております。

■実はレア!作者自身(と思しき人物)が観客として物語の世界に登場

本編では決勝リーグ最終日にして、クライマックスの一戦ということもあり、試合当日の会場の描写などもいつになく描かれています。

会場に向かう人の中には、「漫画家」と書いたTシャツが現れ、「漫画家だ!漫画家の人だ!」と周囲をざわつかせています。どう見ても作者の井上雄彦先生らしきキャラクターです。

ちなみにスラムダンクの作品内では、バスケ用語の説明やルール解説などに登場するDr.T(ドクターティー)なる作者の分身的存在がいます。ただ作者自身(と思しき人物)が観客として物語の世界に現れているのは、かなりレアな場面だと言えますね。

なお、会場となった平塚総合体育館には井上先生自身が取材で足を運んでおり、サイン色紙も飾られていました(今もあるのかはわかりませんが)。だから、作品内でも自分を登場させたのかもしれませんね。

■宮城リョータはなぜ湘北バスケ部に来たのか??

試合前、両チームの選手紹介で、ある選手の思わぬ過去が明かされます。

それは誰かというと、宮城リョータです。

実は陵南の田岡監督が、宮城リュータを高校入学時にスカウトしていたことが明らかになっています。田岡監督に声をかけられているわけですから、中学時代は県内でそれなりに有名なガードだったことが垣間見れます。

確かに、県予選の三浦台戦でも陵南の選手から「ガードの宮城じゃねーか」と気づかれていましたからね。この試合の偵察に向かう海南の神も清田との会話で「ガードの宮城」に触れていたので、この学年では名の知れた存在だったことがわかります。

ただし、田岡監督は宮城リュータのスカウトに失敗。

それも三井寿と同様に、湘北の安西監督を理由に断られていたことが判明しています。

ここに「・・・ん?」と思ったスラムダンクファンは少なくなかったと思います。

というのも、宮城は花道と初めて語り合った時に、湘北でバスケ部に入った理由として彩子の存在が大きかったと口にしていたからです。

「俺は中学んときバスケ部だったが高校でも続けるかどうか迷ってたんだ最初な それで練習を見に行った体育館で・・・初めて見たんだ彼女を もうホレてたよ・・・速攻で入部した」

 安西先生をお目当てに湘北に入ったはずが、高校入学時にはバスケを続けるかどうかも悩んでいた・・・・なんとも腑に落ちない部分だと言えます。

ちなみに陵南戦での木暮くんの回想シーンでは、入学時の宮城は「いずれ神奈川ナンバーワンガードと呼ばせてみせる」と先輩たちに話しかけていますが、やる気満々ですよね・笑。ここがまさにバスケを続けるかどうかを悩んでいた時期だったんでしょうか(次の瞬間には、彩子に話しかけている)。

 宮城リュータが安西監督を慕っていたという描写は、あまりありません。

 そもそも、2人の直接の会話というのが多くありません。

初登場時の、宮城が退院して練習に復帰した際に安西監督に挨拶しに行った姿からは尊敬の念があるのは伝わってきますが、慕っていたという視点で言えば、三井寿ほどの強い描写はこの時点では見当たらないんですね。

色々考えてみたのですが、バスケットボールに限らずですが、スポーツの世界でオファーに快諾するとき、あるいはやんわりと断るときには、そこには必ず建前と本音が混ざるものです。

 なので、陵南から誘いを受けた宮城リョータとしても

・高校でバスケを続けるかどうか自体を悩んでいた(本音)。
・もし続けるのならば、陵南のような私立の強豪校ではなく、公立で気楽にやりたかったぐらいの感覚だった
・ゆえに田岡監督からの誘いは、有名な安西監督の名前を出してやんわり断った(建前)。

・・・宮城自身は三井寿ほどの安西信者ではなかったものの、断りの材料として有名な安西監督の名前を出した。ただ田岡監督からすれば、前年に続き安西先生が断りの理由だったので、分が悪いと(勝手に)判断して、わりとあっさりと食い下がったのかもしれません。もちろん、あくまでこちらの想像ですが。

その後、インターハイに向けた静岡合宿の際に、安西先生から付きっきりで特訓してもらう花道を羨ましがっていた宮城の描写があったりするので、安西先生のことは尊敬しているのだと思います。

宮城リョータの過去は、湘北メンバーの中でも謎が多い方です。

そして今回の映画「THE FIRST SLAM DUNK」では宮城リョータが中央にいることや公開された予告から、彼の過去が明かされる内容になるのではないかとも言われています。

もしかしたら、なぜ彼が高校でバスケを続けるかどうか悩んでいたのか、なんて背景の描写もあるかもしれませんね。

では今回はこのへんで。


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